自称最強の超能力を持つ俺には何故か平穏が訪れない

YUKI

第1話 新学期

 4月になり、まだ肌寒い日はあるが陽射しは暖かくなって来ていて、道端の所々に植えてある桜は見事に咲き誇っている。

 俺は桜は好きだが、花粉症なので春は嫌いだ。


 俺…佐竹凪さたけなぎは無事に高校2年に進級して、今日が登校の初日だ。

 府中市と稲城市の間には多摩川が流れているが、その上に架かる是政橋これまさばしを稲城市側に歩いて渡った所で土手沿いの草むらの付近に、俺と同じ高校のブレザーの制服を着て、艶めく長い黒髪を靡かせながら綺麗な顔立ちの美少女がしゃがみ込んでおり、ダンボールから顔を覗かせニャーニャーと鳴くキジトラの仔猫と戯れていた。

 ダンボールには『拾ってください』とマジックで書かれており、仔猫も必死に何かを訴える様に彼女に鳴き叫んでいる。


「…ゴメンね、今から学校に行かないといけないの…

 今日は学校が終わるの早いから、もし帰りにまだ居る様だったら、また会いましょうね…。」


 そう言って慈悲深い微笑みを浮かべた彼女はとても魅力的だった。

 綺麗だな…って、イカンイカン、俺は人と関わり合いになっちゃ駄目なんだ…

 俺はその笑顔を横目に学校へと急ぎ足で通り過ぎた。



 俺は我が学び舎である是政高等学校の校門を潜り、校舎の出入口に向かった。

 出入口の脇に貼り出されているクラス割表には人だかりが出来ており、それを後ろの方から眺める。

 …伸ばしている前髪が邪魔だな…

 好きで伸ばしているワケでは無いんだが…まぁ仕方ない。

 

 俺のクラスはA組だったので、家から持って来た上履きに履き替えると靴を新たに割り当てられた下駄箱に仕舞って足早に2階のA組へと向かった。



 クラス内の黒板には貼り紙がしてあり席順が書いてあったので、指定された廊下側の1番後ろの席に座る。

 見知った顔はあったが、陰キャぼっちな俺に声を掛けてくる物好きはいない。

 俺は机の横のフックにリュックを掛けると机に突っ伏して目を瞑る。


 暫くして教室の前側の扉を開ける音が聞こえたため目を開けると、担任と思われる40代後半のメガネを掛けた無精髭の男が声をあげた。


「おはよう、俺がこれからこのA組の担任になる伊東だ。

 これから1年間、よろしくな。

 今日の予定は黒板に書いてある通り、体育館で始業式の後、各自自己紹介をしてもらう。

 では移動するから廊下に並んで。」


 皆ゾロゾロと教室の前後にある出入口から廊下に出始めた。 

 俺は出遅れて席から立てないでいると、目の前をさっき土手で見かけた美少女が通り過ぎた。

 先程見かけた時とは雰囲気が全然違って、周囲を威圧し声を掛けないでといった負のオーラが出ている。

 彼女は真新しい上履きの様で、履き慣れていないせいか知らないが、何も無い所で躓き倒れそうになった。


 おっと…俺はチカラを発動させて彼女を支える。

 身体が傾いたまま一瞬止まった事を不思議に思ったのか頭にハテナが浮かんでいる様子だったが、彼女は自分の足で再び歩き出す。

 廊下に出来た列に並びながらも彼女は頭をかしげていた。


 

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