第三十話 どれほどの敵だとしても

「ここーーーっと! ここっ ここここっ こーっこ」


 にわとりかーー! と俺は心の中で思い切りツッコミを入れる。 

 そーいや相変わらずツッコミ要因は俺が主体であとは冷静なファナだな……。


 それどころじゃなかった。

 なんだこの生物? パモみたいに箱から出てきた。


 しかもこいつ以外箱の中にはなにもない。

 どう見てもブリキの玩具に見えるが喋ってるし。

 後ろにゼンマイも付いていないし。

 喋り方がコケーじゃなくてよかった。


「ココットー! ここっここっ」

「わ、ちょっ落ち着けって」

 

 箱から出てきたそれは、少し興奮しているようだった。

 閉じ込められてたのか? 


「なんだこの生き物、おもしれーな! 飼おうぜこいつ」

「いや飼うって、こんな歩く防犯ブザーみたいな奴をか?」

「防犯ブザーってなんだ? 食い物か?」

「……」


 とことん食いしん坊キャラのメルザをしり目に、俺はそいつをよく見る。

 どう見ても仲間になりたそうな目でこちらを見ているな……。


「まぁメルザが連れていきたいっていうなら連れていくか」

「じゃあこいつは今日からココットだな!」

「聞いた感じそのまんまだな。まぁいいか。よろしくな、ココット!」

「ココット! こっこっここっとー!」

「頼む、なるべく静かにしてくれ……特に敵の前では!」

「ココット……」


 分かったと言ってるみたいだが少ししょげている。

 バレバレになるじゃないか! 俺たちの位置! 


 一応ココットをアナライズしてみるか。何かわかるかもだし。



 古の兵器(ココット)


