第0035撃「梅田LoFtに行こ〜や!!」の巻

平成2年1990年、10月、中学2年の2学期。

放課後、相変わらず写真部の部室(兼、暗室)でひと息ついていると、

「お〜すっ!皆んな元気かい〜?」と懐かしい声で扉を開ける方がみえました。

写真部の元部長の渡瀬さん(仮名)でした。

渡瀬さんは2学年年上の女性の先輩で、

小生が中学1年の終りに、

当時中2の筒林先輩(仮名)に部長職を任し、

華麗に有終の美を飾ったのでした。


「部長〜!」

中1の頃子犬のように渡瀬部長に懐いていた小生は、

突然の歓びを隠せませんでした。

「おいおい、もう部長じゃないから『渡瀬さん』やろ!

夢野ぉ、今度の日曜空いてるかー?

空いてるよねー、キミは〜」

小生が暇人の前提で話が進みます。


なにがあるんですか?と訊ねると、

「おう!今年出来た(1990年4月開業)ロフトに、

マンガ描く道具見に行こうや!」

ということでした。


日曜日。

泡嶋駅で三、四人で集合して阪急梅田駅へ向かいました。

梅田駅を下りると大画面モニターの下にきみどり色の公衆電話が並び、

紀伊國屋書店からは人の出入りが絶えません。

駅を出て東のほうへ少し歩くと、

イエローとブラックのツートンカラーの看板を掲げた、

梅田LOFTのビルがにこやかに聳えていました。


入店するとワクワク必至の商品棚が小生たちを出迎えてくれました。

豊富な商品数に圧倒されながら、

皆んなでエスカレーターを一階ずつ登ってゆきます。


とうとう漫画を描くペンやケント紙などを揃えたフロアに行き着きました。

「夢野ー、絵を描くなら、

こういうのを持っておくと便利やで」

渡瀬さんが手に取って見せてくれたのは、

関節部分が動く、デッサンを練習するための、

高さが30cmほどの人形でした。

小生は一瞬で欲しくなりました。

陳列棚の値札には2500円と書いてあります。


お財布には交通費と、

クレープを買うために用意した僅かばかりの飲食費しか入ってません。

一瞬で悟った渡瀬さんが、

「今度返してくれたらいいから買っとき」と言って払ってくれました。

小生は映える赤色を選びました。

レジで会計をすますと店員は、

無駄にデカい黄色の袋に、

デッサン人形の入った箱を入れてくれたのでした。


小生はるんるんで帰宅し、

デッサン人形を箱から出して机の上に置いて、

今にも走り出しそうなポーズに関節を調節しました。

「ぺる!かじったらアカンぞ」

愛犬のぺるは瞳をきらきらさせて、

赤いデッサン人形を見つめては尻尾をふるのでした。


祖母の部屋から聞こえてくるテレビのコマーシャルで、

「画王」という新型の大型ブラウン管テレビの

販売が始まったことを知りました。


懐かCMを観る1990年(16)10月「画王」

https://youtu.be/RYS_1JGm_IY?si=xoBoMm2ePR5WkMZG


竹内まりや「告白」(1990年)

YouTubeで観る https://youtu.be/DzPzG_UBMMI?si=IS2-BteWA2aDHsMl


続く。果てしなく続く……。

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