3-2 終わる夏休み 2
そして、翌日。妖精たちと出かける日だ。ただ、どうしても彼女たちは目立ってしまう。異世界でのようには行動できない。異世界では町に出るだけでは妖精は奇異の目で見られることはない。その中で、彼女たちの価値を知っている者たちが、遅いに来ていたのだ。この世界では妖精自体が、特別でい奇異な存在だ。人目につく場所に行けば、一瞬で大パニックになるだろう。彼女たちには申し訳ないが、解決策を思いつくまで、姿を消す魔法を使うしかない。だが、人の多いところには行けない。姿を消す魔法は、存在そのものを人に認識させないようにするわけではなく、単純に対象に向かって移動する自然の魔気の軌道を逸らして、対象物に反射しないようにしているだけなのだ。つまりは、接触されれば、そこに何かあるのは確実にばれてしまうだろう。
それをみんなに話すと、全員が了承してくれた。フレイズが心配だったが、彼女は口では大人しくしていると言っていた。彼女は好奇心に負けることが多々あるため、その約束を確実に守ってくれるという保証はない。異世界でも彼女の好奇心のせいで、彼女自身が何度も盗賊に捕まったり、貴族に捕まったりで、大変だった時期もあったくらいだ。白希が彼女のことを本気で心配している心が伝わると少しマシになったのだ。とはいっても、好奇心に負ける回数が少なくなったというだけで、勝手に行動しないというわけではないというわけだ。そして、この世界には彼女の興味をひくものが沢山ある。だから、勝手に行動して、誰かに見つかるとかなり困ったことになる。彼は例え、この世界でそう言うことが常っても、彼女を助け出すことを決意しているし、覚悟もしている。自分が死んでも彼女を助けようとしているのだ。それに彼はフレイズに好奇心に従って行動する行動力も好きだと伝えてしまっている。彼女はそう言われたことで、その好奇心に少しだけ抵抗することを覚えたのだ。だから、彼女は自分の行動を悪いとは思っていないし、他の妖精も彼女を自分勝手だとは思わない。それぞれが、好きなことをするのが妖精だ。そもそも、四人も妖精がずっと一緒にいるなんてことは珍しいことなのだ。
彼女たちが心配ではあるが、考えすぎて彼女たちを拘束するのも、彼は嫌だった。だから、外に出ることを躊躇わない。その日、五人で言った場所は、住宅街を進み、公園の中を歩いた。公園と言っても、子供が遊ぶだけの狭い物ではなく、ランニングコースが敷かれていたり、自転車用の道路が作られていたり、各種スポーツのコートがあったりした。それ以外にも川に沿って整備された道は沢山の人の散歩道になっている。人は多いが、彼の近くにいれば、彼女たちも避ける結果になり、公園内を歩いても問題なさそうだった。会話の音も風の魔気を使った魔法で、音波が外に火らがらないようにしていて、彼らの声は周りには聞こえない。通信しているかのように耳元にそれぞれの声が聞こえるという魔法だ。さらに、水の魔法を使い、幻を映した。視界だけでいえば、彼が一人で歩ているようにしか見えない。誰かにぶつかられない限りは、周りの人間に全く分からないだろう。異世界で鍛えた魔法がこの世界でも役に立つとは思わなかった。
公園を歩くだけではあまりこの世界らしいものはないようで、彼女たちはあまり外に視線を向けなくなってしまった。そんな中、公園の一角には、子供たちが遊ぶような滑り台やブランコなどの遊具が集まった場所があった。そこには子供がはしゃいで遊具で遊んでいるのが見えるのだが、その中に一際目立つ二人組がいた。正確に言うなら、目立っているのは一人だけでもう一人はその人の連れなのだろう。目立つ人物は黒い髪で、眼帯をしている。服も黒を基調としていて、いかにも中二病と言った様子の女子だ。そして、そんな彼女をキラキラした目で見ているのが、小学生くらいの女子だ。その子は中二病のような恰好はせずに、日曜日の朝に放送している女児向けのアニメの絵が描かれた服を着ている。見た目には一緒にいるような仲には見えないのだが、二人には何か見えない絆があるのかもしれない。彼は適当なことを考えながら、その場を後にした。
しばらく歩いて、周りが暗いことに気が付いた。そこまで歩いたつもりはないのだが、と思い、スマホを確認すると、午後二時だとデジタルで表示されていた。午後二時ではここまで暗くはならないだろう。
「みんな、大丈夫?」
「シラキさん。これは……?」
プロイアが彼の肩に手を付いて、他の妖精たちも彼の体に触れているため、彼女たちがどこに居るかはわかっている。頭にはファス、肩に乗っているのはミスト、肩に触れているのはプロイア。彼の胸に背を預けているのがフレイズ。現実で、夜でもなく、部屋の中でもないのに、昼にいきなり暗くなるわけがない。つまりは、何かしらの攻撃を受けていると考えた方が良いだろう。彼は警戒して、辺りを見回していた。
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