第33話 教えて。ヘルプ先生!②
(ふふふ)
京子はサグルの一歩後ろを歩きながら、微笑んでいた。
今日は皇国ホテルのスカイラウンジで夕食を取る予定だ。
スマホで連絡してみると、予約は簡単に取れた。
時間的にはランチの時間だったが、今日も京子はお弁当を作ってきていたので、お昼はいつも通り公園でお弁当を食べた。
この後はダンジョンには潜らず、買い物をする予定だ。
皇国ホテルのディナーといえば、結構お高いものだ。
ドレスコードはないと言われたが、ちゃんとした格好で行く方がいいだろう。
お客さんは京子達だけじゃないのだ。
周りの雰囲気を崩さないように、正装とまではいかないにしても、しっかりとした服装で行った方がいい。
この後は、その衣装を買いに行く予定だ。
(つまり、デートってことかな? デートってことでいいよね?)
ランクアップ現象に巻き込まれたときは困ったことになったと思ったが、結果、生き残ることもでき、その上、幾つもの称号を手に入れられた。
結果としては大成功と言っていいだろう。
(それに、私を守ってくれるサグルさん、かっこよかったな)
サグルには教えていなかったが、見習い聖女になって体力以上にHPが下がっていた。
だから、ランクアップ現象のため、Dランクになっていた醜兎の攻撃を受ければ、京子はひとたまりもなかったかもしれない。
見習い防具職人のジョブを使って防具は作成しているが、防具の元となっているのはEランクのモンスターの素材だ。
相手がDランクのモンスターであればあまり役には立たないだろう。
(それに、こんな称号手に入れちゃったし)
京子は自分のアプリから称号欄を確認する。
幾つもの称号の中に『運命の
『運命の
運命の相手と出会うと取得できる。
対象との運命が消失するとこの称号は消える。
効果
・対象者と一緒にパーティを組んでいると全ステータスが倍増する。
・対象との間で恋愛イベントが発生しやすくなる。
他の称号が微増や上昇なのに対して、この称号は倍増だ。
実際、さっき一人でプライベートダンジョンに潜ったときは体が重く感じた。
それで確認してみるとサグルとのパーティが解消されていた。
どうやら、同じダンジョンに潜っていないとパーティは組めないらしい。
少しの喪失感を覚えながらもダンジョンの外に出ると、再びパーティが組まれたためか、すごくホッとした気持ちになった。
京子は今まで以上にサグルから離れられなくなってしまったようだ。
これはもう責任をとってもらうしかないのでは?
「……京子、ちょっとシャワー浴びていかないか?」
「えぇ!?」
唐突にサグルから声をかけられて、京子は驚いた声を出す。
ふと脇道を見れば、ラブホテルの看板が目に入る。
もしかして、誘われているのだろうか?
サグルの顔は後ろからでは窺うことができない。
だが、何かをスマホで調べているところのようだ。
「悪いな。俺、さっきの戦闘で結構汗かいたからさ。できれば、服を選ぶ前にサッパリしておきたいなと。結構いいところに行くし」
「あ。あぁ! そうですね。その方がいいかもですね」
「新宿駅の近くには温泉施設があるみたいだからさ。そこにいかないか?」
京子と違い、サグルはモンスターを倒すために動き回っていた。
相当汗をかいただろう。
新宿駅には長距離バスの乗降場所があるためか、近くに温泉施設があったりする。
おそらく、そこに行くつもりなのだろう。
少しお高いと思うが、今の京子達には値段はそれほど気にならない。
むしろ、その間、サグルと離れ離れになることの方が気になるくらいだ。
(あれ?そう言われると、私も少し汗臭いかも?)
京子は顔を赤くして、サグルから一歩距離を離す。
京子も動き回りこそしなかったが、支援魔法をかけていて、冷や汗はかなりかいた。
今まで気づかなかったが、もしかしたら、自分も汗臭いかもしれない。
「やっぱり汗臭いか?」
「!! そ、そんなことないです! サグルさんはとってもいい匂いです!」
「そ、そうか。距離を取られたから汗臭かったのかと」
「あ! いえ、私の方が汗臭かったかなと。私も結構汗をかいたので」
「いや、京子は大丈夫だと思うぞ?」
「あ」
サグルは無造作に寄ってくる。
そして、京子の匂いをすんすんとかぐ。
京子は頭から湯気が出そうになるくらい真っ赤になっていた。
サグルはたまに距離感がおかしいのだ。
「うん。多分大丈夫」
「そう、ですか。ありがとう、ございます」
チラリと見ると、サグルも顔が真っ赤になっていた。
どうやら、自分がかなり際どいことをしてしまったとやった後から気づいたらしい。
こうやって、恥ずかしがるサグルは可愛いと思う。
「……でもちょうど良かった。京子も気になってるなら、シャワー浴びに行こうぜ」
「……はい」
京子とサグルは新宿駅の方へと向かって歩き始めた。
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