転生劇 シリウス

常考 無意味

第1話

どこだここは、回りを見渡しても自分のアパートの部屋じゃない

動けない手を伸ばしても自分のではない小さな手が見える

言葉を発しても「ヘアヘア」しかでない

怖くて叫びだしても赤子のそれだった


泣き声を聞いてか白人の女性がのぞき込んできた

誰だ!そう思っていると俺を抱き抱えた、

知らないデカイ女に持ち上げられた恐怖で

大声をだして逃げようとした


しかし、まともな身動きをとることもできず

怯えることしかできずにいると

「・・ーーー・・・ーーー」

女性は俺を見て笑顔で何か言っている

しかし何を言っているのか全くわからない

日本語ではないわからない言葉だった。


英語も話せないが聞いた感じで違うとわかる、ドイツ語、フランス語、ロシア語、スペイン語etc...

白人が話す言葉だけでも多くの種類があるからどの言語なのか判断はつかない

「・・ーーーー・・・ー」またこの女性は笑顔で話しかけてくる。

恐怖で吐きそうだが意を決して、ここは何処ですかと言ったが口から出たのは

「ヘアヘア、アーアーウゥ」だった。


それから数日が過ぎた。


俺は生まれ変わってしまったようだ……

意味がわからずまた泣けてくる、体が完全に赤ん坊だ。

この数日間は恐怖でパニック状態になり、叫んでも自分で思っている声はでずに

赤子の泣き声が出る、泣いて疲れて眠ってしまうことを繰り返していた

泣くと母親らしき女性が乳を吸わせようと近づけてくる、確かに腹は減ってはいたが

食欲を満たすために吸い付く気にはなれずにいると

吸わせようと強引に押し当ててくる... 腹がふくれるとすぐに眠気がきて眠ってしまう


泣いて眠って乳を吸って眠ってと

はたから見ると普通の赤ん坊に見えているのだろうか


自分が生まれ変わったのならば前世の自分はなぜ死んだんだ?

思いだそうとするが直前の記憶は

何かいいことがあって大切な約束があるぐらいのふわっとした記憶しかない

人物に関する記憶がとくに曖昧で家族、友人、同僚など全く思い出せないでいた


それから1ヶ月ほどの時間がすぎた、赤ん坊は暇なので仮説を立ててみた

人は亡くなると魂が一度浄化され、また違う生命へと生まれ変わるのではないのか

たしか、前世の記憶を持つ子供は数多く発見されている

だがそのほぼすべてが、幼少期のテレビや、親の会話など外部の情報が

関係しているとのことで話のつじつまが合わないことが多い

だがその中でも稀に知りえないはずの人物や場所、事柄の記憶をもっている

子供もいる


これはそういった事の1つの事象なのかもしれない

魂の浄化が完全ではなく、自我を持ったまま、生まれ変わったのだろう


仮説を考えてみたが足りなかったようだ


半年が過ぎわからなかった言葉も徐々にではあるがわかってきたが

テレビやラジオ、パソコンなどの情報機器はないようで回りの会話でしか

情報を得ることができずにいた。


この家は父母兄姉と自分の5人家族で

自分の名前はシリウスとなったようだ

この家には家電製品どころか時計すらないようで

服も昔話の挿し絵のような村人といった格好だし


ヤバいぞ、この夫婦、ヤバい寄りのヤバい奴だ

ごく一部にいる超自然派の考えの夫婦だ こえぇー!

これは早いところ兄弟で協力して両親を説得しなくてはなるまい

それが無理なときは進学や就職で、早めに親元から飛び出すしかないな!



そう夕日に誓っていると、僕は母からスリングで、抱っこされた、家族で出掛けるようだ、

初めての外出で外をみて唖然とした

そこにはアニメやイラスト、復元想像図、そんなものでみたことのある中世の村が広がっていた、


家から10分ほど歩いたところに教会らしき建物があり

みんなでそのなかに入っていった

中にはやはり家の家族と同じような村人といった格好の人たちがいた

みな口々に新年おめでとうと言って挨拶をしていた。

この村は春が年の始まりにしているようだ


ここはもしや、そういった思想の人達の村なのか?

文明を捨て地球に優しい生活をする、奇特な人が集まって集団生活をするような...


そう考えていると村長と呼ばれた人物が前に出て

「グリムス王国、オーレス領、ナルヴィ村、新年の儀を始める」と言い

なにやら宗教儀式のようなことをしているのが見える


グリムス王国、オーレス領、ナルヴィ村

聞いたことのない国名に地名だ。


儀式が終わってみんなが外に出ていった

村の広場に集まって宴を始めるようだ、広場の中心には

キャンプファイアが準備されていて「アルバート頼んだぞ」と周りから聞こえてくる

太鼓がドン・ドンと鳴り出した、父が前に立ちキャンプファイアに手をかざしファイアフレイムと唱えた

するとかざした手から火炎放射されているではないか、驚きで声もでないとはこの事か!?


スリングから顔をだして驚き見ていると母が「こんなに大きな炎を出せるのは珍しいんだからね」と

旦那自慢を始めた。


半年もたったのだ、泣いても、叫んでも変わらない現状を受け入れて、ここでの生活を考えていこうと決めた

チクリと心にトゲが刺さった気がして

見上げた満天の星空には今日も月が無い

薄々気づいていたが、やはりここは地球ではなく異世界のようだ

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