第百二十五話 ルインの新しい武器 幻想級プログレスウェポン

 ――俺は目を疑うほど美しく生まれ変わったソレを渡された。

 青銀蛇の装飾をそのままに、同一の綺麗な青で左右に伸びるシールド部。

 青銀の柄を持ち引き抜くと、これまた青銀色の曲刀カットラスがスルリと引き抜かれる。


 カットラス部分にも封印穴が三つあった。

 蛇籠手と合わせると一体型で八もの封印装備が出来る事になる。


 これほどの優れもの、そうはないだろう。

 名前はアルカーン、シールド、ガントレット、カットラス

 アドレス。決して住所ではない。


 俺が喜んでいる様子をみたアルカーンさんは、興味無さそうに告げる。


「この剣の三つの穴にそれぞれ封印するモンスターが指定されている。

これは持ち主の今の強さに左右され、指定されるようにしてやった」


 俺が穴を見ると。

 スライム。

 ブラウリス。

 ヘッパーホップ。

 ほぼ最弱。身体の状態こんなに悪いのか。

 この借りた装備がなければ死んでたよな、もう。


「俺の持ってるアクリル板をはめても平気なんでしょうか?」

「なんだそれは? よくわからんが恐らく平気だろう」


 そう思いはめ込むと……あれ、アクリル板が光り出した? 三号が光っている!

 

「消滅した場合はすでに使い込んでいた証拠だ。その力は還元される。

封印せずとも技や能力は向上する」

「あの、消えずに光ってるんですが」

「……見せてみろ。うむ、これは恐らく力は還元されているようだ。

だが消えないのはどういうことだ」


 試しにアクリル板スライムを外して消化液を使ってみる。 

 ばしゃっと目の前に消化液が放出された。

 アルカーンさんの話とだいぶ違うな……どういうことだろう。


「その状態であれば問題なかろう。そもそも外せるのが異常なのだ」


 能力が武器に還元されたかは光りでわかる……か。

 これはセットして経験を積んでいくのが楽しみだな。

 三号も問題なく外にだせる。

 スライムのセットした一穴を見る。次はフットレフトというモンスターだが、こいつの

技はキックだった。

 そもそも自分の足で蹴れるから使わなかったが、セットしておく。


「ではこの空間にゴブリンを四十匹程招き入れた。退治して経験を積んでみろ。

多少の経験にはなる。強いモンスターであるほど、馴染むのに時間がかかる。覚えておけ」


 そう言うと、アルカーンさんは要所要所にゴブリンの塊を出す。

 レウスさんとファナに休憩をとるように伝え、新しい武器を携えてゴブリンに向かった。

 まずは三匹。アドレスからカットラスを引き抜く。

 反則的な軽さだ。軽く振ってみる。


 「言い忘れたがその武器は妖時術が付与されている。装備者は速度が上がり、斬られた

対象は速度が遅くなる。上手く使いこなせ」


 まじかよ。道理で身体が軽く感じるわけだ……。 

 剣展開をあえて使わず、左回りに展開してゴブリンに切り込んでいく。


「げぎゃーっ」


 こちらに気づいたゴブリン。気づくのが遅すぎる。

 一気に距離を詰めて、回転切りを放つ。一匹を仕留めた。

 今度は二匹同時に襲いかかってくる。蛇籠手を蛇に変化させて一匹を捕縛。

 その間に反対のゴブリンのナイフをシールドでいなす。


「言い忘れていたが、そのシールドで防いだ対象を遅くする。上手く使え」


 言い忘れ過ぎでしょ! どんだけ時間を歪めるんだあんたの装備は! 

 ゴブリンの動きが急にのろくなる。やばすぎだろこの装備。

 遅くなったゴブリンに蹴りを加えて吹き飛ばし、そろそろ拘束が解けるはずの

ゴブリンへと向き直る。


「言い忘れていたが青銀蛇の籠手を僭越ながら向上させた。

我がフェルドナージュ様の御力に少しばかり手を加えた」


 ほとんど内容言ってないに等しいだろ、もう! 

 そう思いつつ蹴りを放ったゴブリンへ跳躍して止めを刺した。

 残りの一匹は蛇が食らい尽くして、籠手に戻ってきた。やべぇ。

 流石に三匹のゴブリンを倒した程度ではまだ光らないか。

 剣を構えると、残りのゴブリンたちに突撃していった。


「言い忘れていた。貴様はここでしばらく修行しろ。飽きたら呼べ。

敵は定期的に沸くようにしてやる」


 その言葉を残してアルカーンは去って行った。

 言い忘れっていうか伝えるの出し惜しみしてるだけだろー! 

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