第3話 放課後①

 俺は家に帰るため校舎の脇を歩いていたら、上から植木鉢が降って来た。

 俺のチカラ、クレアセンティエンス(危険や避けるべき状況を感覚的に察知する超能力)が発動し、落ちて来ている事は解っていたのでサイコキネシス(意志の力で物体に影響を与える超能力)を使い植木鉢をキャッチして足元に置いた。

 一般的に知られる胸騒ぎも、このクレアセンティエンスの一種らしい。

 上の階から


「おーい、済まない、大丈夫かー!」


と男子生徒の声が聞こえたが、無視する。

 本音は、『バカ野郎、済まないで済むワキャねーじゃねーかこの野郎!!』と言いたいが、いちいちこんな事で目立ちたくはない。



 今度は学校から出て道路脇の歩道を歩いていると、乗用車がかなりのスピードで俺に突っ込んで来た。

 俺は同じくクレアセンティエンスで気付いていたのでチカラで車を俺から逸らすと、車は直近のガードレールに派手な音を立てて突き刺さり、ガードレールがくの字に折れ曲がった。

 運転手はエアバッグに包まれていて無事な様だ。

 俺は車道に出て運転手に近付きX線透視をして身体の内部を調べると、脳の血管が切れて血液が脳を圧迫していた。

 突っ込んで来た理由はこれか…

 直ぐにヒーリングを使い脳内出血を治癒させ、この場を足早に立ち去る。


 俺の周りではこんな事がしょっちゅう起こるので、スマホは一応持っているし本当は即通報した方がいいのだろうが、俺からは通報しない。

 何故なら警察や消防に俺の電話番号を知られない様にするためだ。

 じゃないと俺からばっかり110番とかしたら不審に思われるからな。


 …俺は超能力を得たのと同時期から、不幸な出来事が身の周りで数多く起きる様になった。

 何故かは全く解らないが、きっと俺が得たこのチカラと俺に不幸が降り注ぐのはセットなのだろう。

 もう如何どうしようも無いので俺自身は諦めているが、俺に関わる周囲の人間は違う。

 だから俺は極力他人ヒトとは関わらない様、巻き込まない様にモブの陰キャぼっちとして振舞い、ひっそりと生きて行く事を決めた。

 でもやっぱり学校くらいは卒業しておきたいからな、そこは出来るだけチカラを使って周りに迷惑を掛けない様にしていくから、少しくらいの迷惑は何とかカンベンしてもらいたい。

 ヒーリングも使えるし、最悪人の記憶もチョチョイのチョイっと操作出来るしな…

 でも俺って、死ぬまでずっと独りで生きて行かないといけないのだろうか…

 最悪就職はしなくて予知能力で競馬競輪競艇とかで食べていけるとしても、余りにも孤独過ぎる…

 俺の将来ってどうなるのだろうか…

 怖くて自分の未来予知とか出来ない…(泣)。


 そんな悲しい事を考えながら学校近くの大きなスーパーに寄り、ペット用品売場で猫用のミルクと紙皿を買って土手に向かう。

 実は俺はアニマルトーキング

(動物の言葉や感情を読み取り、理解する超能力)というチカラが使え、朝通り掛かった時にあの仔猫がニャーニャー鳴き叫んでいる内容も俺には理解出来ていた。

 まぁ、あれだけ必死にニャーニャー言ってるんだから、誰だって解るだろうが。

 


 土手に着くと、まだ仔猫は誰かに拾われる訳でも無く、


『お腹減ったニャー』


と言っていた。

 俺は紙皿にミルクを入れるとダンボールの中に置いてやった。


「ほーらネッコ、たんまり飲め、御代わりあるぞ。」 

 

『フォー、アナタが神かニャ!』


 そう言いながら仔猫は一心不乱にピチャピチャとミルクを飲み始めた。

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