第8話
翌日、神音の知り合いの弁護士に身柄を頼んでシャミは家を出た。フキが付き添いタクシーで小諸駅まで向かった。街頭のカメラに映ることを避けたかったからだ。
シャミがいなくなったあと、ひとりで神音が練習をしているところにチャイムがなった。外に今野が一人で立っていた。
「どうされましたか」
「妻はどこにいるのですか」
「どういうことですか」
「ともかく入れて下さい」
中に入ると今野は叫ぶように言った。
「知り合いの記者が、このうちで妻を見かけたと言っているんですよ。何で、あなたが隠すんですか?あなたと妻はどういう関係なんですか」
「おっしゃっている意味が解らないのですが。それに先日部屋をご覧になったはずですが」
「これだけ、広い家だ。どこかに隠れていたってわからないでしょう!それとも、ほかの場所に隠したって言うんですか。教えてくださいよ」
今野は部屋中を探しながら激しくドンドンと机を叩いた。
フキが帰って来ると部屋に倒れている神音を発見した。
「神音様!!神音様!!」
大声を出して、必死で自分を落ち着かせ、救急車を呼んだ。
「私が目を離した時にこんなことになって・・」
フキは泣きながら叫んだ。
病院に着くと手当をした医師がフキを呼んだ。
「大丈夫です。過呼吸になってパニック障害がでましたが、今は薬で落ち着いています」
麗歌も東京から駆けつけてきた。睡眠薬で眠っている神音を見て落ち着いた様子で言った。
「お父様たちが亡くなった時、私はまだ小さかったからそんなに記憶が無いんだけど、お兄ちゃまはショックだったのね。それ以来何か突発的なことがあると、パニック障害になって。心の落ち着く場所が良いと思って、楡屋敷でずっと住んでいるんだけど。あの人のせいでこんなことになって・・・」
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