第1話 前世の記憶①

† †


 この世界には、稀に魔力を持った子供が生まれる。

 遺伝ではなく、規則性もなく。ただ、いきなり魔力持ちは生まれるのだ。


 いつからだろうか、それとも最初からか、そんな数少ない魔力持ちは、魔力を持たない人間から「人に不相応な力を持つ化け物だ」と、冷遇されていた。


◆◇◆◇◆◇


 私は魔力持ちなど、信じていなかった。いや、『魔力持ち』を信じていなかったというよりは、『魔力』自体を信じていなかったと言った方が正しいか。


 ──自分が『魔法』という自然法則を無視した現象を引き起こすまでは。


 自分が魔力など信じていなかったことが嘘のように、魔力を自分が持っていることが当たり前のように感じた。


 力が発覚した途端、元々両親に嫌われていたため、体よく厄介払いされてしまった。

 不仲の原因は、私の容姿。髪や瞳の色はもちろん、骨格も顔立ちも両親どちらとも似ていなかったので母親の不倫でできた子供だと思われていたのだ。


 しかも、髪や瞳はただ両親と異なる色というだけでなく、白銀に薄浅葱うすあさぎ色という珍しい色だから村にも馴染めず、浮いていた。


 父親は不倫をしたと思っている母に怒り、母親は不倫などしていないのにお前が似ていないせいで、と私を恨む。


 私としては、別に血が繋がっていてもいなくても構わないのだが。

 そんな冷めた考えが伝わっていたのだろう。追い出されたのは、両親は私を無視し、それが異常だとも思わないくらい、それに慣れきっていた頃だった。


 幸いにも私の住んでいた村は閉鎖的だった。

 だから近くの大きな街に行くと私のことを知る人は一人も居らず、力さえ隠していると魔力持ちだと気が付く者はいなかった。


 しかし、住み込みで働いていた場所で火事が起きた。

 その時、建物の中にいた私は迫り来る炎に思わず水を出してしまった。

 それを運悪く店主に見られてしまい、「よくも今まで騙してくれたな、化け物め!」と罵りながら、殺す勢いで暴行を加えられた。


 なんとか店主から逃れるも、噂はすぐに町中に広がったので、逃げた先でも追い回された。

 からがら町の外れの川の畔に逃げ、やっと人心地がついたが、体力はもう限界。安心してしまったせいか、傷が痛み出し、動けなくなってしまった。


∗∗∗∗∗


「あら、お前が今噂の魔力持ち?」


 降ってきた声に目を覚ます。いつの間にか眠っていたようだ。

 目の前には綺麗な金色の髪と紫の目をしている女の人がいた。

 とても美しい人で、思わず見惚れていた。


「ボロボロね。まだ眠っていなさい」


 まだ疲れていた私はその声につられるように再び微睡みの中に沈んで行った。

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