見た目地雷なのに落語喋るやつ

希壱マキ

ジュゲムまぢむり

 隣の席の地雷系女子、黒瀬悠来。

 みんなからはユウラって呼ばれてる。

 かわいいグッズを鞄につけて、髪はツインテールというのだろうか。

 メイクもかわいい感じのピンク色。


 何より、めっちゃかわいい。

 すっごくかわいい。


 俺は授業の前に、思い切って話しかけてみることにした。


「あのさ」

「んー?」


 ユウラはこっちを見た。


「いや、実はユウラとずっと話してみたくってさ」

「そうなんすねー」

「俺、白瀬祐樹。ユウキって呼んでよ」

「ユーキくんね、よろしくー」

「ユウラちゃんって呼んでもいい?」

「いいよー」

「ありがとう、ユウラちゃんは普段何してるの?」

「んー、普段はねー、面白いこと考えてるよー」

「面白い事?」


 ユウラは何かニヤニヤしていた。


「名前っておもしろいよね」

「名前が?」

「あーしの名前、ユウラ。これすっごく面白い。パパとママが付けてくれたんだけどね、すっごい意味込めてくれたの」

 

 なんかはじまった。


「悠久が来るっていうんだけどね、悠久ってのは過去に始まって、永遠に続くって意味なの。だからあーしの名前って、永遠って意味なの?」


 なんか疑問形だ。


「永遠っていうとね、縁起がいいよね。寿命がながい、寿に限り無し、って書いて寿限無なの。だからあーしの名前って寿限無なわけ」

「そう?」

「寿限無って縁起の良い言葉いっぱい並んでるわけ。五劫のすり切れ。これは天女って人が水浴びするんだけど、その時岩がすり減るの。で、なくなったら一劫。それが五回。やばすぎ」

「やば」

「海砂利水魚は、もう、いっぱいあるから、限り無いわけ。やばいでしょ」

「やばいわ」


「水行末雲来末風来末。これはもう水も空もひろいよねって意味。かぎりない系単語」

「限り無い系単語?」

「食う寝るところ。これはよくわかんない」

「わかんないんだ」

「やぶらこうじぶらこうじ。これ実は木の名前なの。いけてるでしょ?」

「いけてるわ」

「パイポとか、言える?」

「覚えてないわ」


「パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナ。これね、国の王様の名前」

「まじ?」

「シューリンガン、グーリンダイが王様と王女様。ポンポコピーポンポコナが娘。みんなめっちゃ長生き」

「まじか」

「長久命の長助。これもうめっちゃ意味そのまんま」

「長い命てきな?」

「そー! ながい命てきな!」


 博識だった。あとめっちゃかわいい。


「寿限無のオチってしってる?」

「オチ? オチなんかあるの?」

「うん。あれね、ちょーうけるよ」

「そうなの?」

「名前が長いじゃん。長いと時間かかるじゃん」

「うん」

「だから名前呼んでる間に、たんこぶひっこんじゃうの。だから、ぶたれて大変だったけど、名前呼んでる間に、もう治っちゃうの。やばやばじゃない?」

「やばやばだわ」


「もしかしたらあーしの名前さ、ちゃんと付けたら寿限無寿限無五劫のすり切れユウラだったわけ」

「そうなの?」

「うん。だからあーし本当は、寿限無寿限無五劫のすり切れユウラだから、寿限無寿限無五劫のすり切れユウラちゃんって呼ぶのが正しい」

「長いよ」

「でも名前正しく呼んでほしいじゃん?」

「寿限無寿限無五劫のすり切れユウラちゃん」

「そうそう!」

「じゃあ寿限無寿限無五劫のすり切れユウラちゃんは、普段こんなこと考えてるの?」

「んー、いっつもこんな感じ」


 見た目と中身のギャップ差がたまらなくかわいい。


「寿限無寿限無五劫のすり切れユウラちゃん、課題やってきた?」

「あーしやってなーい。寿限無寿限無五劫のすり切れって書いてたら朝になってた」

「それは盛りすぎ」

「ばれた」


 ユウラちゃん、まじでかわいい。


「それでさ、こんな話してたらさ、授業終わっちゃったよね」

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