29。

 …………あ、

 …………えっと、

 …………。

 めっちゃ気まずいね!

 えへへ、でも頑張るよ。

 って、一昨年――あー、約束してたもんね。

 誕生日おめでとう、兄さん。

 私ももう二十九歳。

 いい大人が、いつまでもめそめそしてちゃダメだよね。

 ……うん、そうだよね。

 兄さんなら多分、良いよって言ってくれるんじゃ無いかなって思う。

 なんて。

 勝手に兄を自分好みに変えてってごめんね。

 そう、私もう二十九なんだ。さらば二十代、だよね。

 どう? 何回か前に大人の女とか言ってた頃の私より成長したかな?

 可愛くは、無くなっちゃったよね。

 泣いてばっかりだったし。ほら、見て、涙の跡が……なんて冗談。

 可愛くなくなっても、ほら、どう? 綺麗になったでしょ?

 素敵な女性に、なったでしょ?

 兄さんってさ、ぶっちゃけ年上好きでしょ?

 知ってるよ?

 お隣のお姉さんが初恋の相手だもんねー!

 だから、ほら、私どう?

 ……素敵?

 うん知ってた。

 でも残念、もう先約が居るのです。

 そう、兄さん。

 私結婚するんだ。

 悔しい? それとも祝ってくれる?

 兄さんは多分ちょっと悔しがるよね。大好きだもんね、私のこと。なんて、冗談。

 でも、私は兄さんのこと大好き。

 これまでも、これからも。

 とか言っとくと感動するでしょ。

 うん、私、今ね、自分で言って感動してる。

 ……え?

 ウエディングドレスが見たい?

 残念ながらそれはあの人ものだから、ごめんね!

 また、写真だけでも見せてあげるよ。

 これが今年の誕生日プレゼント。どう?

 元気出た? 私は、兄さんに話せて勇気が出たよ。

 いつも、ありがと。

 ……あ、そうそう。

 お隣のお姉さんね、結婚して子供も生まれたよ、男の子なんだけどとっても可愛いいんだ――


  動画が切れ、次が始まる。

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