全裸追放から始まる成り上がり生活!〜育ててくれた貴族パーティーから追放されたので、前世の記憶を使ってイージーモードの生活を送ります〜

仁徳

第一章

第一話 貴族パーティーから追放され、全裸で旅をする

「テオ! お前をこの俺が率いるパーティーから追放する! いや、勘当だ! 親子の縁を切る! この屋敷から出て行け!」


 俺は突如、育ての親であるイルムガルト・フェルトホフから、パーティーの追放と勘当を言い渡された。


「待ってくれ! それはいったいどう言う冗談だよ。バッドジョークにしてもたちが悪いって」


「この俺が冗談を言っているように見えるか?」


 赤い瞳でイルムガルドが睨み付けてくる。


 あの目は本気だ。彼は嘘なんか付いていない。


「どうしていきなり追放になるんだ! 納得がいかないじゃないか! 今日、成人して鑑定士からユニークスキルの鑑定をしてもらったばかりなのに!」


「そう、それだ! お前が良く分からないスキルを授かったことで、俺の努力が水の泡となってしまったじゃないか!」


 怒りの形相で言葉を捲し立て、睨み付けるイルムガルドに言葉を失う。


 俺が授かったユニークスキルが原因で、彼の努力が水疱に帰しただって? どう言うことだ?


「俺がお前を成人まで育ててやったのは、昔有名な預言者が言った予言を信じていたからだ! 『橋の下にいる赤子を育てあげろ。その子は優秀な人物に育ち、この世界を救う救世主となるであろう』その言葉を信じてお前を拾い、ここまで育ててやったんだ!」


 感情を抑えきれない様子で、イルムガルドは声音を強めながら、育てた理由を語る。


 予言を信じたから、成人するまで育ててくれた。だけど、授かったユニークスキルが彼を落胆させるものだったから、嘆いて俺を追放する。


 あまりの身勝手な行動に、唖然としてしまう。


 俺のユニークスキル、それは【前世の記憶】と言うものだった。これがどのような効果をもたらし、どのように発動させるものなのか、調べてもらった鑑定士は分からないと言って教えてはくれなかった。


「俺はお前を拾った後も、貴族の養子として育て上げた。それはもう、周囲からは反対されたさ。だけど将来、お前は俺に莫大な利益をもたらしてくれると信じて、反対を押し切ってまで養子にした。それなのに、お前は利益を出す所か俺の顔に泥を塗りやがった。もう、我慢の限界だ! これ以上、俺に恥をかかせる前に出て行け!」


 イルムガルドの怒りは相当なものだ。俺がこれ以上言ったところで何も変わらない。


 だけどまだ、俺のユニークスキルがゴミだと決まった訳ではない。せめて1回でも良い。チャンスが欲しい。


 イルムガルドの左側に立っている、紫色の髪をロングにしている女性に視線を送る。


 彼女はメルセデス・フェルナンデス。イルムガルドとは婚約者であり、俺にも良くしてくれた。本当の息子みたいに接してくれた彼女なら、彼に物申してくれるはず。


「何を見ているのよ。さっさと出て行きなさい! イルムガルドの機嫌をこれ以上悪くしないでちょうだい。ワタクシは最初から養子にするのは反対だったのよ。彼が自分の意見を押し通すから、仕方なく接してあげたと言うのに。何期待しているような目で見てくるのよ。気持ち悪いわ」


 彼女の変貌に鳥肌が立ってしまった。いや、寧ろこっちが本性だったんだ。これまでのことは全て演技で、偽りの彼女を今まで見せられていた。


「ハハハ! そう、ストレートに言ってやるなよ。あんまり言うと、テオがショックを受けるではないか」


 笑い声を上げながら、イルムガルドの右側に立っている男が俺を見る。


 彼はイルムガルドとは学園の同期であり、俺に対しては親戚の叔父さんのように接してくれたシモン・マウーだ。茶髪のアイビーカットで、貴族の服よりも軍服の方が似合っていそうな程、体格の良い男だ。


「イルムガルドの決めたことは絶対。それがチームの掟だ。諦めて新しい人生を送った方が良い。これ以上、彼の機嫌を損ねることはオススメしないぞ」


 シモンの口調は優しい。だけど彼の言葉の裏には、これ以上イルムガルドを怒らせたくないから、早く出て行けと言っているように思えた。


 俺を庇ってくれる人間はこの屋敷にはいない。働いている使用人はいるが、彼らは所詮雇われの身。みんな見て見ぬ振りをしている。


 この屋敷にもチームにも、俺の居場所はない。自分の身の安全を考えると、ここは素直に出て行った方が良い。


「分かった。この屋敷から出て行く」


 屋敷を出て行くことを彼らに言うと、踵を返して肩を落とした。


「待てよ」


 玄関に向けて一歩足を踏み出した瞬間、イルムガルドが呼び止めた。


 もしかして考え直してくれたのか。


「お前、何どさくさに紛れてそのままの格好で出て行こうとしやがる。お前が着ている服は貴族のものだ。貴族ではなくなったお前が着て良いものではない。誰か、テオの身包みを剥げ!」


 イルムガルドが指示を出すと、使用人の男が集まり、俺の衣服を脱がそうとする。


 さすがにそれはシャレにならない。


 当然抵抗する。


「お願いです。暴れないでください」


「これ以上私たちを困らせないでください」


「旦那様のお仕置きが怖いんです」


 使用人たちは口々に謝るも、流石に下着姿で外に放り込まれる訳にはいかない。彼らには悪いが、抵抗を続ける。


「チッ、何をやっている! おい! シモン!」


「分かっている」


 イルムガルドが声を上げると、シモンが指を鳴らしながら近付いてくる。


「たく、手間をかけさせるな!」


 彼は一旦腕を引くと、思いっきり俺の顔面を殴り付けた。右の頬にジーンとした痛みが走り、頭の中がボーッとする。


「一発では心配だから、もう一発ぶち込んでおくか。ほらよっと!」


 今度は腹に強烈な一撃を受け、一瞬息が止まり、呼吸が苦しくなる。


「ほらよ、これでいいだろう。さっさとそいつの身包みを剥な」


 暴力を振るわれ、抵抗する力を失った俺は、使用人たちに次々と脱がされる。


「旦那様、終わりました」


「はぁ? 何を言っている? こいつが身に付けている下着も貴族用の高級なものだろう? それも脱がせ!」


「オーホホホ! 成人した大人が裸にされる姿は、見ていてウケますわね。ですが、穢らわしいものを見たくはないので、ワタクシは部屋に帰らせていただきますわね」


 高笑いをしながら、メルセデスが離れて行く。


 主の命令には逆らえない。使用人たちは下着まで脱がすとこの場から離れて行く。


「シモン、テオを屋敷の外に摘み出せ」


「分かった」


 シモンが俺の腕を引っ張ると玄関へと引き摺っていく。そして外に出ると勢い良く投げ飛ばした。


「お前には悪いと思っている。だが、イルムガルドには逆らえない。恨むのであれば己の運命を恨め」


 朦朧とする意識の中、シモンの声が僅かに聞こえた。その後、急に瞼が重くなり、眠るように瞼を閉じる。

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