正義は我にあり! 漆黒の執行者は人間達に裁きを下す

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 俺たちはカラスだ!


 日の光を拒絶する漆黒の黒衣を見にまとっているのが特徴!


「かあかあ!」

「かあー!」


「うわっ、カラスがあんなにたくさん電線に止まってる」

「本当だ。どっかいってくれないかな」


 下にいる人間たちがなんか言っているな。


 耳をすませてみると、「カラス嫌い」だの「どっかいけ」だの聞き取れた。


 まだ何もしてないのにも関わらず!







 俺達は普通に生きているだけなのに、やっかいもの扱い。


 不吉の象徴として描かれたり、ゴミをあさる迷惑な存在としてやっかまれたり。


 人間は本当に勝手な奴だ。


 こっちの事も知りもせず。


 イメージとかで決めつける!


 けしからん!


 まったくもってけしからん!


 おっと、ヒートアップしてしまった。


 理性的であらねばな。


 ほれみたことか、だからカラスは、なんて言われてしまう。


 しかし、落ち着いてみたものの、人間はやっぱりむかつく!


 ほんと身勝手!


 人間って身勝手!


 そして無責任!


 よそから持ってきた動物を害獣扱いして、駆除とかしちゃってるんだろ?


 勝手に増やした動物を飼育しきれなかったとかいって、手放しちゃったりもしちゃってるんだろ。


 自分たちの都合で動物にちょっかいかけて、被害者ヅラしてるんだぜ。


 あーっ、むかむかしてきた!


「かあかあ!」


「いてててて! つっつくなよ!」

「うわっカラスが襲ってきた! 逃げろ!」


 我慢できない。

 仏の顔も三度なんとやら!


 こいつはあれだ。


 こらしめてやらなきゃな。






 カラス集会


 議題 人間ちょっと調子乗ってない? こらしめちゃわない?


「かあかあ! 裁きの時が来た!」

「かあかあ、まさか本当にやるつもりか!?」

「かあかあ、おう! 威勢のいいカラスもいたもんだなあ!」


 俺達は今日から、漆黒の掃除屋として活動する事にした。


 やっぱりみんな、腹に据えかねてるんだなあ。








「いってきまーす」

「いってらっしゃいあなた」

「いってらっさーいぱぱぁ」


 俺は愛する妻に挨拶をして、愛する娘に抱き上げて頬ずりしてから、大きな袋を持って玄関から出る。


 燃えるごみの入った袋だ。


 これを三軒隣の田中さんちの前にあるゴミ置き場においてから出勤しないと。


 育児で大変な妻をサポートする夫。


『すてき、あなたかっこいいわ』

『ぱぱぁ、かっこいー」


 きっとこれで十年は夫婦仲が安泰に違いない。


「かあかあ」

「あほーあほー」

「かあああ」


 カラスが今日も多いな。

 最近なぜか多いんだよな。


 すみかを変えたりしたのか?

 どこかの餌場かなんかなくなったのか。


 ゴミをつつかれたら嫌だな。


 ゴミ出しをする俺は、空でぎゃあぎゃあ騒ぐカラスを見て舌打ちをした。


 そう思いながら空を見つめていると、カラスがこちらに急降下。


「かあかあ!」

「かあああ!」

「あほーあほー!」


 いてててて。


 なんだこいつ、俺は何もしてないだろ。


 俺は慌てて、その場から逃げだした。







「今日は休みの日だからのんびりしたいとこだけどな。やらなくちゃいけないことがあるんだよな」


 ため息をついて、俺は仕事場を見回す。


 そこはペットショップだ。


 犬や猫、鳥や魚などが専用のケースに入っている。

 

 この仕事はシビアだ。


 珍しい動物や可愛い動物はすぐに売れるが、そうでない動物はいつまでも売れ残る。


「いつまでもこの店においてけねぇんだよ。悪いが恨むなら、運と客を恨みな」


 だから、売れなかった動物は、飼育費削減のため、森とか川とか、人目のつかないところに捨てている。


 というわけで。


「おひっこしでちゅよ~。恨むんなら自分の運命を恨みな」


 いくつかのケースを車に積んで出発。


 ひとけのない辺鄙な森の中へ向かった。


 ケースを開けて、そこで動物達を放す。

 

 そいつは、大人になった鳥だ。


 見た目がぶさいくだから、売れ残った。


「ほら、さっさと行けよ」

 

 戸惑っている鳥にそう声をかけると。


 空から何かが降って来た。


「かあ、かあ!」

「かあ、かあああああ!」

「あほー、あほー!」


 そいつはカラスだ。くちばしで俺の頭を攻撃してきた。


「いてっ、いててて! やめろっ、離れろ!」


 襲撃はやまない。


 俺は慌てて、車へ戻った。







「かあかあ、見たか人間どもめ!」

「かあかあ、さすが兄貴、カッコイイ! 痺れる!」

「ひゅーひゅー」


 成果はじょうじょう。


 人間たちは、ビビっていたな!


 学生とかいう時代にわれらをいじめていたサラリーマンも、同志をずさんに扱うペットショップとかいうのの店員も、あわをくっていた。


 この調子で続けることにしよう!


 人間たちが我々に恐怖し、行動を改めるようになるまで!


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