苦い!

 A博士には息子が一人いた。


 今年で5つになるとても可愛らしい子だ。


 A博士は息子を大切に育てていた。


 そんな彼にはある悩みがあった。


 息子がゴーヤチャンプルーを食べてくれないのだ。


 ピーマンの肉詰め等もだ。


 やはり子供には苦いものは美味しく感じられないらしい。


 どうにかして食べてもらいたい博士は研究に研究を重ねてある調味料を開発した。


 これをを振りかければどんな料理の苦味もたちまち消え去るはずだ。


 早速ゴーヤチャンプルーとピーマンの肉詰めに軽く振りかけてみる。


 するとどうだろう。


 まったく苦味を感じない。


 実験は成功だと博士は相好を崩す。


 それにしてもついうっかり料理を作り過ぎてしまった。


 もったいないので食べ切らなければ。


 今日はこの研究所に誰もいないので、一人で腹の中に詰め込むしかない。


 完食しきると、思わずゲップが出そうになる。


 中年にこの量は食べ過ぎなようだ。


 数時間後、上機嫌で歩く博士は突如舌に違和感を感じた。


 そしてその直後、口内に大量の苦味が広がった。


 どうやら出来上がったのは苦味を後から一気に感じさせるものだったらしい。


 さらには苦味を増幅させる効果まである。


 あまりのことに博士は地面をのたうち回り、そしてバタリと気絶してしまった。

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