第16話 中継地点
地球周回軌道と月周回軌道のちょうど中間に現れた謎の魔法陣、地上から肉眼でそれを確認することはできず、俺の魔力感知でも距離が遠すぎて完全に特定することはできなかった。魔力感知システム、通称MMSのデータによると、半径はざっと数十kmにもおよぶ巨大なもので、どのような効果を持つ魔法陣なのかは不明、魔力パターンについても、今までに見たことのないものであった。
「とりあえず話は終わりだ。何か質問はあるか?」
「一つだけ。」
「なんだ?」
「これは単独での任務ですか?」
「他国の干渉が考えられるかという問いならばyesだ。だがどの国家も、最高戦力については自国で温存すると思うが、偵察兵が送り混まれる可能性ならば十分に考えられる。無いとは思うが、喧嘩はするなよ。」
「わかりました。」
宇宙空間で何かあった場合、基本的にはS級魔法師を保有している国のみが対処を許されており、S級魔法師を保有する国同士は早い者勝ちというルールとなっている。このようなルールが設けられている理由は、S級魔法師を保有しない国が宇宙空間で地球外生命体と接触した場合、どうしても対処能力が劣るからだ。
そのため日本魔法協会及び日本政府は、S級魔法師を複数人保有する国の一つとして、率先した対処を考えていた。彼らの頭の中には、かつての戦争に関する記憶と知識がしっかりとこびり付いており、自身の中でしっかりと優先順位を確立させていた。
「質問は以上か?もう無いのならば今すぐ飛んでくれ、間に合いませんでしたで被害が起きれば、国民に顔向けができん。」
「了解。」
「あぁそれと、これは通信器だ。何かあればこちらから指示を出す。」
「では、行ってまいります。」
通信器を受け取り敬礼をした俺は、そのまま会議室を飛び出した。入ってきた時の道順は記憶しているので、その逆を辿り外へと出た。
「第一段階<魔天召喚ールキフェル>」
第一段階によって体内の魔力を再び活性化させると、魔剣を頭の上に構えた。そして、素早く魔法式を構築すると、俺は宇宙を目指して垂直発射した。
*
「なんというか、やっとS級魔法師らしい仕事が舞い込んできたな。」
【なんで喜んでいるのよ。】
「今までが散々だったからついな。」
【・・・・・・まぁ、否定はしないわ。】
地球から月まではだいたい38万kmなので、ここから件の魔法陣までの直線距離は19万kmとなる。これは、たとえ音速で飛んだとしても148時間かかる距離であり、これだけの距離が離れていると地上からこの魔法陣を発見するのは難しいためMMSに頼るしかないが、障害物の少ない宇宙空間ならば、俺の魔力感知でもその存在を捉えることができた。
音速を軽く超えた超スピードでそれに接近すると、少しづつその形容が見えてきた。半径数十kmというのは、地上であればかなり大きな部類に入るが、無限に広がる宇宙と比較すると、ものすごく小さく感じた。とはいえ、込められている魔力量は本物で、一体どこに供給源があるか疑いたくなるレベルの巨大なものであった。どこか異質な雰囲気を放っており、直接見てもその効果まではわからなかっった。
「何だ、これは・・・・・・」
魔法陣に関する知識なんて全く無い俺は、早速ルキフェルに頼ることにした。こういう案件は、ルキフェルに任せた方が早い。
【これは・・・・・・何かの魔法の中継地点ね。遠い距離で魔法を発動する時によく使う魔法で、中継地点となって本命の魔法の精度を高める魔法よ。】
「中継地点・・・・・・」
確かに、何もない宇宙空間で魔法を発動しても、正直なところ何もできない。だが、宇宙空間に中継地点を作って本命の魔法を遠距離からぶつけるというのはありだ。これが中継地点であるとすれば、本命の魔法はどこに打ち込まれる可能性が高いか、そんなの考えなくてもわかる。
「もしかして、本命は地球?!」
【もしかしなくてもそうだと思うわ。急ぎなさい、早く接近して中継地点を斬った方がいいわよ。】
「わかった。」
どうやら思ったよりも不味い状況かもしれないと判断した俺はスピードを上げ、今できる自身の最高速度まで加速した。
魔法陣を破壊する時に方法はいくつか存在するが、俺がよく採用するのは最もシンプルな手段だ。それは、膨大な魔力をぶつけて魔法陣のバランスを狂わせ、崩壊させるというやる方だ。俺の魔法特性にマッチしており、シンプルでわかりやすい。
「ルキフェル、どこが一番脆い?」
【中心よ。そのまま私で貫きなさい。】
「おっけ。」
勢いそのままに、俺は魔法陣を切り裂いた。ルキフェルの計算は正しく、魔法陣は俺に穴を開けられると、そのまま音もなく崩壊を始めた。そして、行き場を失った膨大な魔力は周囲に飛び散った。
だが、俺はルキフェルから、悪いニュースを伝えられた。
【一歩遅かったみたいだわ、健斗。魔法陣はすでに完成していたわ。】
「まじか。」
【早く引き返しなさい。】
それは、最悪の始まりに過ぎなかった。
__________________________________________
どうでもいい話
ミスって一度全消ししました。
ほんまにやめてほしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます