第18話 私と魔法の力
「マルベレットさん。最近、攻撃魔法の練習もしているのね」
「あっ、は、はい!」
魔法学の授業中に担当の先生に声を掛けられ思わず上擦ってしまう。
「マルベレットさんは攻撃魔法を使うのを避けているように見えたけれど貴女はそちらの才があるから勿体無いと思っていたのよ」
「お、恐れ入ります……」
「何か心変わりするようなことでもあったのかしら?」
うふふと先生は穏やか笑う。
「その、いろいろありまして……。もしもの時に、ちゃんと誰かを守れるようなりたいなと思ったので……」
「それは、素晴らしいことね! 誰かを守りたい、救いたいという前向きなエネルギーは魔法の大好物だからマルベレットさんの能力がますます開花しちゃうかも。先生とっても楽しみだわ」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、頑張ってね~!」
先生は、にこにこと豊満なお胸を揺らしながら別の生徒のところへと行ってしまった。
何をどうしたら、あれほど魅力的な体型になれるのだろうかと考えたが虚しくなるので止めよう。
――魔法学の授業は基本的に自由だ。
魔法と言っても人によって使えない魔法もあるので、魔法学の授業はそれぞれが決められた範囲内て好きに行い、分からなかったり行き詰まったりした時は先生に教えてもらうという方式だ。
ちなみにキャロルの得意としている治癒魔法を私は使えない。そもそも治癒魔法はとても貴重で使える人は少ないのだが。
キャロまほの中でもキャロルは特殊で特別だったのだ。さすが
一人、隅っこで黙々と火炎魔法を放っていると後ろからパチパチと拍手が聞こえてくる。
「凄いね、マルベレットさん」
「は? え? さ、サイラス様!?」
驚いて声を上げてしまう。
そっか、今日は2年生と合同授業の日なんだ。自由行動なので気付いていなかった。
いや、そんなことよりも魔法学の授業は専用のローブを羽織るのだがサイラス様のローブ姿が最高すぎて思わず拝みそうになってしまう。
「綺麗な炎だね。
「あ、あ、ありがとうございます!」
「良ければ、他の魔法も見せて貰っていいかな?」
「は、はい!」
私は大きく頷くと軽く深呼吸をして意識を集中する。
「
氷魔法、雷魔法、水魔法、風魔法、土魔法……使える攻撃魔法を思い付くまま放ってゆく。
「…………本当に凄いね」
「えへへ……調子に乗ってたくさん使っちゃいました。お恥ずかしい」
「あれだけ使って、エネルギー切れもしていないんだね」
サイラス様が顎に手をやり感心したように呟く。
「サイラス様は空間魔法が得意なんですよね」
「そうだね、比較的扱いやすいかな。でも、空間の中に本ばかり入れちゃってるから、みんなには困った顔をされちゃうんだけどね」
苦笑するサイラス様も素敵だなあと眺めていると後ろから誰かに抱き
「なーに話してんの?」
「ひゃわ!?」
突然のことに驚きすぎて間抜けな声を上げてしまった。
「やあ、コレルちゃん。元気?」
「る、ルーク様!?」
「…………ルーク。突然、女性に抱きつくのは感心しないな」
「えーコレルちゃんダメ~?」
「……どちらかと言うとダメですね」
「そっか。わかった」
ルーク様がぱっと手を放す。
その様子を見てサイラス様が不思議そうな顔をする。
「……素直だね?」
「コレルちゃんは大事な友達だからね。嫌われたくないし?」
「あ、ありがとうございます」
ルーク様に友達と言ってもらえて思わず頬が緩んでしまう。
誰かにお友達だと言ってもらえるのは本当に嬉しい。いつだって心がほわほわしてしまう。
「随分と仲が良いんだね?」
「ときどき中庭で一緒にお茶会をしているんです」
「ねー!」
「ルークに女の子の友達って珍しいね。それだけ気が合うってことなのかな?」
そんな会話をしていると休憩時間になりルーク様は先生に用があると行ってしまわれた。
魔法学の授業はエネルギーをそれなりに使うこともあり授業後の休憩時間が通常よりも長い。
さて、どうしようかと考えているとサイラス様が声を掛けてくださる。
「マルベレットさん良かったら一緒に休憩しない? 何か飲み物を買って来るよ」
「へ!? い、いえ! それでしたら私が買って来ます!」
「ふふっ、大丈夫だよ。すぐに戻ってくるから向こうのベンチで待ってて貰ってもいいかな?」
「は、はい! それは、もちろん!」
「じゃあ、行ってくるね」
……お、推しとお茶なんて良いのだろうか?
こんな最高のご褒美を貰えるようなこと何かしたかな? ああ、ちょっと緊張してきた。
私は、静かにベンチに座ってサイラス様を待つことにした。
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