第20話 2人目の友達

 次の日の昼休み、俺はいつも通り購買に行きパンを買って自席に戻ったら、平川が俺の席に普通に座っており、その脇には鳴沢が立っていた。

 俺の机の上には2人の弁当が置かれている。


「…2人共、どうしたんだ?

 そこは俺の席だが。」


「そうだよ?昨日、『また明日ね』って約束したよね?

 一緒に食べよう?」


「あ…あぁ、そうだな。

 でも俺は社交辞令かと思っていたんだが…

 それに女子だけの方が気軽でいいだろう?」


「…あのね、ちょっとボクと鳴沢さんは今まで色々あって…

 だからキミと鳴沢さんがイチャイ…ゲフンゲフン。

 だからキミが鳴沢さんと仲良くしてくれてるのがとっても嬉しいの。 

 もし佐竹君が良ければ、これからはボクとも仲良くして欲しいな。

 それにキミ自身もぼっちで話し慣れていないって言ってたじゃない。

 だから、ボク達とこれから沢山会話していこうよ。

 ねっ?」


 平川は笑顔でそう言い、鳴沢は呆れ顔で


「貴方、早く教室から出ないと今大変な事になっているわよ?

 学校では出来るだけ目立ちたく無いんでしょ?」


と言った為、周囲を見回すと教室内に居るほぼ全員のクラスメイトがこちらをガン見していた。


「おい、何であんな陰キャ野郎の席にD組の平川さんが座ってるんだよ…。」 


「学校内美少女ランキングの上位にいる、あの平川さんが何故…?」


「それは平川さんと鳴沢さんが友達同士だからだろ?

 鳴沢さんだって色んな悪い噂があるとはいえ美少女ランキング上位には違いないし。」


「あの2人とどんな関係なんだクソ陰キャ野郎…。」


 俺がわざわざテレパスを使うまでも無く、男共の会話が丸聞こえだ。


「…昨日の場所に移動しよう。」


「やったー!そうだね、でも今後雨が降ったりしたらどこに集まろうか?」


「…少なくとも俺の席では止めてくれないか?」


「だよねー、じゃ雨の時はボクのクラスで食べようよ、ここの空気最悪だし。

 この2人の悪口を言うなんてホント最低サイテー、何も知らないクセに!」


 それを聞いた男共はバツが悪そうに、こちらから顔を逸らした。



 平川と鳴沢と俺は中庭に移動しながらも会話を続けた。


「…平川って、結構口が悪いのな。」


「そんな事無いよー、普段はあんな事言わないし。

 誰だって友達の悪口言われて嬉しい人なんていないでしょ?」


「…友達?あぁ、鳴沢の事か。 

 そうだな…。」


「エッ…さっき悪口言われてたの、主に佐竹君じゃん…

 ボクはキミの友達じゃ無いの…?」


 平川は泣きそうな顔をして首を傾げながら俺の顔を見て来たので、ちょっとどういう反応をしたらいいのか困った。


「そっ、そうか、済まない。

 昨日言った通り、俺はずっとぼっちだったから友達付き合いっていうのが良く解っていないんだ。

 これから迷惑掛けるかもしれないが、よろしくお願いします。」


「はい、お願いされました。

 これからよろしくね。」


 平川はにこやかに笑い握手を求めて来たので、俺はその手を握り返した。

 それを見ていた鳴沢も微笑みを浮かべていた。


「佐竹君、これからの事もあるし、平川さんに体質の事を言っておいた方がいいんじゃないかしら?」


 …そうだ、友達云々より先にこの事を伝えておかなければならないんだった…失敗した!

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