第2話 恋人

 現在、俺はファストフード店の中にいた。隣には真帆がいる。


 パクパクとポテトを食べていると、真帆が話しかけてきた。


「ねぇ和馬。アンタはあの噂知ってる?」

「俺たちが恋人って噂か?」

「うん、それそれ」


 俺と真帆は仲良しだ。そんな俺たちを見て、クラスメイト達が『アイツら、絶対付き合ってるだろ』と噂するようになった。


 違う、俺と真帆は付き合っていない。ただの幼馴染だ。


 なんでクラスメイトたちは俺たちが付き合っている、と思っているんだろう?


 まぁ確かに、俺は真帆のこと好きだけどさ……。

 真帆は俺のことどう思ってんだろう? 


「みんな、俺たちが付き合ってると思ってるよな」

「だね……。あはは、なんか恥ずかしいな」


 今日もクラスメイトに『お前ら、いつもイチャイチャしてるよな』とからかわれた。

 

 あれは恥ずかしかったなぁ。


 ふと横を見ると真帆と目が合った。

 肩まで伸びた金色の髪、大きな瞳、小さな鼻、薄い唇。

 意識すると、真帆って本当に可愛いよな……。

 

「な、なぁ……真帆」

「ん? どしたの?」

「その……俺たち付き合わないか?」

「え……?」


 俺の言葉に真帆は目を丸くする。


「か、和馬、今なんて言った?」

「だからその……俺たち付き合わないか?」

「それ本気で言ってる? 冗談じゃないよね?」

「冗談なわけねぇだろ。俺は本気だ」

「……」


 やっぱり、俺は真帆のことが好きだ。


 この子とずっと一緒にいたい。

 俺の手でこの子を幸せにしたい。だから告白したんだ。


「やっぱり俺と付き合うのは嫌か……?」

「そ、そんなわけないでしょっ! 全然嫌じゃないっ……」

「え? マジで? 付き合ってくれるの?」

「うん……いいよ。特別に付き合ってあげる……」

「おぉぉぉ! ありがとうな! 真帆っ!」


 俺はそう言ってギュッと真帆を抱きしめる。

 真帆も俺を抱き返してくれた。


「ね、ねぇ」

「ん? なんだよ?」

「和馬はアタシのこと好きなんだよね? アタシのことが好きだから告白してきたんだよね?」

「あぁ、そうだよっ……。俺はお前のことが大好きだ。愛してる」

「っ〜〜〜」


 俺が『大好き』と言った瞬間、真帆の顔は沸騰するほど真っ赤になる。

 耳も真っ赤だ。


「あ、アタシも和馬のこと好きだよ……愛してる」

「……」


 真帆の言葉に俺は黙り込む。

 え? マジで? 真帆も俺のこと好きだったの? 


 だが謎だ、真帆はいつ俺のこと好きになってくれたんだろう? 本人に訊いてみるか。

 

「いつ俺のこと好きになったんだ?」

「それはその……アンタが助けてくれたから」

「助けた?」


 真帆の言葉に俺は小首をかしげる。

 視線で『どういう意味だ?』と問うと、真帆は口を開いた。


「三ヶ月前だったかな? 大学生にナンパされてるアタシを和馬が助けてくれたでしょ?」

「あぁ~、そんなことあったなぁ」


 三か月前、大学生にナンパされている真帆を助けたことがある。

 あの出来事をキッカケに真帆は俺のこと好きになってくれたのか。


「あのときは助けてくれてありがとうね。凄く嬉しかったよっ。ちゅっ」


 真帆が頬にお礼のキスをしてくる。彼女はすぐに唇を離して「ふふ」と笑う。

 可愛い……。


「ねぇねぇ和馬、もうアタシたち恋人なんだよね?」

「ああ、俺たちはもう恋人だ。絶対に浮気すんなよ?」

。アンタこそ絶対に浮気したらダメだよ? わかってる?」

「ああ、絶対しないよ」


 俺はそう言って真帆の唇に軽くキスする。すぐに唇を離すと真帆は不満げな表情になる。


「一回じゃ足りないよっ……もっとチューして」

「え? もう一回キスして欲しいの?」

「うん……ダメかな?」

「ははっ、ダメじゃないよ。俺も真帆とキスしたかったし」


 再び俺たちは唇を重ねる。


「んっんっ……ちゅっ、ちゅっ……和馬っ、好き♡」

「俺も大好きだよ、真帆」


俺たちは満足するまでキスした。

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