第2話 僕の過去

 人間は急激な変化に対応するために、何かしらの副作用が出てしまう。例えば、いきなり美人な女性と話すと赤面し、心拍数が上がる。そしてなんとか捻り出した言葉で会話をするのだ。いいや、会話できていないのかもしれない。



 綾乃は、目がパッチリ二重で鼻が高い。さらに、顔がとても小さく、8頭身はあるだろう。おまけに胸は、セーターの上からでもしっかりと形を表すほどの巨乳である。まさに国宝級。橋本○奈ほどではないが。



 綾乃はまだ登校してない。席が僕の隣と知った時、どのような反応をするのか正直予想はついていた。綾乃の友達は陰口を言っている。


「アイツの隣とか、綾乃ついてないな~」


「本当だよね、あんな陰キャなんか不登校になれば

いいのにね」


「ほんとそれな~」


 別に悪口を聞いても傷つかないが、腹は立つ。

僕が陰キャになった理由も知らないくせに、、、



 僕は元々陰キャではなかった。むしろ陽キャだったと思う。中2の春までは。

 僕の父は建築の仕事に就いていた。父は1級建築士の資格を持っていて、収入はかなり良く、比較的裕福な家庭であった。しかし、父は母とは別に違う女を作っていた。父は違う女と寝る時に感じるスリルが興奮するという、気持ち悪い性癖を持っていたらしい。僕は父の血が全身を駆け巡っていると考えるだけで、吐き気がした。

 会社は退職、母とは離婚をした。そのため、母は僕を養うために、毎日パートを休みなく入れた。母は毎日夜中に帰ってくる。睡眠はほとんどしていなかったのであろう。母は乳癌で死んだ。

 僕は母が大好きであった。辛い時も悲しい時も寄り添ってくれていた。そんな大切な人が死んだのだ。気持ちを切り替えることなんて出来なかった。こんな始末になるのだったら、大嫌いな父と離婚しなくても良かったのではないかと思うほどだった。



 不幸は僕たちを待ってはくれない。立て続けにやってくるのだ。まるで、巨大地震により町中が壊された後に、大津波が来るように。

 当然、あり得ないほどの変化による副作用は大きく、僕は今でもそれを引きずっている。(2年間も)



 僕は陰キャになって、1つだけ良かったと思うことがある。それは、理由もなく人を軽蔑しなくなったことだ。どんな人にも他人から見て軽蔑したくなる部分がある。しかし、僕のように必ず何かしらの理由があるのだ。それも知らずに軽蔑するような人にならなくて良かったと今でも思っている。

 

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