第九十五話 メルザパート 急いで向かいたい

「それじゃファナ、ニーメ、ゴサク。行ってくる」

「気を付けてね。パモちゃん、メルザを守ってあげてね」

「親分、その乗り物の使い方間違えないでね! 危ないから!」

「僕も忘れてない? あのおにーさんを助けにいかないと」

「ココット!」

「ん? いいぞ連れてってやる。ココット、お前もいくのか?」

「ここっ!」

「んじゃ全部まとめて荷物に入っててくれよ。

どっちも軽いしよ。大丈夫だ」

「ありがとうメルザお姉ちゃん 

「ココット!」


 メルザはニーメに言われた通り乗り物ごと泉に入る。

 そのまま風斗を下に放つと、乗り物は簡単に浮上した。

 駆け抜けるように泉を出ると、三夜の町まで風斗車を走らせる。


「こりゃいいや。あっという間に三夜の町まで着くな。

俺様は体力ないから助かるぜ」

「ぱみゅぱみゅー!」


 ――しばらく走る事数十分。三夜の町にとても早く到着することが出来た。


「パモ。乗り物しまえるか?」

「ぱみゅー!」


 パモは風斗車を吸い込み、体内にしまった。

 やはりパモはとっても便利だ。


「まずはせっちゃんとこだな。行こーぜ!」


 そう言うと、メルザは待ちきれないとばかりに走る。


「あらぁ久しぶりね。元気にしてたかしら?」

「ああ。せっちゃん、ミリルはどこだ?」

「ルーちゃん連れてでかけたわよ。

レジンの快鉄屋に行くっていってたわ!」

「ありがとせっちゃん。俺様行ってくる!」


 そう言うと、メルザは直ぐにセサミの宿屋を出て、シーザーの店レジンの快鉄屋へと

赴いた。


「ミリル、いるかー?」

「でね、ベルディスぅ。私へのご褒美を早く頂戴? 

まだなーんにも貰ってないわよぉ? ね?」

「やめろ! さっきやっただろうが。

その袋に入ってるものをもってさっさと出ていきやがれ!」

「あらぁ、誰が物でいいなんて言ったのかしらぁ? 

私はご褒美をもらうとしか言ってないわよ? それが何かなんて、ベルディスに

決める権利はないのよぉ?」

「あー、シーザー師匠。ミリル知らねーか? ここにいるって聞いてよ」


 メルザの存在に気付き、渡りに船とばかりにシーザーが立ち上がる。


「お、おういいところにきた。案内してやるからついてきな」

「あー、ちょっとベルディスぅ。バカ弟子、なんで邪魔するのよ! もう!」

「邪魔してないぞ。ミリル探しにきただけだ」


 シーザーは急いでついて来るように合図をする。

 メルザは慌てて後を追った。


 遠くから「べーるーでぃすーー」と聞こえてくる。


「ミリルは今、ガンツの店に買い物に出たところだ。

俺も同行する。ついてこい」

「なぁ、ライラロ師匠はいいのか?」

「ああ。ライラロの奴も忙しいからな。あいつもふざけてるだけだ」


 そう言いながら歩いていると、道中でミリルと会った。


「あら、よかったわメルザさん。外に出れましたのね。心配してましたわ。

甘い物を買って、持って行こうとしていたのよ」


 そう言ってメルザに駆け寄り抱きしめる。


「るぴぃー」

「ああ、だいじょぶだ。ルーも元気そうだな。

ミリルに話したいことがあるんだ。あとライラロ師匠から話も聞きてーし。

一度戻って……」

「話なら俺がしてやる。ルインの事だろう? 

俺のほうがよく知ってるぜ。お前ら静かなる裂け目ってとこまでいくぞ。

そこなら誰にも聞かれずに話せる」


 ――そう言うと、シーザーは二人を連れて賑わい祭りの夜を抜け、真なる

夜のエリアへ向かう。


「ウェアウルフだから俺ぁここでもよく見える。ついて来い」


 シーザーは二人を後ろから押しながら

静かなる裂け目まで辿り着いた。


 この場所も酷く懐かしい。ゴサクが連れ去られてここまできたのを、メルザは

思い出していた。


「いいか。驚くだろうがよく聞け。俺にとっての唯一の弟子の話だ。

不肖な弟子だが、奴は死んだという噂が殆どだった。

だが、マリーンが状況を見ていた。宿屋の女将だ。覚えてるか?」

「確か闘技大会近くの泊まった宿のとこだ。生きてたんだ」

「ただの宿屋の女将なんざ興味なかったんだろうよ。隠れながら見ていたらしい。

あの時の一部始終をな。お前らを逃がした後、奴は後ろから胴体を切り離された

らしい。その直後、切り離した奴も深手を負い倒れた。そいつが倒れた直後だ。敵が

ルインから目を離したその一瞬で、ルインは何者かに地中へ引きずり込まれたらしい」

「本当か!? じゃあルインは生きてるのか?」

「胴体を切り離されたって言ったろうが。生きてるかどうかは

わからねえ。死んだ人間を地中に引っ張ってどうにかするってのは

ネクロマンサー辺りじゃよく聞く話だ。だがその後何も出て来なかったし、その後も

地中から何かが沸いてきたなんて話も出てきてねえ……つまり治療するためにさらった

可能性が高ぇってことだ」


 メルザの目に希望の光が輝き出す。

 ミリルも表情が少し和らいだ。


「だが、どこにいるか、理由はなんなのかがわからねえ。

それと常闇のカイナの狙いはあいつだ。きっと血眼で探してるに違いねぇ。

理由は知らねえがな。町についても決してルインの名前を出すな。

二人共デイスペルに行くなら、三夜の町から顔を隠していけ。いいな」


 二人が頷く。今一度会えるなら、例えどんな形でもいい。

 まずはルインが消えたその場所を、メルザたちは目指すのだった。

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