第一話 ルインの目

 メルザは俺の目を見えるようにするという。

 一体どうやって? 俺は疑問に思い尋ねた。


「メルザ、どういう意味だ? 目が治るっていうのは」


 俺の目は全盲だ。医学で見えるような状態ではない。

 元々貧しい家だったのだろう。

 医者になんて見てもらえていない。

 光すら感じないのは自分の事だけによくわかる。

 前世よりも酷い状態だ。


「こいつを使うのさ……っと見えねーんだったな。わりぃ。

これは幻魔の宝玉っていうアイテムで、手に入れるのにすげー苦労したんだぞ。

危うく死ぬとこだったしよ」

「幻魔の宝玉? なんだそれ?」


 俺の知っている知識には無い言葉だ。

 昔見聞きしたゲームワードのようだった。


「こいつは使うとあらゆる状態を治してくれる代物らしいんだ。一回こっきりで無くなっちまうみてーだが、それと引き換えにすげー力も手に入るんだとよ。まぁ物は試しだ、やってみっか」


 そういうと、バタバタと音が聞こえて俺の口に何かをあててがう感触が伝わってくる。


「どうやって使うんだ? コレ。まぁいいか、喰わせりゃなんとかなるだろ。ほら喰え!」


 こんなでかいの食えるか! しかもやたらと冷たい。


「無理だって! むぐっもごっ口にいれっ!?」


俺が喋ろうとしてもメルザは聞かない。


「んー? 口からじゃダメか。ケツからいれんのか? うーん……おっとぉ」


 あまりにも押し込んでくるので、俺は思わず両手でそれを掴む。丸型の玉だった。


「お、なんか光ってるぞ! いけるんじゃねーか、これ。

頼む、こいつのわりーとこ全部治してくれ」


 さっきまでやたらと冷たかった玉が温かくなり、そして熱くなった。


……すると途端に俺の意識は吸い込まれるように無くなっていく。

 ブラックアウト……「ぉぃ、大丈夫ゕ……ぉぃ……」










 大きな木が見えた。木には大きな穴が開いている。

 その中で、誰かわからないやつらと俺がいるような感覚だけがある。

 とても楽しそうだ。美味しそうな食事に囲まれている。ものものしい武器もある。


 そして何より温かい……ここが俺の居場所であってほしい。そんな感覚がある。


 誰かに助けられ、生きる道を貰った。

 これからはずっと、あの人のために……。












 ――――目が覚めると、柔らかい物の上に俺はいた。

 さっきのは夢だったのか。とても眩しい。こんな眩しく感じるのなんて凄い久しぶりだ。

 俺はゆっくりと目を開けた。


「見える……見えるってこんな感じだったっけ。思い出せないけど、ちゃんと見える! 見える……うぅっ」



 俺は声を上げて泣いた。嬉しかった。 

 俺のために目を用意してくれたメルザの気持ちが。

 この恩は必ず返そう。一生を捧げても足りないくらいだ。

 そういえばメルザはどこにいるんだろう? 


「メルザ、どこにいる? メルザーーー!」


 この部屋は思ったより狭かった。メルザはどこで寝ていたんだろう? 


 後ろを振り返る。すると……そこには俺が男だと思っていた、片腕のない小さな少女がいた。

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