第九話 指チュパ!

 殆どアリバイが成立しているのにも関わらず、何故かメリュジーナがルナさんを疑い出した。そのせいで反撃とばかりにルナさんも疑い始め、彼女たちは少々歪み合っている。


 多分、メリュジーナは先日の件で、ルナさんに対しての見方が変わってしまったのかもしれないな。


「2人とも安心しろ。俺が互いに白であることを証明するから」


「そんな方法があるの?」


「教えてご主人様マスター


 彼女たちが訊ねてくると、俺はグチャグチャとなった買い物袋の中から砂糖を取り出す。そして袋を開けて手を突っ込んだ。


 これで準備は完了だ。本当はぶっかけるのが一番なんだけど、今回はほぼ白確しているから、こんなもので良いだろう。


 右手の上に小さな砂糖の山を作ると、彼女たちの前に突き出す。


「ルナさん、メリュジーナ。この砂糖を嘗めてくれ。嘗めて体に変化が起きなければ、間違いなくマネットライムではない」


 手の上にある砂糖を嘗めるように言うと、彼女たちは互いに顔を見合わせる。そして無言で頷いた。


「分かった。まずはわたしからしよう」


 メリュジーナは小さく舌を出し、そっと砂糖を嘗め取る。


 数秒待ってみるも、彼女は苦しむ素振りを見せない。これでメリュジーナは、マネットライムではないと言うことが証明された訳だ。まぁ、最初から分かっていたことではあるがな。


「よし、次はルナさんの番だ」


 ルナさんに砂糖が乗っている右手を近付ける。すると彼女は口を開けて顔を近付けると、砂糖ではないく、俺の指を咥えた。


 ルナさんの舌が指を嘗め回し、ねっとりとした感覚を覚える。


『チュッ……ジュルル、ジュルル…チュッ……ジュルル』


 チュパ音が耳に入り、心臓の鼓動は早鐘を打ち始める。


 ちょっ! ルナさん! 何をしているの!


「あわわわわ!」


 突然の行動に戸惑っているのか、メリュジーナも顔を赤くしながらあたふたとしていた。


『チュッ……ジュルル、ジュルル…チュッ……ジュルル……ンッ……チュッ……ジュルル……ジュポ…』


「これで良い?」


 指に付いた砂糖を嘗め取ったことを証明するために、ルナさんは口を開けて舌に付いた砂糖を見せる。


 上唇と下唇が透明な唾液で繋がっており、それが余計にエロさを感じてしまう。


「あ、ああ。でも、なんでそんなことをするんだよ。普通に山になっている部分を嘗め取れば良かっただろう」


 なぜかルナさんの顔を直視することができずに、視線を逸らしながらあんな行動に出た理由を訊ねる。


「こっちの方が、テオ君が嬉しいかなって思って」


「いや、まぁ。驚きはしたけど、嫌ではなかった」


 未だに心臓の鼓動が早鐘を打ってしまい、ドキドキが止まらない。


 彼女の中ではもう、俺を利用しないで父親を説得する方向に考え直してくれたはず。もう、俺を惚れさせるようなことはしなくて良いはずなのに、どうしてこんなことをしたんだ?


 困惑していると、ルナさんはメリュジーナを見た。その瞬間、何故かメリュジーナはムッとした顔をすると、いきなり俺の指を口に咥え込む。


「メ、メリュジーナ! 何をする?」


「|わらひらって、まふたーをひもちよくすることがてきるもん《わたしだって、マスターを気持ちよくすることができるもん》」


 指を咥えながら話しているからか、しっかりと発音することができていない。しかし、なんとなく彼女が何を言いたいのかが分かった。


 それにしても、いったい何の対抗意識なんだ? 俺には分からなかったけど、ルナさんがアイコンタクトでメリュジーナを煽ったのか?


 メリュジーナが咥えた指を舌で嘗める。しかし慣れていないようで、彼女の動きはぎこちなかった。


 しかしその不慣れな舌使いがなんとも言えない快感を呼び、ゾクっとする。


「メ、メリュジーナ。もう好い加減にしてくれないか」


「|らめらよ。らって、まふたーのこれ、あまふておいひんらもん《ダメだよ。だって、マスターのこれ、甘くて美味しいだもん》」


 それは砂糖が付いているからだろう! 本当に好い加減にしてくれ!


 本当なら無理矢理にでも引き剥がしたいところだが、彼女は人間ではなくフェアリードラゴン。下手に引き離そうとすれば、指を噛みちぎられてしまうかもしれない。


 痛いでは済まされず、決して笑い事ではない。


「なぁ……頼むよ。もう……やめて……くれないか?」


「|まぶたーがゆるひをこいはじめた。わらしのかひだね。るな《マスターが許しを乞い始めた。わたしの勝ちだね。ルナ》」


 指を咥えたまま、メリュジーナは両手で勝利のVサインを作る。


「私のテクはあんなものじゃないもん! まだテオ君のアレが反応していないからメリュジーナの勝ちではないわよ!」


 突然ルナさんが声を上げると、俺の左手を掴み、指を嘗め始める。


 ルナさん! そっちには砂糖は付いていないって! どうしてそんなに意味のないことをするの!


 彼女たちの間で何が行われているのかが分からず、結局俺のアレが反応するまで続くことになるだろうと判断した俺は、思考を巡らせる。


 こうなたったら、この地獄から解放されるために早く終わらせるしかないな。


 頭の中で妄想を膨らませ、海綿体に赤血球を送り出す。


 すると、俺の股間を見て彼女たちは咥えていた指を離してくれた。


 良かった。これで解放される。


「私のテクで、テオ君が反応したわ」


「違うよ! ご主人様マスターはわたしの奉仕で反応したのだから」


 いや、違うからね。これは俺の妄想で強引にこの状態にさせただけだけだから。


「テオ君!」


ご主人様マスター!」


「「どっちで反応したの!」」


「どうしてこうなってしまうんだ!」


 最初は彼女たちがマネットライムではないことを証明するためにしたことが、どうしてこうなってしまう。


 どこで行動を間違えてしまったんだ!


 彼女たちのオーラのような圧力を受けながら、どうやってこの場を沈めようかと悩んだ。


 本当のことを言っても信じてくれそうにないし、どうすれば良いんだよ。


 誰か助けて!


 俺は心の中で救助を求むことしかできなかった。

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