第14話

2055年5月


昨年、孫娘こと三井麻乃(みついあさの)との間に女児を授かった。俺の子種からは9割の確率で女が生まれるらしい。残りの1割の確率で男が生まれるらしいが父親である俺の絶倫は遺伝されないがそこそこ整った容姿で生まれるから蝶よ花よと育てられているようだ。


娘(玄孫?)の名は、三井麻陽(みついあさひ)。三井家の女は代々名前に"麻"を必ずつける習わしがあるんだとか。


ちなみに、俺の名前は今も無し。麻乃には相変わらず"おじいちゃん"と呼ばせてる。麻陽にもおじいちゃんと呼ばせるつもりだ。


麻乃の母であり、俺の孫娘でもある三井麻子(みついあさこ)は世界1周の旅の途中でイイオトコが出来たとかで日本には帰らないと手紙を寄越して来た。自由人な気質は昔かららしいから麻乃は特に気にしていなかった。


昨年、麻乃の頼みで精密検査を受けた。不老の俺の身体が気になるらしい。だが、問題発生。注射針が刺さらない。採血が出来ないという問題。血で大体のことが分かるのに採血出来ないんじゃ調べることが出来ないってことであらゆる刃物を用意して俺から血を採ろうとした。


だが、どんな刃物も俺の肌に傷を付けることが出来なかった。


1番面白かったのは抜刀術の達人数人に囲まれて着ている物だけ切り刻まれたこと。彼女達は俺を細切れにするつもりだったとか言っていたがパンチの効いたジョークだと思った。


麻乃から隠してることがあるだろうと問い詰められたから正直に竿捨山のあの液体のことを話した。


さっそく、竿捨山へ秘密裏で調査を行われたが大規模な土砂崩れによって件の区画だけがキレイに流されていたらしい。


だけど、民間伝承とかの文献は残ってたとかで、調べてみたら件の区画で天保中期頃から生贄や儀式をする祭壇があったらしい。多い年で男を20人以上生きたまま解体して、山の神に捧げていたとか。何のために?長寿や健康、子宝、子孫繁栄とかありふれた願いだったらしい。だけど、昭和17年に疫病が蔓延して儀式を執り行っていた主要一族が根絶やしになった。触りだけしか知らなかった外野が儀式を受け継いだが正しい作法を知らなかったため山の神の怒りに触れたのか、その者達が住む集落が土石流に呑まれたのちに儀式を執り行う者が絶えたと読み解かれたらしい。


で、俺が件の区画で発見して飲み干した液体が何か?断言出来ないが不老不死の霊薬か?もしくは…?って感じらしい。


線香や腐敗臭の原因が知れて、俺は納得した。だけど、アレは薬ではないと思う。何処ぞのコズミックファッキンバードの血だったって言われた方が納得出来る代物じゃないかと思う。


だって、たまにこの世の者じゃないのが見えるようになった。


なんて言ったら良いのだろうか?不定形な思念体?そんなのが何かごにょごにょ言ってから消えるをたまに出てきて俺の近くで披露してる。


ごにょごにょ言ってる内容は毎回違うっぽい。俺がはっきり聞こうとした時に運良く聞けた内容が"ちくわ大明神"だった。ネットスラングかよ!と思ったが別の日に聞いた内容は"星…巡り…ごにょごにょ"だった。


なんなんだろうアレは。


麻乃には、このことを話してない。ボケたと本気で心配されるから。


今は特に害がないからほっておいてる。


「おじいちゃん♡ねぇ、2人目欲しくない?」

「俺には2人どころか数万人も子供が既に居るんだけど?」

「もう、私とおじいちゃんとの間によ♡」

「麻陽がもう少し成長したらで良いじゃないか?」

「でも、私のココが寂しそうにしているのよ?♡」


麻乃が自身の下腹部を撫でながら言う。


「…採取キットに直ぐに入れるなら良いぞ。」

「そうね。無駄に出来ないものね♡」


何を採取するものか?ナニを採取するものだ。

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