第25話 ユニークジョブの制約①

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色欲の大醜兎(E)を倒しました。

経験値を獲得しました。

色欲の迷宮(E)が攻略されました。

報酬:6783円獲得しました。

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「よし、終わりっと」

「お疲れ様です」


 戦闘を終えると、京子が駆け寄ってきてタオルを渡してくれる。

 正直汗すら出ていないので、別にいらないのだが、ありがとうとお礼を言って受けとって汗を拭くふりだけをする。


 ……このタオル、なんかいい香りがするな。


 昼食の後、しばらくゆっくりして歌舞伎町に戻り、ダンジョン探索を再開した。

 三時ごろに一つ攻略し、休憩して、今三つ目のダンジョンの攻略が終わったところだ。

 なんか今日は色欲の醜兎ばっかりだったが、もしかしたら、場所によって出やすいモンスターとかが違ったりするのかもしれない。


「もう夕方だし、今日はこんなもんでいいかな」

「はい」


 一度目のダンジョン攻略で装備アイテムを手に入れてからは支援魔法の効きが一気に上がり、敵モンスターを倒すのが余裕になった。

 やっぱりダンジョン産のアイテムは効力が高いのかな?

 いや、昨日のレプリカの小太刀より、ダンジョンのドロップアイテムで作った小太刀の方が強かったから、ちゃんとアイテムとして作ったものの方が強いのかもしれないな。

 でも、装飾品を作るジョブは見当たらないんだよな。

 見習い防具職人でも革鎧とか、革の盾とかは見つかるが、指輪やイヤリング、ネックレスみたいなものは見つからない。


(装飾品、便利そうだから欲しいんだけどな)


 ヘルプによると、武器は一つ。防具は部位ごとに一つ。装飾品は五個まで装備できるらしい。

 二刀流などの特殊スキルを持っていない限り、二個目の武器などは効力を失うそうだ。

 そうなると、五個まで装備できる装飾品はかなり有用だ。

 できれば用意したいのだが、四つダンジョンをクリアしてみたが、手に入ったのは京子が身につけている一つだけ。

 揃えるのは難しそうだ。

 見習い防具職人と見習い鍛冶師を育ててみて、装飾品技師みたいなジョブが出ないか試してみた方がいいかもしれないな。

 見習いNINJAといい、ジョブランクをⅩにして出てくる派生ジョブは普通のジョブより強力みたいだからな。


「あ」

「どうかしたか?」

「今の戦闘で、見習い僧侶のジョブランクがⅩに上がったみたいです」

「それはおめでとう!」


 俺の見習いNINJAはまだランクⅡに上がったばかり、忍者に至ってはレベル五までしかきてないから、やっぱりジョブによってレベルの上がり方が違うらしいな。


「それで、新しく『僧侶』と『見習い聖女』の二つのジョブが出てきたんです」

「なるほど?」


 俺はヘルプを開いて、見習い聖女というのを検索してみる。

 案の定、見つかった。

 どうやら、ヘルプには自分じゃなくて、パーティメンバーが手に入れたジョブの情報も出てくるらしい。

 京子も俺のスマホを覗き込んでくる。


 ヘルプを読んでみると、見習い聖女はより回復と支援に特化したジョブらしい。

 成長したら部位欠損すら治療する『最高位回復エクスヒール』やどんな毒でも治してしまう『最高位快癒エクスリカバリー』なんかも使えるようになるそうだ。

 ただ、フィジカル面の成長は僧侶よりさらに悪くなる。

 最近はやっとダンジョン内で息切れしなくなってきたのに、元に戻ってしまうということか。

 いや、レベルもかなり下がるし、俺と出会った時よりももっと悪い状況かもしれない。


「僧侶にした方がいいですよね?」


 京子が困ったような顔で聞いてくる。

 これは、見習い聖女の方にしたいってことかな?


 女の子の質問は大体女の子の中で答えが決まっていて、答える側はそれを当てるのが仕事だと聞いたことがある。

 僧侶にしたいなら、何も言わずに僧侶にしてしまえばいいのだから、わざわざ聞いてきたということは、見習い聖女にしたいんじゃないかと思う。


 だが、それで俺に迷惑がかかるかもしれないから迷っているということか。


 ここで見習い聖女にすればいいというのは簡単だ。

 だが、ダンジョンに潜るにあたって、自身が強くなるというのは結構重要だ。

 かなり余裕があるので、モンスターが京子に気づく前に処理しているが、これから、Dランクダンジョンやその先に進んでいけば、一度に複数のモンスターが出てくるようになるかもしれない。

 そうなれば、少しでも強くて、自分の身を守れる方が安全だ。


 まあ、Eランクダンジョンで十分に稼げてるから、Dランクダンジョンにわざわざ行く必要もないんだが。


(でも、よく考えれば、何があっても俺が守ればいいだけか)


 そう、何があっても俺が守ればいいのだ。

 むしろ、これは俺にちゃんと守れるかと問われていたのかもしれない。


「見習い聖女でいいんじゃないか? 京子のことは俺がなんとしてでも守るからさ」

「!! はい! じゃあ、見習い聖女にします」


 京子は満面の笑みで見習い聖女を選択した。

 すると、京子の周りにキラキラと光る鱗粉のようなものが舞い散る。


 ん? この演出は初めて見たぞ?

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