11.ランク1 VS ランク7
---------------------《2ターン目》--------------------
〈レイミ〉 〈アガレス〉●
ヴァナ Lv0 召喚導師 Lv1
Lp 1000 Lp 1000
手札 4 手札 5→6
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〈アガレス〉魔力 0→4
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ターンの開始と共にアガレスの頭上に魔力を示す紅色の球体が5つ現れ、すぐに1つが消滅する。
「オレのパートナーはレベル1。その維持に1の魔力を使うため、魔力補充は5より1を引かれて4となる」
続けてアガレスは手札のカードを1枚使う。
「レベル1スペル《血の契約》。ライフと引き換えに、デッキから任意のユニット1枚を手札に加えるカードさ」
その効果により、彼はデッキのユニットカードを1枚選んで手札に入れる。
選んだカードはレベル1ユニット《サモンド・ナイト》。
「君のレベルに合わせてあげたいんだけど、あいにくこれ以下のレベルのカードは用意がなくてな」
などと皮肉を言いながら、彼は《血の契約》の代償として100のライフを支払う。
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〈アガレス〉Lp 1000→900
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「そして当然、この《サモンド・ナイト》を召喚だ!!」
放たれたカードから、光と共に小さな戦士がフィールドに出現する。
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《サモンド・ナイト》
Lv1/攻撃100/防御100
タイプ:光,戦士
●:???
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〈アガレス〉魔力 4→3→2
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相手が召喚したこの小さな戦士は、攻防ともに俺の場の《鬼火》 (攻50/防0) を上回る。
レベル1のこのユニットも決して強いカードじゃない。
だがそれにも勝てない程に、俺のデッキのカードたちは弱いのだ。
「……このまま攻撃すれば倒せてしまうが、あまりにも
これも持つ者の
それはユニット1体の攻防を100アップするカード。
だが、あろうことか彼はそれを俺のユニットである《鬼火》に使用した。
鬼火はアイテムの力を得てそのステータスを上げ、《サモンド・ナイト》を逆に上回る。
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《鬼火》
攻撃力50→150
防御力 0→100
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……こいつ、なにを狙ってやがる?
不可解な相手の行動に、俺は警戒する。
「さあ、《サモンド・ナイト》で突撃だ!!」
続けて宣言される、無謀な攻撃。
このまま攻撃しても《鬼火》は破壊できず、逆に《サモンド・ナイト》が破壊されることになる。
いや、そこで俺はようやく気が付く。
むしろ、""それ""が狙いか……!!
《鬼火》へ向かって《ナイト》がその剣を振り下ろすが、その攻撃は炎に阻まれ逆に小さな戦士の全身は焼かれる。
「この瞬間、オレは《ヴァルハラの祝福》を詠唱する!!」
……やはり!!
アガレスが場に出したレベル0スペルを見て、俺の中で先ほどの推測が確信に変わった。
《ヴァルハラの祝福》。
それはユニットが破壊される度、そのユニットの持ち主の魔力が補充されるカード。
そして《サモンド・ナイト》は破壊される度に、次の《サモンド・ナイト》をデッキから召喚する能力を持つ。
それらが意味することは……。
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《サモンド・ナイト》
Lv1/攻撃100/防御100
タイプ:光、戦士
●:破壊された場合に発動できる。
デッキから『サモンド・ナイト』1体を召喚する。
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《ヴァルハラの祝福》
Lv0 通常スペル
タイプ:光
●:このターン、ユニットが破壊される度にその合計Lv+2の魔力を持ち主に与える。
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「さあ、2枚の効果だ。オレは魔力を増やし、新たな《ナイト》を召喚する!!」
新しい小さな戦士がフィールドに姿を現し、アガレスの頭上に光る魔力の玉は数を増す
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〈アガレス〉魔力 2→5→4
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新たな《ナイト》の召喚に魔力1を消費するが、気休めにもならない。
クロスユニバースでは、デッキに入れられる同名カードは基本3枚。
奴のデッキにはおそらく《ナイト》がもう1体いる。
つまり当然。
「続けて、この《ナイト》でも攻撃だ!!」
それは先ほどの再現。
小さな戦士は炎のお化けに突撃し、その身を破滅させる。
そしてその犠牲はアガレスの魔力を増やし、フィールドには変わりの戦士が姿を現す。
「そして再び攻撃する」
主人の非情な命令によって最後の戦士も突撃し、その身を犠牲にする。
1連の攻防により、アガレスの魔力はさらに増強される。
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〈アガレス〉魔力 4→7→6→9
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「魔力……9!?」
横で試合を見守るマリーが、アガレスの増えた魔力を見て絶望の表情を浮かべる。
9という魔力は、このゲームに置いてたった1ターンで得られる数値ではない。
そして多くの魔力を得たということは、おのずと次に相手がとる一手が想像できる。
つまりは、高レベルカードの召喚だ。
「我がパートナー《召喚導師》の能力発動だ!!手札2枚とライフ200をコストに、オレはデッキから大型ユニットを召喚するっ!!」
アガレスの傍らに控えていた仮面の小さな悪魔が怪しげな術を用いて魔法陣を描く。
黒煙と共に魔法陣から召喚されるのは、巨大な鬼のような姿をした悪魔。
威圧感を放つそれは、先ほどジュンを倒した怪物だった。
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《ダークネス・オーガ》
Lv7/攻撃850/防御500
タイプ:闇,悪鬼
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〈アガレス〉
Lp 900→700
手札 3→1
魔力 9→2
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《ダークネス・オーガ》。
このカードは特別な能力こそ持たないものの、その高いステータス故にかなり強力なカードだ。
しかも、この場合は""例外的に特別な能力を備えている。""
「さあ、《オーガ》よ!!その目障りなザコを蹴散らせっ!!」
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《ダークネス・オーガ》
攻撃力850
VS
《鬼火》
防御力100
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圧倒的な一撃っ!!
その巨大な腕のひとふりで、小さな炎のお化けは消し飛んでしまう。
「だが、まだ終わらない。《召喚導師》の力により、《オーガ》は1ターンに2回攻撃できる!!」
そう、これが《召喚導師》によって《オーガ》が得た""特別な能力""。
もう俺とヴァナを守るユニットはフィールドにはいない。
再度振り下ろされる巨大な腕はヴァナを直撃し、その勢いのままに俺の体も吹き飛ばす。
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〈レイミ〉Lp 1000→150
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『………っ!?』
「……っあぁ!!」
大ダメージを受けてその小さな体を吹き飛ばされた俺たちは、マリーの店の外壁に叩きつけられる。
打ち付けられた衝撃で肺の中の空気が漏れて、声にならない声が俺の口からもれる。
―――リアルダメージ。
ジュンと戦った時の電撃もそうだったが、これがこの世界でのカードバトルの怖さ。
ただの盤上ゲームに付加された、命の取り合いを感じさせるリアルな戦いの要素。
なるほどな、とそこまで考えて気が付く。
互いの立場、主張、未来。
それらを賭け、身を削る条件を提示し合って行われるのがこの世界でのゲーム。
""痛みを伴うゲーム""って訳だ。
文字通りに。
「……かはっぁ」
ようやく俺の肺が活動を再開し、空気を再び取り込む。
心配して駆け寄ってくれたマリーの体につかまり、なんとか俺は再び立ち上がる。
「これがランク7とランク1の実力の違いだ。これ以上痛い目に合いたくないなら降参しな、悪いようにはしない」
もちろんそんな提案にはのらない。
悪いようにはしない、なんてセリフは悪いようにする奴しか吐かない。
それに、ランクの差なんて関係ないのだ。
俺の手にはすでに、逆転の方程式が揃っている。
次回「弱者の逆転」へ続く
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