 かつてこの国の古の時代に開発された

 駆動式兵器であり 戦闘用に開発された

 部品の組み合わせによりそのスタイルの幅は大きく変わる

 何も装着しなければ何もせず戦闘は行えない

 高い知識を持ち行動する疑似人格を構成するが

 言葉はココット以外話せない



 兵器? これが? どうみてもブリキの玩具なんだが。


 部品はないのかな。今考えても仕方がないか。

 新しいツッコミを入れなければいけない要因が増えて、俺の役割が

増えてしまった。


 閑話休題


 ――――宝を入手した俺たちは、残りの青い点を目指し、辿り着いた。

 ここは回復ポイント? みたいな場所のようで青い光に触れると、身体の傷が少し癒えた。


 メルザの失った左腕は残念ながら治らなかったが……青い点が宝箱とは限らないんだな。

 奥はきっとボスがいるのだろう。

 当たり部屋のボスってだけでちょっとワクワクするが、果たしてどんな奴がいるのか。


 最奥を目指して歩いて行くと、そこには扉があった。

 そして扉を開け奥に行くと、そこに待ち構えていたのは――――









 サイクロプスだった! メルザの顔が途端に真っ青になり、膝をつく。


「メルザ、しっかりしろ、メルザ!」

「やだっ助け……助けて! 怖い! 助けて、いやぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!」


 メルザは膝をついたまま逃げるようにして扉の方へ行く。

 奴はこちらに気づき、敵と見定めたようだった。


「カカシ! メルザを頼む! 俺が注意を引くから!」

「任せておけぃ、主は死んでも守るわい!」

「あぁ!」


 俺はそう言うと、あえて奴の真正面から突っ込んでいく。

 今はこちらへやつの注意を引かないと。

 メルザが発狂してしまう。


 地面をパタで思い切り殴り、俺が一番の敵だと認識させる。

 奴もそれを見てなのか、標敵として認識し、こちらへ襲いかかってくる。


 くそ……あの巨体でなんて速さだよ。


「ダメ、ルインが死んじゃう! ルイン、いっちゃだめ!」


 遠くからメルザの声が聞こえる。


「安心しろメルザ。俺は死なないよ。 

まだまだ恩義を返せてないからな! 返し終わったとしても死なないけど……なっ!」


 左に跳躍して側面の壁に足をつける。

 刹那風斗で壁から跳躍して奴の裏側へ回るが

 奴もこちら側を向きながら棍棒を振るっている。

 そのこん棒が俺の頬をかすめた。

 ……そのリーチは反則だろ、おい。


 だが計算通り俺の方を向き、メルザ達とは背を向ける格好だ。

 暗器を奴の顔面付近に投げて、より一層挑発する。

 テメーは俺だけ向いてりゃいいんだよ。主の方は見るんじゃねぇ! 


 いきりたった奴は、でかい棍棒を振り回しながら近づいてくる。

 とんでもなく強い風圧と足音が響く。


 チート過ぎだろ、こいつ。

 こちとらまだアナライズすらできてないってのに。

 と、考え事をしていたら、奴は片手を前に突き出して何かをしようとしている! 


「っ!」


 慌てて右へ回避した。あれ、今のが幻影回避か。

 奴は攻撃が当たったと思っている様子で一旦攻撃をやめている。

 ……というのも今奴は風斗で突然攻撃してきやがった。

 棍棒にばかり目がいっていて少し回避が遅れたと思ったんだが。

 これがこの装束の力の一旦か。手に入れていて助かった。

 目標へ攻撃があたっていないと気付いた奴は、更に怒りをあらわに攻撃を続ける。

 いい感じだ。

 師匠との特訓を思い出す――――。




「師匠、相手を怒らせまくるって そんなに効果的なんですか?」

「冷静さを失った奴の攻撃は極めて単調だからな。

熱くなればなるほど思考パターンは停止する。

例えば前の特訓時に、お前に腹パンしたら嬢ちゃんが慌てて

こようとしただろ? ああいうのは格好の的だ」



 師匠とそんなやり取りをしていたのが脳裏に浮かぶ。

 もっと怒れ、もっと熱くなれ。


 挑発するようにトントンと足のつま先で地面を叩く。

 左手のシールドレイピアで挑発ポーズつきだ。


 奴は両手を挙げて激高し、まっすぐ突っ込んできた! 

 それをまってたんだよ! 


 俺は目を閉じてシールドレイピアを横構にして奴に思いっきり振るった。

 その刹那……「ぐぉおおおおおおおおおおおおおおおおぅ!」


 奴のけたたましい声が部屋中に鳴り響く。 

 必殺技、オペラモーヴを真正面から受けた奴は、下半身に甚大なダメージを

受け、膝をついて崩れる。


 だが代償もでかい。

 くそ、右目に血が入ったようでよく見えない。

 まぁ見えないなんざ日常茶飯事で慣れてるけどな! 

 それにこいつ一発で倒せる相手だと思っていない。


「カカシ! そこから電撃で攻撃できるか!?」

「まかせぃ!」


 そういうとかなり後方からカカシが雷撃で攻撃してくれる。

 膝をついたサイクロプスに直撃した。しかしあまり効いてない。

 幻術がそもそもきかないのか!? 

 いや、これはそもそも吸収している感じだ! 


「カカシ! 術を吸収するのか奴の傷が回復しちまう! メルザを連れて逃げてくれ!」


 奴は起き上がるとカカシの方を向いた! まずい! 


「お前の相手は俺だっていってるだろうが!」


 俺は奴に近づき足に深々とシールドレイピアを突き刺す。


「ぐぉぉおおおおおお!」


 効きはしたが、奴に突き刺したレイピアがすぐには抜けない。

 奴の振り払う動作で俺は十メートルほど吹き飛ばされ、壁に打ち付けられる。


「ぐっ…はっ」


 一瞬呼吸が止まった。骨も何本か折れたか。

 すると突然カカシの方から怒声が上がる。


「やめろーーーーーーーーーー! ルインに手を出すなーーーーーー!」

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