異世界から帰還したら地球がピンチだったので、とりあえず地球を救います。

佐々木サイ@100万PV×2達成

育成学校入学編

第1話 異世界へ

 生徒達の注目を集めながら、俺は校内を堂々と歩く。

 外から見ればちゃんとしているように見えるかもしれないが、内心は緊張でバクバクだ。


「おいっ、アレを見ろ。」

「ほ、ほんものなのか?!」

「偽物なわけないだろ、あの佇まい、あのオーラ、間違いなく本物だぜ。」

「ま、まじかよ、初めてみた・・・・・・」


 数年前の自分は、今の自分を少しでも想像できただろうか。

 いや、できない。

 できるはずがない。

 なんせ自分自身も、今の自分が本当に自分なのか怪しいからだ。


「あれが、世界最強か・・・・・・」

「かっこいい〜」

「アレが『無色の堕天使フォールンエンジェル』、本条健斗ほんじょうけんとか・・・・・・」

「え?無職?」


 ・・・・・・無色の堕天使って何?!

 いや、俺の二つ名って事は知っているけどさ、流石にダサすぎじゃ無い?!

 割とマジでやめてほしいんだけど。

 というか、辞めてくださいっ!

 それと、俺の事を無職扱いすな、ちゃんと学生だから。無職ではあるけど学生だから。


「流石S級、いつ見ても格が違うな。」

「目が合っただけで相手を殺せるらしいぜ?」

「こえ〜」


 いや、流石に無理だから。

 魔眼とか持ってないし、そんなの持っていたら死人で溢れるわ。

 そんなに怖がらなくても大丈夫だから・・・・・・


 昔と比べて、俺の生活はそれこそ天と地がひっくり返るぐらい劇的に変化した。

 何でこのような生活をするはめになったのか、それは俺が中学生になる直前に遡る。



 *



 西暦2063年ー東京


 俺には、血の繋がった人がいない。

 交通事故や病気で亡くなっちゃったとかじゃなくて、生まて間もない頃に政府が管理する孤児院に引き取られたそうだ。だから、顔も名前も覚えていないし、そもそも会ってすらいないかもしれない。

 だけど俺は、1人ぼっちでは無かった。

 生まれた時から施設で過ごしていた俺であったが、3歳時に本条ほんじょう葉子ようこさんという30代の女性に拾われ、養子となる事になった。


 葉子さんには夫はおらず、母子家庭ではあったが葉子さんは『ツクヨミ社』という日本を代表するような企業に勤めていたため、裕福とまでは言わないが不自由の無い生活を送っていた。仕事の都合で平日はあまり会えない時間が多かったが、俺は幸せであった。


 13歳となり、俺はついに中学生になった。残念ながら俺には魔法の才能はあまり無かったが、将来葉子さんへの恩返しがしたいと思い勉強を頑張った結果、俺は都内の有名私立中学校に合格する事ができた。


 そして、ついに俺の生活を180度変えた運命の日がやって来た。

 今思えば、これは決して偶然では無かったのかもしれない。

 夏休みが始まるまであと数日にまで迫った夏のある日、俺は親同士の繋がりもあり小学校時代から仲良くなった双子の友人と共に、『私立月詠ツクヨミ中学校』から下校していた。


「あと少しで夏休みか〜健斗は何か予定とかあるの?」


「い、いや、無いかな・・・・・・」


 30日もある夏休みだが、あいにく本当に何の予定も無かった。強いて言うならば、この双子の兄妹と遊ぶぐらいだろうか。せっかくの夏休みではあるが、どうせならいつもお世話になっているお義母さんのために使おうと考えていた。


「じゃあ、僕は向こうだから。」


「うん、じゃあね〜暇な日があったら連絡してね〜」

「健斗君さようなら〜」


「うん、じゃ〜ね〜明日人あすと衣夜いよ〜」


 2人と別れた俺は、近所にあるコンビニへと向かう。今日はお義母さんがいつもより早く帰って来る日だ。

 だから、何かしらのスイーツを買って帰ろうと思っていた。

 七のマークが目印のコンビニに入ると、真っ先にスイーツコーナーへと向かう。


「お、あるじゃんラッキー。」


 見ると、俺とお義母さんが好きな抹茶の大福が残っていた。普段は買えない事が多いので、今日はついているなと思いながらそれを2つ取り、レジに並ぶ。このコンビニにも自動精算機はあるが、未成年である俺はまだカードを持っていないので大人しく有人のレジに並んだ。

 1つ前の客が会計を終え、俺の番がやって来た。

 その時だった。

 商品をテーブルの上に置いた直後、入り口のガラスが、勢いよく割れた。何事かと思い振り向くと、手にそれぞれ魔法銃を持った2人組の男がいた。顔を薄気味悪い面で覆った2人は、魔法銃をこちら側に向けると、怒鳴り声をあげた。


「全員そこを動くなっ!」


「え?」


「いいかお前ら、俺が良いって言うまで、怪しい素振りはするじゃねぇぞ。」


 無人清算が主流となった今、コンビニ強盗は物凄く珍しい存在ではあるが、存在しない事はない。俺は、今目の前に広がる状況に驚きつつ、必死になりながら今自分が何をすべきかを考えた。

 とその時、コンビニ強盗のうちの1人が動いた。魔法銃の引き金に指をかけつつポケットから自身のカードを取り出した。


「このカードに、ありったけ金を詰めろ!」


「は、はいっ・・・・・・」


 アルバイトだと思われる店員は言われた通りにカードを受け取った。彼女の手は、僅かに震えていた。

 さぁ、どうする?

 当時、中学1年生であった俺はどうすればいいかわからず、慌てふためいていた。冷静に考えれば、あの場では何もしないのが正しい選択であったのかもしれない。


「やめろっ!」


 だが、俺は引き当てた。後になって考えれば、疑いのない正解を。


「な、なんだお前はっ!」


「警察に通報するぞっ!」


「なっ!」

「ガキがっ!」


 持っていたスマホで、通報をする直前の画面を相手に見せた。同時に、反対側の手で魔力障壁を展開した。

 魔法の才能は無いが、これでも有名な私立中学である『月詠中学校』の生徒だ。銃弾の1発か2発ぐらいなら耐えられるはず。

 その後の事は考えていなかった。変な正義感があったからか、ただの偽善からか、とにかく必死だった。


 男達は、手に持った銃の銃口を容赦なくこちらへと向けた。俺は、手に魔力を込めると、覚悟を決めた。無意識に、目を瞑る。


 だが、俺の魔力障壁が破られる時は、一向に来なかった。


「な、なんだこれはっ!」


「し、知らねえって、俺じゃねぇって。」


 様子がおかしい。

 俺は、恐る恐る目を開けた。


「な、何これ・・・・・・」


 数百、いや数千を超える魔法陣が俺を囲んでいた。何が何かわからない。


「な、なぁっ!やばいんじゃないか、これ・・・・・・」

「に、逃げた方が・・・・・・」


『こちら、通信司令本部です。事件ですか?事故でs・・・・・・』


 手に持ったスマホからは、声が聞こえたが俺は動く事ができなかった。いや、正確には身体が動かなかった。

 だんだんと音が聞こえなくなり、視界がぼやけ始めた。

 脳が機能を停止させたという事だ。


 そして・・・・・・


 俺は、魔法陣と共に消えた。




______________________________

どうでもいい話

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