第9話 初仕事は緩く

『無敵の転校生、懲罰委員会に電撃加入っ!謎の裏取り引きがあったか?!』

『戦後史上最年少A級魔法師爆誕!魔法協会緊急会見からの緊急発表!』

『新A級魔法師爆誕!校内ランキングへの影響は?』

「『最近の注目の的である最強転校生が、今度は大偉業を成し遂げた。昨夜未明、日本魔法協会は緊急で会見を行い、日本に新たな英雄が誕生した事を発表した。育成学校東京校の2年生本条健斗は、戦後史上最年少でA級魔法師に認定された。各メディアから疑問の声が上がったが、あの有栖川氏が直々にA級認定をしたため信憑性は高いとされている。今後は、海外の出方に注目したい。』だってさ、いや〜良かったね〜これで健斗も一躍有名人だ!」


「別に嬉しくねぇよ。むしろ余計なお世話だと思っている。」


「そうなの?まぁ僕も、表舞台に立つのはあんまり好きじゃないけどね〜」


 俺のA級昇格のニュースは既にネット上に出回っており、顔写真などもばっちりと公開されていた。俺まだ未成年なんだが、とも思ったが、A級魔法師には世界中の魔法師の見本となる事が求められており、例え未成年だとしても大々的に公表するそうだ。また、街で見かけた際にサインや握手を求められる場合があり、その場合は紳士に対応するように有栖川さんから言われた。俺のサインなんか集めてどうするのかは謎だが、これも給料のうちと言われれば仕方ない。


「食べ終わったし、そろそろ俺は行くわ。」


「あ〜そう言えば僕の誘いを断って懲罰委員会に入ったんだっけ?」


「う、悪かったな。」


「いいよ、もう気にしていないから。それより早く行ったきな。」


「あ、あぁ、悪いな。」


 学校生活3日目、つまり地球に戻って来てから4日目、俺は相変わらず講義という名のお経を聞く毎日を送っていた。

 唯一の救いは、テストの類が1学期の期末である7月まで無い事だろうか。もしあったとしたら、俺はすぐさま留年確定であっただろう。魔法協会に頼めば何とかしてくれるかもしれないが、そんな事で有栖川さんに貸しを作るような事はあまりしたくない。何に使われるかわからないからだ。どんな事を命令されるか、考えただけでも恐ろしい。

 そんな中俺は、昼休みだというのに全く休めずに懲罰委員会の下っ端として働かされていた。しかもよりによって、校内の見回りとかではなく事務作業を・・・・・・


「何で、俺が、事務、作業、なんだよ!」


「東京校は他の学生に比べて治安が良いんですよ。外部からの侵入者も滅多に来ませんし、基本暇なんですよ〜」


「そうなのか・・・・・・」


 それ、あんたらが気付いていないだけじゃね?俺一昨日とんでもなく面倒な、バカ親に絡まれたばっかなんだが、と突っ込もうと思ったがギリギリのところで辞めた。ルーシアの父親がゲルマンの雷神である事は有名なはずだから、広まったら面倒だと判断したからだ。


「それに、取り締まりは基本的に風紀委員会の仕事なんです。私たちは取り締まった人たちの処分を決めたり、風紀委員会が手に負えないと判断した案件を処理したりする感じです。」


「そうなのか。」


「はい、ですので、事件が起きるまではここで待機です。」


「な、なるほど。」


「ま、まぁ、そんな規模の事件なんて3ヶ月に1、2回しか起こらないんですけどね。」


 六道は、小さな声でそう呟いた。どうやら、懲罰委員会の主な仕事は事務作業のようだ。

 そして、俺が最初に命令された仕事は・・・・・・


『おい。』


「はい、こちら懲罰委員会の本条です。」


『本条っ!本条健斗さんですか?』


「そうだが?何か用か?」


『い、いえ、何でもないです。イタズラ通話してすみませんでしたっ!』


「あ、切れた。」


 六道から俺は、通話対応係を任されていた。もちろん、通話対応なんかした事が無かったが、マニュアル通りにやれば簡単だと言われ、押し付けられた。

 そして実際やってみた感じは見ての通り、俺が本条と名乗った直後、通話相手は面白いように通話を切断した。


「何だったんだよ・・・・・・」


「いや〜助かるよ、健斗君。」


「これで良かったのか?」


「うん、懲罰委員会なんかに通話をかけてくる奴なんて、全体の99%は迷惑通話やクレームだから。」


 どうやら懲罰委員会はこれまで、迷惑通話やクレームに悩まされていたらしい。それなりに強いメンバーが揃っている懲罰委員会ではあるが、他の3つの組織に比べて表舞台に立つ機会が少なく、舐められているらしい。

 ちなみに、俺の目の前に立つこの女は、こんな見た目をしているにも関わらず校内ランキングは俺よりも2つ上の2位の座に位置している。流石は、育成学校入学前から魔法協会に実力を認められてD級魔法師となり、入学と同時にC級に昇格した魔法師といったところだ。


「じゃあとりあえず、ここのランプが点灯するまでは通話担当を続けて下さい。」


「あぁ、ちなみに、これってランプが点灯しているに含まれるのか?」


「・・・・・・含まれますね。」


 見ると、先ほどまでは消えていたはずのランプが、赤く輝いていた。一体どのような意味があるのかは知らないが、緊急事態である事は分かった。


「全員戦闘用意っ!ランプの色はレッド、どうやら、侵入者のようです。」


「「「了解」」」


「健斗君、あなたも一応来て下さい。その実力、しっかりと見せてもらいます。」


「あぁ。」


 直後、サイレンの音が学校全体へ響き渡った。



 *



「新たなA級魔法師、どんな奴か会うのが楽しみだな。」


「今回は威力偵察ですからね。間違っても、全力を出さないようにお願いします。」


「あぁ、善処はするが、約束はできんな。」


「全く、貴方って人は・・・・・・」


「だが、興味があるのは上も同じだ。大胆に行こう。」


「了解。」


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 どうでもいい話

 こちら作者、佐々木サイです。

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