第6話 ショートノベル 1

ショートノベル。(ショート動画的なやつ)



 それは、自筆のアンケートみたいなものを書いて動画で出そうという企画の為に、ペンを渡された直後の事だった。

「待って!?……なぎさ君…左利きなの!?」

 左手でペンを持ってる私に、突然深刻そうな顔で話しかけてくるなつみさん。

「え?ああ、うん。基本的にはね。右手も使えるけど、元々は左利きだよ」

 そう告げると、なつみさんは一度上を向いて、大きく息を吸い込み――――

「これ動画にするわ」

 と呟いた。

「……これって、どれ?このアンケートの事?それは最初からそのつもりで―――」

「違うわよ!アタシの彼氏が天才だった!って言う動画を作るのよ?」

「……天才?」

 何を言っておられるのでしょうか……?

「左利きは天才!それは昔からの定説!!つまりはアタシの彼氏は天才!そういう動画作るわ!!」

「いやいやいやいや、待って。さすがに、左利きだから天才でしたー、なんて動画は無理よ?どうやって時間埋めるのよ」

 まあ確かに世間ではそんな風潮あるけど、実際には別に天才でも無いので、そんな動画作られても困ってしまう。

 私の言葉に少し考え込むなつみさん。

 左利きになぜかテンションが上がったようだけど、冷静に考えたらそれだけで一本の動画にするのはさすがに難しいと気づいたのだろう。

「……じゃあ、ショート動画にするわ」

「ショート動画?」

「そう、ショート動画なら短くてもいいじゃない?アタシの彼氏が天才だった!っていうタイトルを最初に字幕出して、ゆっくりカメラが移動してきて、文字書いてるなぎさ君を映すの。そして、良い感じのBGMと同時に、グッと左手をアップにして「左利き!!」っていうオチをつければ……なんかいける気がする!」

「……本当に?そんなんで良いの?」

「いいのよ、ショート動画はとにかく勢い勝負みたいなとこあるから、そんなんでもOKよ!むしろそのくらいのやつが良いまであるわ」

 なんとなく納得しないまま一応撮影した。


 そして公開された動画は、オチの部分にショート動画でよく見るなんか勢いのあるBGMがつけられて、ちょっとだけバズったらしい……。


 世の中わからないものですね……。

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