第34話 竜也はGランクダンジョンを踏破する。①
「ちっ。またダメか」
竜也は出来立てのGランクダンジョンを攻略し、リザルト画面にダンジョン最速踏破者の称号がないことを確認して舌打ちをする。
このGランクダンジョンについては竜也しか知らない。
側近たちにも話してはいない。
「早く。早く取り戻さないと」
竜也は焦るようにダンジョンを後にした。
***
竜也は元々、品川周辺を根城にする半グレの一人だった。
そんな竜也がダンジョンGo!を見つけたのは偶然だった。
ダンジョンGo!を見つけた時、竜也はヘマをして、暴力団の構成員に追われていた。
警察の取り締まりは組織的な暴力団の方がきつい。
暴力団は自分たちより取り締まりの緩い竜也たち半グレを毛嫌いしており、その時も、竜也がうっかり暴力団のシマに手を出してしまったことが追われる原因だった。
廃ビルに追い詰められて絶体絶命となった時に竜也はダンジョンGo!を見つけた。
そして、竜也はダンジョンGo!に逃げ込むことに成功した。
十分ほどダンジョンGo!内に潜伏した後、現実世界に戻ったが、現実世界では一分ほどしか時間が経っていなかった。
さらに悪いことに、暴力団員たちは竜也のいる部屋のすぐ前まで来ていた。
絶体絶命かと思ったが、部屋の中に入ってきた暴力団員たちは竜也がいることに気が付かなかった。
そして、竜也はすぐにそれがダンジョンGo!のおかげだと気づいた。
それ以来、竜也はダンジョンGo!を使ったエスケープ作戦を使っていろいろと危ない仕事をこなしていった。
竜也が半グレとして頭角を現しだしたのはこの頃からだ。
次の転機は竜也の見習い盗賊のランクがⅩになった時だ。
竜也はつるむのが嫌いで、一人でダンジョンに潜り続けていた。
ダンジョンGo!をまともにプレイするつもりはなかったが、ダンジョンに入るたびに暇つぶし程度にモンスターを倒し続けていると、一年しないうちにランクはⅩに上がった。
そして、ランクがⅩになったとき、選択肢の中に『見習い匪賊』というジョブが現れた。
匪賊は攻撃力や防御力は盗賊より弱いが、隠密能力と探査能力は盗賊より高かった。
ヤクザや警察から逃げ隠れするためにダンジョンGo!を使っていた竜也にはピッタリのジョブだった。
竜也は迷わず見習い匪賊のジョブについた。
見習い匪賊のジョブについてしばらくした頃、竜也はGランクのダンジョンを見つけた。
そのダンジョンもすぐにFランクダンジョンに変わったため、竜也も気のせいだと思った。
だが、二度、三度と同じようにGランクのダンジョンを見つける事で、竜也はGランクのダンジョンの存在を確信した。
Gランクのダンジョンは発生から三十分ほどでFランクに上がってしまう。
その上、百メートルほどの距離からダンジョンに潜れるFランクダンジョンと違い、五十メートルくらいまで近づかなければダンジョンに入ることができず、高さはもっとシビアで、建物の一、二階上のダンジョンまでしか入ることができない。
ダンジョンGo!のアプリではビルの何階でダンジョンが発生したかはわからないので、探しているうちにダンジョンはGからFに上がってしまう。
竜也はどうしてもGランクダンジョンに入りたいと思った。
Fランクのダンジョンではソロではあまり稼ぐことができない。
敵が強くて、なかなか倒せないからだ。
だが、Gランクのダンジョンならもっと簡単に稼げるはずだ。
竜也はそう思っていた。
そこで、竜也が考えついたのが自分でダンジョンを作ってしまう事だった。
人間の負の感情がダンジョンを作るのであれば、ダンジョンができるくらいまで誰かを追い詰めればいい。
追い詰めたやつの近くにダンジョンができるはずなので、竜也はそいつの近くにいればGランクのダンジョンに入れるはずだ。
竜也が目をつけたのが、金貸しだった。
金貸しなら合法的に借り手を追い詰められる。
仲間を使えばもっと合理的に動くことができるはずだ。
竜也は当時、結構な資産を持っていたこともあり、闇金を始めた。
だが、そんな思惑はすぐに頓挫することになった。
闇金は竜也が思っていた以上に違法なもので、仲間たちはどんどん捕まっていった。
そこで、竜也が目をつけたのが、ダンジョンGo!だった。
仲間たちにダンジョンGo!をインストールさせ、竜也と同じエスケープ作戦をとれば、警察からだって簡単に逃げられる。
適合する人間は少なかったが、行き詰まったダンジョンGo!ユーザーなんかを脅して組織に入れることで、組織はどんどんと大きくなっていった。
こうして、竜也はダンジョンGo!ユーザーだけからなる半グレ組織を作り上げた。
そして、竜也は自分で作り上げたGランクダンジョンを踏破することに成功した。
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