第11話 side輪廻

 ずっと、この容姿が嫌いであった。

 いくら牛乳を飲んでも全く伸びない身長、私は学校の定期身体測定の日がやって来るたびにそれから逃げたいと思っていた。でもその代わりに、私には並外れた魔法の才能があった。小学校入学の際には日本人なら誰でも受ける魔法適正テストにて、同級生たちを大きく上回る驚異的な数値を叩き出した。すぐさま日本魔法協会に呼び出され、再検査が行われた。そこでまたしても驚異的な数値を叩き出した私は、日本魔法協会の息がかかった小中一貫校に転校となり、家族揃って東京へと引っ越して来た。その後は、小学校卒業の際に日本魔法協会と正式に契約を締結して一番下のE級魔法師となり、中学校卒業の際にD級、育成学校の懲罰委員会委員長に就任した際にC級に昇格した。

 懲罰委員会の委員長に就任してから1年以上が経ち、仕事にも慣れ始めた頃、初めて見る顔の男がいきなり懲罰委員室へと入り込んで来た。そしてその男は、名前も名乗らずに私を呼んだ。


「六道って奴はいるか?」


「へぇ?!わ、私、六道ですけど・・・・・・」


 懲罰委員会に不満を持つ生徒が、殴り込みに来たのではないかと心配したがそんな事は無かった。最初は警戒していたか、少し話してみるとすぐに、彼には敵意が無い事がわかった。どうやら彼は、最近生徒達の間で噂になっている転校生なようで、何かと生徒としての常識が抜けているところがあったので、色々と丁寧に教えてあげた。

 結構話し込んでしまったところで、そういえば彼は一体どうしてこんなところに来たのだろうと、考えていると、彼は思い出したかのようにここに来た本題を話した。


「あぁ、そうだ、忘れてた。日本魔法協会会長、有栖川武尊からの司令書があんたに届いている。」


「へぇ?!有栖川さんから?!」


 有栖川武尊、彼は私が所属する日本魔法協会の会長であり、日本で5本の指に入るほどの影響力を持つ人物だ。ちなみに、私が才能を見出された魔法適正検査は彼が実施を始めたものであり、私は彼がいなければ今この場いなかっただろう。


「ほらよ、今読め。」


「う、うん。」


 転校生君はそう言うと、私に対して一通の封筒を差し出した。封筒には、でかでかと日本魔法協会のマークが印字されていた。簡単な魔法を使い封を開けて中から1枚の紙を取り出すと、そこには有栖川さんからの指示が書かれていた。

 今回有栖川さんからお願いされた事は2つ、目の前に立つ男、本条健斗を懲罰委員会に加える事と、折を見て彼の実力を探る事であった。彼には、育成学校の治安維持という名目で懲罰委員会に入って貰うが、その裏で彼の実力を測って欲しいという内容であった。

 私は、有栖川さんが用意した彼を騙すための原稿を読みながら、命令の内容を頭の中に叩き込んだ。


「貴方には今日から懲罰委員会の一員として働いていただきます。」


「えっ」


「有栖川さんにはそのように伝えておきますね。」


「ちょっ、待っ」


「すみません、もう有栖川さんにそう連絡してしまいました。というわけで、よろしくお願いします。」


 途中、彼から何やら不満の声が聞こえた気がしなくも無いが、最初の作戦である彼を懲罰委員会に抱え込む事には成功した。きっと、有栖川さんもこの結果に満足しているだろう。



 *



 彼の懲罰委員会就任2日目、私は彼の有効的な使い方を発見していた。


「はい、こちら懲罰委員会の本条健斗です。」


『ほ、本条健斗っ?!ま、まさか・・・・・・』


「多分お前の想像する本条健斗で合っていると思うけど、俺に何か用か?」


『お、俺ファンですっ!ルーシア・ハーンブルクとの決闘も、豪山太郎との決闘も最高でしたっ!これからも頑張って下さい!』


「もしかしてだけどお前、そんな事のためにここに通信を入れたのか?」


『す、すみませんっ!もう辞めますっ!』


 私は彼を懲罰委員会の通信担当に任命した。今や彼は、育成学校の中で5本の指に入るほどの有名人であり、影響力のある人物となっていた。そんな彼が懲罰委員会の通話対応で出て来るのだ、彼のおかげで懲罰委員会の間で問題になっていた迷惑通話やクレームをしてくる者達は一瞬で尻尾巻いて逃げていった。

 しかし彼の存在は、私の想像以上に育成学校内外に影響を与えていた。その日のお昼休みが終わる頃、突然異常事態を知らすサイレンが鳴り響いた。育成学校内の異常事態を知らすランプは赤く点灯しており、私たちは侵入者の対処をする事になった。


「敵は5人、それも、よく訓練されている手練れだ。六道、少数精鋭で行こう。」


「う、うんわかった!今回は私と健斗君の2人だけで行くから、みんなは避難誘導を手伝って。」


「「「了解っ!」」」


 本条君からの情報を頼りに、私たちはそれぞれ動き出した。


 _________________________

 どうでもいい話

 長くなり過ぎたので、分かることにしました。もう一話輪廻視点が続きます

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る