第二章 秋田町のスーパー☆スター
お店を開業し始めたころ、只々営業するのは面白くないと思い、歌のモノマネをするマスターになろうとした。
その時のネタが、
“もしも吉川晃司が○○を歌ったら”
と、いうネタをしていた。
俺の中では、最高に面白いネタだった。
そんなある日、知り合いがケーブルテレビに出演するので観ていたら、カラオケ番組で歌を披露する。
衝撃だった・・・
郷ひろみの【二億四千万の瞳】をモノマネで歌い、更に、間奏でタンバリンを叩く。
それを観た俺は、
「これやっ!」
このネタは絶対ウケる、間違いない!
そう思いタンバリンを買って、その方のネタを完全コピーした。
その結果、それがお店でヒットし、秋田町で少し名前が広がり、このネタで秋田町のスーパースターを目指すのであった。
ある日のこと、お客様が、
『おっ!ギターあるで、弾いていいん?』
「弾けるのでしたらどうぞ」
そう言うと、お客様がギターアンプのスイッチをいれた。
数年前の話になるが、高校卒業前に俺は、モトクロスも辞めて得にすることもなく、クラスメートとバンドでもやろうとエレキギターを買った。
ギターショップの定員に、
『これさえ読めば、ギター弾ける』
と、テキストを買わされたのだが、なにを書いているのかさっぱり・・・
三日で、押入れ行きになる。
せっかくなのでインテリアとしてお店にエレキギターを置いていた。
“ジャガジャーン”
お客様が、演奏をしだした。
「うわ!俺のギターから音がでた」
「ほら、音は出るだろな・・・」
と、自分でつっこんでしまった。
自分のギターからの音が出たのと、簡単そうに演奏するお客様の姿をみて、
「すみません・・・俺でもギター弾けますかね?」
『とりあえず、CからBまでのコードの押さえ方おぼえ』
そうアドバイスをいただき、ギター特訓が始まった。
しかし、押さえ方覚えても音がでない・・・
一ヶ月ほど経ち、全く上達ができず諦めていたとき、あるお笑い芸人さんがテレビでギターを弾きながら歌う姿をみて、
「この人が弾けるなら、俺も諦めるのは早いな」
と、大変失礼ながらそう思い、特訓を再会した。
そして、三ヶ月ぐらい経ったときに、ヘタくそなりに何曲か演奏できるようになり、ギターを教えていただいたお客様がライブに出演することになったので便乗し、ライブに出演した。
初出演ながら大盛況となり、このライブをきっかけに、ミュージシャンとなりスターを目指すことになった。
“諦めかけていたとき、あのお笑い芸人のテレビを観てなかったら、カラオケ以外の音楽とは無縁の世界だった”
と、思う今日このごろ・・・
それから、月日がながれ、変わらずお店の経営とスターを目指す日々が続き、秋田町のスターになりつつあるころ、お店に常連のお客様が、ディスコ曲でヒットした大物歌手である、Mr.コーンさんを連れてやってきた。
その日、お店も暇でMr.コーンさんと、ほか三人しかいない・・・
Mr.コーンさんは、ご来店してからほとんど無口で、サングラスかけ、腕をくんでいる。
俺が話をするも、うなずくことしかしない。
すると、常連のお客様が、
『龍司!せっかくMr.コーンさんいてるから、お前のネタみせて評価してもらい』
俺は、Mr.コーンさんの威圧に緊張しながら、
「それでは、歌わせていただきます」
そう言い、俺がスターを目指すきっかけになった、【二億四千万の瞳】を歌う。
全力で披露するも、Mr.コーンさんはピクリともせず俺を観る・・・
“もうええから誰か、演奏止めてぇーーー!”
と、心の叫びが・・・
そして、最後まで笑わず演奏が終わる。
“絶対怒っている”
俺は確信した。
それから、とくになにもなく、たわいのない話をして帰られるとのことで、エレベーターまでお見送りをする。
「本日は、ありがとうございます。またよろしくお願いいたします」
挨拶をすると、
『うん、またくる』
そういいエレベーターが閉まった。
数ヶ月が経ち、Mr.コーンさんを連れてきてくれたお客様から携帯に連絡が入り。
『今Mr.コーンさんが、○×△のバーにおって、“龍司を呼べ”っていいよるから、こいよ』
前回のことで、怒られるのか?と、恐る恐るお店に入ると・・・
『おっーーー!龍司、こっちこっち』
Mr.コーンさんは、機嫌よく俺を呼び、
『早速やけど、この間やったネタやってくれ!』
「あ、はい」
いきなりネタをさせていただき、
『他にもネタあるんやろ?全部やってくれ』
俺は、持っているネタを全てした。
『やっぱりお前は、バカだ』
『おもろい』
『本人の前でやったら怒られるぞ!』
なんと、Mr.コーンは俺のネタにハマっていたらしく・・・
大爆笑してくれるMr.コーンさん。
それからというもの、ありがたいことに秋田町にくると必ずお店にご来店していただける仲になった。
しかし!
それ以上、芸能界へのスカウトは未だないのであった・・・
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