第9話
シャミこと今野詩織は神音の顧問弁護士の紹介でシェルターに匿われていた。
詩織が生まれたのは長野県の田舎町。家は庭師で決して裕福ではなかったが幸せに暮らしていた。小さい頃から父譲りで土が大好きで薔薇や草花を育てていたがやがて生花店に勤めるようになり、東京の銀行の長野支店に出向中の今野と知り合い見染められ結婚した。今野ははじめは優しかったが、以前恋人に裏切られたのがトラウマになっていて極端に嫉妬深く、父が亡くなった後は母や友人と会うことも禁じた。一人娘の沙織が生まれてからは、沙織は自分の子ではないのではないかと疑い暴力をふるうようになっていた。詩織は沙織に危害が及ばないようにとオーストラリアに住む知人のもとに預けている。沙織からのメールが最大の喜びだったが、居場所を特定されないようにメールも控えていた。
今野もまた苦しんでいた。学生次第から優秀だった今野だが就職すると間もなく後ろ盾だった父の会社が倒産した。副頭取の娘との縁談も父の会社倒産と同時に破談になり長野支店に左遷された。そこで知り合ったのが詩織だった。花屋の店員だった詩織と結婚したが、常に裏切られるのではと言う強迫観念があった。そんなある日、同僚の及川に沙織は自分との子供だと聞かされる。及川はずっと前から詩織に思っていて、結ばれた日に出来たのがが沙織だと言う。それから、今野の心は崩れた。
病院から戻った神音は暫くの休暇を経て復帰コンサートに向けて集中していた。次のコンサートのタイトルは「シャミナード」森の精、牧神、水の精などのピアノ曲をすべてフルートにアレンジして演奏する初めての試みだった。
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