第0036撃「ゴンの死んだ日」の巻


平成2年1990年、10月、中学2年の2学期。

「ゴンが死んだよ」

母が姉にあたる、小生にとっての叔母との電話を終えて、

小生と祖母に伝えました。

「ゴンの亡き骸に会いに行くか?」

べつに行かへんよ、と小生は答えました。

「おまえは薄情もんや」

そう言って母は祖母と身支度を整えて、

愛犬のぺるを連れて叔母の家へ出かけました。


小生はひとりで布団に横になり、

ぼーっと天井を眺めてました。

〈もう死んだのだからゴンはいない、

だから亡き骸を見たところでどうにもならへんやろ〉

そんなことを考えてました。

愛犬ゴンはぺるの生みの父親で、

小生が産まれてまもないころ、

母が知人から引き取って家で飼うようになったのでした。


後年に聞いた母の話では、

ゴンは知人に掃除機で殴られていたらしい。

だから、母が家で掃除機をかけ始めると、

よく唸り声をあげてました。

しかし、ゴンは、赤ちゃんである小生を噛むようなことは、

決してありませんでした。

ようやく歩きはじめた小生をゴンは背中に乗せて歩いてくれて、

小生はキャッキャと喜びました。

ゴンは兄のようなつもりで、

小生が育つのを見守ってくれていたのだろうか……。


そんな家族の亡くなったことにちゃんと向き合わなかったことは、

たしかに小生は薄情もんかもしれない……。


小生が小学校受験で忙しくなったころ、

母は叔母宅にゴンを譲ったのですが、

それまでの6年間ほどを

同じ家の空気を吸ってすごした仲でした。

叔母は家で同じ白いトイプードルの雌のメグを飼い始め、

ゴンとメグのあいだにぺるが生まれたというわけでした。

犬だって亡くなれば霊体となって、

しばらくは叔母宅にとどまるかもしれないとは、

その時は考えもしませんでした。


そんな10月も下旬が近づき、

小生の通っていた芝嶋中学(仮名)では、

文化祭で合唱をやろうということになりました。

そして、米米CLUBの「浪漫飛行」を皆んなで歌おう、

ということに決まったのでした。


正直を言うと小生は、

「浪漫飛行」には気がのりませんでした。

あまりにもヒットソングだったので、

流行にただながされているように感じたからでした。

なので歌詞を暗記しようにもなかなか頭に入らない。

放課後、居残りになって練習させられる始末です。

多坂(仮名)も記憶力がにぶいらしく、

多坂と一緒に練習出来たことが、

せめてものモチベーションになりました。


米米CLUB「浪漫飛行」(1990年)

YouTubeで観る https://youtu.be/EX3TRj0_2Ys?si=CP5yM6bSQRxXQ4vr


懐かCMを観る1990年(17)10月

https://youtu.be/y7V7DTwDIHM?si=Nuvr7yTxEpib7GK-


続く。果てしなく続く……。

(まだまだ続くよーっ!お楽しみに〜!)

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