第35話 遠出② 好き?普通?嫌い?
「そう…でもその前に、色々と話を聞かせてもらってもいいかしら?」
「あぁ、正直に話すよ。」
「その…私が都合のいい存在だと思うまでに至った経緯を話してもらっても?」
「あぁ…俺は不幸体質の為にずっと独りで生きて行くものだと思っていたから、今日のこの日が澪と初デートだと気付いた途端、澪は俺の事をどう思っているのだろうかと気になり、澪は何時まで一緒に居てくれるのだろうか…
本当は俺の様な面倒くさい体質の男の側には居たく無いのではないか…?
と思い始め、最後には俺が澪の事を、不幸体質を無効化出来る都合のいい存在だと思ってないか…?
と考え込んでしまったんだ…。」
澪は少しだけ考える素振りをした後、恥ずかしそうに口を開く。
「…ひとつ質問してもいいかしら。
凪君は私の事をどう思ってるの?
好き?普通?嫌い?
異性としてとか友達としてとか考えなくていいから、凪君の中で私はどれに当てはまると思う?」
「勿論、好きだ。
でなければ、一緒には居ないと思う。」
俺が即答すると、澪は頬を赤く染めて胸を撫で下ろす仕草をした。
「良かった…。
それがこの悩みに関しての答えだと思うわよ。
私も凪君が好き。
でも、何時まで凪君と一緒にいられるかは分からないわ。
それは他の友達でも恋人でも夫婦でも一緒。
ケンカして絶交しても、他に好きな人が出来て別れても、性格の不一致で離婚しても、そして老夫婦となるまで一緒にいられたとしても、最期には死が訪れて、いつかは別れがやって来る。
出会いと別れは誰にでも訪れる当たり前のものだから、そんなに思い詰める必要は無いわ。
それに確かに私は凪君の不幸体質を無効化出来る存在みたいだけれど、例えば友達に英会話が出来る人が居たら外国へ旅行した時にとても助かるし、当然頼りにするわよね?
不幸体質無効化もその程度のものだと思えばそんなに重く考える事は無いのではないかしら?
少なくとも現時点で私から貴方の側を離れる事は全く考えていないし、それにいつか私の他にも貴方の不幸体質を無効化出来る人が現れるかもしれないわ。
どう?これを聞いて、少しは気が楽になった?」
澪はその程度の事を気にするな、といった感じで俺に微笑んでいる。
「…こんな人付き合いすらまともに出来ないポンコツな存在の俺に、どうして澪はそこまで良くしてくれるんだ…?」
俺は疑問に思った事をそのまま口にすると、澪は不思議そうな顔をしていた。
「…忘れたの?
最初に私に良くしてくれたのは貴方でしょ。
もうこの際、話してくれてもいいんじゃないのかしら。
何故私をイジメから助けてくれたの?」
「…違う、最初に良くしてくれたのは澪だ。
澪は野良猫にミルクをやっていた陰キャの俺に微笑みをくれた…。
イジメの事を知ったのは…
澪も薄々解っているとは思うが、アイツ等が話し合いに応じる訳が無いので解決手段については合法的では無いから聞かないでくれると助かる。」
「…優しく美しい人…。」
澪はそう言いながらポーッとしていた。
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