世界が何処かで変わってる ~マンデラエフェクトとパラレルワールド体験記~ 第2部

永盛愛美

第1話 マンデラエフェクト1周年記念の前に起きた珍事件

 それは、令和3年の7月上旬に起きた珍事件であった。

 女の職場は医療事務であっても白衣(ナース服)を着用している。

 女は真夏は白いハイソックスか普通のソックス、春から初夏、秋は紺のハイソックス、冬は黒かグレーのハイソックスを履いている。

 春夏秋は百均でも購入可能なワンポイント付きの綿のハイソックスを愛用しているのだった。

 同じワンポイントならば、片方がダメになっても予備として代用出来るだろう、と、複数の柄を何組か用意している。

 乾いた洗濯物を畳んで収納する際に、時々取り込みが2日分になる場合があるのでなるべく連日同柄着用は避けている。

 収納時には当たり前だが、ワンポイントを確認して組み合わせる。

 着用する際にも左右を確認している。どんなに忙しい朝でも。朝でも。朝でも……。大事なことは3度繰り返すのが昨今の流儀と聞く。

 ……左右を確認せずには履かない。確認しながら着用する。それが女の習慣であった。

 習慣で、あったのだ。習慣だ。大事なことは3度繰り返すのが以下略。

 ある朝、職場で自分の足元をふと眺めて、女は意識を失いそうになった。

 (なんで!?どうしてワンポイントが両足とも右側にあるの!?朝履いた時は両方とも外側だった!いつも確認しながら履くもの!!それよりも洗濯物を取り込んだ時に組み合わせてからタンスにしまっているもの!同じ方向には組まない!もし、そこで間違って組んだとしても履く時に気付く!だってワンポイントを見てから履くもの!!)

 そう、女がワンポイントを見た瞬間に頭を駆け巡った。僅か数秒間だ。

 女は事務員である。事務室で受付や会計をする場合には下半身など見えない。見られない。しかし、カルテを診察室へ運ぶ時、トイレに行く時、お呼びしても聞こえない患者の傍まで近付く時、どうしても全身を見られてしまう。

 (うう……恥ずかしい。小学生時代にだってこんなことなかったのに!)

 看護師には指摘される前に暴露、いや申告するとして、いつ患者に気付かれて指摘されることか、と内心ヒヤヒヤしていた。「事務員さんも歳を取ったねえ。緊張感なんか無いだろ?」などと言われるのは心外だ。

 なるべく急ぎ足で静かに傍を通リ、要らぬ神経を遣い、いささか疲労を覚えた女であった。

 その日は無事にやり過ごせた。気付かれなかったのか、はたまた彼らの優しさで見て見ぬふりをしてもらったのかは定かではない……。

 その夜、女はSNSに呟いた。

 「私今日さ~ソックスの柄が同方向にあったんだよね……疲れているな」

 すると、それを読んだA氏が2日後におかしなリプを返したのである。

 「呟きの内容が以前見たものから変化しました。文の最後は笑で締めていたのに、疲れているな、になりましたね。次元が降下していますね。貴女も私も」

 「え、私は文を変えてないですよ?」

 「だから違う女氏の呟きを見たんです」

 女は更にA氏の返信に目を疑った。

 ①ソックスのワンポイントは外側に

 ②ワンポイントが両足同方向に

 ③ワンポイントが消滅

さて、その続きは?と問われたのである。

 ④また同方向になったのか?と。

 「えっ?①から②だけですよ?③てなんですか?消えた?そんなことは起きてないですよ?何それ!」

 「③までは女氏と確認済みです。君は沢山います。マンデラがおかしな方向に現れてますね」

 女は自らが移動しているとは思えず、A氏が『女が沢山存在している』ことについては、「Aさんは本当にあちこち移動が多い人なんだな。大変そうだな。一度でいいから違う世界線の私の呟きを読んでみたいものだなあ」と、半ば他人ごとであった。


 また、こちらのA氏は他のマンデラーのフォロワーよりも、数多くの世界線違いの女を目撃していた。

 履歴書を書いて再就職を果たした女は勿論のこと。

 履歴書を書いていない女についても、月末月初のレセプト期間はほぼ残業であるとか、下手な呟きをして、A氏に『女が世界線を越えた疑惑』を持たれない様に慎重に呟かねばならない、とコソコソと呟く女がいたとのことだった。

 それらを教えて貰うと女はたちまち反論をするのだった。

 「えっ?私は殆ど残業しないよ?それに、相互フォロワーになっているんだから読まれるのは分かっているもの、私だったらAっちに直接言うよ!」

 すでに『Aっち』『女っち』と呼び合う様になった頃であろうか。

 「女っちは分岐分裂が多い。話が噛み合わないことが多々有るから、記憶の統合をして」とA氏から言われたのである。

 女には、違う世界線へ分岐した『他の女、いわゆるパラレルワールドの自分』は赤の他人と等しく、記憶の統合は出来ない体質であったので、無理な話であった。

 中にはと話すマンデラーもいたが、女には全く理解が出来なかった。

 世界線が違えども、何とも奇妙な現象が起きる私なのだろうか。あまりにも他のマンデラー達との差がありすぎて、女は原始世界線(女が命名した、マンデラエフェクトを認知する以前に存在した世界線のこと)にいた時から周囲が『そんなのは女だけだ』と言っていたので、この世界線に来てもは該当するのであろうか?と、情けなくなったのであった。


 それから後の7月下旬近くの悲しい知らせ……年下の従兄弟の急死を境に、女の中で更なる変化が起きたのであった。

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