32.永久に完全なる完璧な世界
---------------------《4ターン目》---------------------
〈レイミ〉● 〈カーティス〉
ヴァナ Lv0 絶対神 Lv0
Lp 800 Lp 375
手札 5→6 手札 0
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〈レイミ〉魔力 3→5
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《完全なる世界の絶対神》
Lv10/攻撃力0/防御力0
タイプ:幻想,機械,神話
●:1ターンに1度、手札1枚を捨て札にして発動できる。
相手デッキを確認し、Lv9以下のユニット1体を半分の魔力で召喚する。
●:召喚したユニットが自分のユニットゾーンに存在する限り、
相手は自身を攻撃対象に選べない。
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《論理の箱》
Lv9 永続アイテム
タイプ:機械,建造物,神話
●:相手はドローするカードを公開してから手札に加える。
●:奪ったユニットが戦闘破壊をした場合に発動。
相手に200ダメージを与える。
●:『完全なる世界の絶対神』がフィールドにいる場合、
パートナーの維持に魔力を払わなくてもよい。
●:パートナー以外のユニットが自分フィールドに存在する場合、
自身はカードの効果を受けない。
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「ほお、ドローしたのは《鬼火》ですか」
《論理の箱》 の効果により、俺のドローカードは見られてしまう。
戦況は完全にカーティスに
《絶対神》がデッキからユニットを奪い、《論理の箱》がその《絶対神》を維持する。
《論理の箱》を破壊しようにも、《絶対神》で奪ったユニットがいる限り破壊ができない。
そして、壁となるユニットが破壊されるためにダメージが発生して、少しずつ追い詰められていく。
『まさに
ヴァナが
勝つための
「これは完璧な戦術、でしょう?」
悔しいが、カーティスの言う通りだ。
確かに、これはほぼ完ぺきな戦術と言ってもいい。
だが、気になる点があった。
「で、これのどの辺が『シティの体制が大切な理由』なんだよ」
そう、カーティスは言っていた。
その理由をこのターンに見せると。
だが、ターンが終了してもなお、その理由は分からなかった。
「ああ、確かにこれだけでは意味が分かりませんよね」
申し訳ない、とカーティスは頭を下げる。
「単純な話です。この戦術と同じように、シティの現体制は完璧な構造で成り立っている。そう言いたかったのですよ」
「…………」
意味がまるで分からない。
そんな顔をしていると、カーティスは語りだした。
このシティの体制の構造、その
● ● ● ●
シティ・アルファはなぜランク分けされた階層社会なのか。
なぜ平等ではないのか。
その答えは単純だった。
平等は、不可能だからだ。
500年前の
人類はこのシティという
この時点で1つの限界があった。
そこに住む全ての人間に十分かつ平等に配分できる程、シティのリソースは余裕がなかった。
平等にした場合、誰もが少しづつ不満が出る状態になってしまう。
そして、それでは平等を維持できない。
なぜなら、不満のある人間は『他者より
他者より裕福に、他者より認められ、他者より上に。
大なり小なり、人は
そうして必ず生まれることになる、
ならば、最初からそれを人工的に生み出して管理しよう。
それがシティ・アルファの階層社会だ。
そしてその管理はAIに
何故なら、権利を持つ人間はいつか必ず、大なり小なり『
他者への利益以上に、自分への利益を。
金銭的なものだけとは限らない。
自分の所属する集団、他者からの評価などもその利益には含まれる。
その結果、政治の形は歪むのだ。
王政や独裁は元より、民主政治すらそうだ。
主権を持つ民衆はそれぞれに、それぞれの利益を個々で望む。
そこでは集団としての利益という視点は抜け落ちる。
だが、AIにはそれがない。
『
冷たく、機械的に、最も多くの人間が最も幸福になる道を計算できる。
リソースが限られたこの時代に置いて、人類がそれなりに幸せに存続する方法はそれしかなかったのだ。
…………
ならば、敗者をとなることを決められた者はどうすれば良いのか?
冷たい計算の上でシティ社会にとって不必要と判断され、低ランクとしてギリギリの生活を
彼らは、ただ定められた運命に従って生きるしかないのか?
そんな状態は不満を生み、やがて反乱を生むのでは?
その通りだ。
敗者の固定は、必ず大きな反発を生む。
だからこそ必要だったのだ。
『
過去の大規模な反乱を機会に導入されたこの制度は大成功だった。
カードゲームという運を多分に含んだ逆転要素。
稀に起きるジャイアントキリングは、低ランク者のガス抜きに大きく貢献した。
『
そうして、ここに
大小の問題をはらみつつも、
だからこそ、『解放主義者』は徹底して潰す必要がった。
なぜならここまでの仕組みは『シティが
ここではないどこか。
管理AIの目が届かない、高ランク者の顔色をうかがう必要のない
そんな選択肢がないことが
もし、この閉じられた空間から出られるという可能性があるとしたら?
崩壊した外界が
おそらく、アウターに住む低ランク者から、そこに希望を見いだして外界を目指すものが出始めるだろう。
そして、それはシティの崩壊をもたらすことになる。
外界に定住できるかどうか、は問題ではないのだ。
そこに夢を見て人々の移動が起きてしまうこと自体が問題なのだ。
シティの生産を支えるアウターの人口が減少すれば、ギリギリで成り立っていたシティの社会システムは維持できない。
それが続けば、やがてシティの体制は崩壊へと至る。
そして過酷な外界に適応できない人々は
AIに管理されない、真に弱肉強食の世界がやって来る。
これが『解放主義者』によってシティがたどることになる最悪のシナリオ。
だからこそ、シティの外界への門は閉じ続けなければならない。
外に出られる、という可能性すら存在してはならない。
永久に続く完全なる完璧な世界を
● ● ● ●
「私の戦術が《論理の箱》で成り立っているのと同じく、この世界は『閉鎖都市』という構造で成り立っています」
「だから、その閉鎖性を壊してしまう『解放主義者』は放っておけない。ってことか」
「ええ、そうです」
そうカーティスは俺の言葉に同意する。
なるほどな、と俺は思った。
隣で浮かぶヴァナはかなり不満そうで、言いたいことがありそうだ。
だが、俺は今の話でかなり納得してしまっていた。
カーティスの話はそれなりの理屈は通っている。
まあ、気になる点がない訳じゃない。
解放主義者への対応などは過激すぎるとも思う。
だが、500年前とは世界が大きく激変しているのだ。
俺の時代の
しかし、ただ1点だけ、俺は気になることがあった。
だが、それを
「俺のターンを進めるぜ」
そう、俺のターンの制限時間はもう
---------------------《フィールド》-------------------
〈レイミ〉
ヴァナ Lv0/50/0
〈カーティス〉
絶対神 Lv10/0/0
《ダークネス・オーガ》Lv7/850/500
《論理の箱》Lv9 永続アイテム
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とにかく、今は壁となるユニットが必要だ。
「俺はレベル0の《鬼火》を召喚する」
小さな炎のお化けが俺のフィールドに現われる。
時間もなければ、これ以上できることもない。
俺はターンの終了を宣言した。
次回「
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