その1、始まり

実家で同居している甥っ子が、突然亡くなった。

死因は、最近巷を騒がせている病気だった。

朝は元気に家を出ていったんだが、

夕方熱を出して帰ってきたらしい。

そして、そのまま夜に帰らぬ人になってしまった。


通夜の晩、親戚たちが次々と集まってくる。

見覚えのある顔もいれば、そうでない顔もいる。

家の中は、黒い服の女ばかりだった。

こういう場で、男は本当に肩身が狭い。

俺は、親戚の誰かの婿や、

普段、尻に敷かれる旦那たちと一緒に、

部屋の隅のテーブルで、ちびちびとビールを飲んでいた。


甥っ子を溺愛していた婆ちゃんは、

先月から病院に入院していて、葬式には出れなかった。

そのことを、本当に悔やんでいたらしい。


ここで、この家に住んでいる家族構成を話しておこうと思う。


俺、25歳無職、彼女なし。

この実家は、わりと気に入っている。

姉夫婦、共稼ぎでこの家を継いでいる。

その娘と息子。

どちらも小学生低学年くらい、息子は亡くなった。

あとは母ちゃんと婆ちゃんだ。

婆ちゃんは体調が悪く、現在行きつけの病院に入院している。


家族仲は悪くはないと思うが、

姉が結婚してから正直、居心地の悪さを感じてはいた。

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