第2話 妊娠報告
夏菜はソファから立ち上がり冬樹の隣に行く。
『違うよ。禁酒してるのは私…』
二人は照れながら見つめ合う。
『実は赤ちゃん…できたんだ』
二人の様子に何事かと思い不思議に見ていた秋だが、その言葉の意味を理解出来ていない。
『…アキちゃん?』
心配になって秋に近付く夏菜。次の瞬間…秋は夏菜を抱きしめ…
『やったな!二人とも!おめでとう!私も嬉しいよ!』
『ありがとう!…今度は上手く行くと良いんだけどね…』
『大丈夫だから心配することないって!ったく、なのに二人は喧嘩してたわけかい?』
夏菜の髪の毛がぐしゃぐしゃになる位頭を撫でる。その様子を見て苦笑いする冬樹。
『あはは…まぁ…。ごめん』
『良いって!もう気にするなって!』
笑いながら冬樹の背中もバンバン叩く。そしてテーブルの方に目をやりある事を思い付く。
『そうだ!せっかくだからピザ頼もう!お菓子じゃなくて、ちゃんとしたもので祝おうよ!』
『良いね!アキちゃんに報告出来たからお祝いしようか!』
冬樹は照れくさそうに顔をかく。
『まぁ…良いんじゃないか?』
秋と夏菜はニヒヒと笑いソファに戻る。
『じゃあフユ!注文任せたっ!』
『えっ?またかよ!?』
面倒くさそうに目を細める冬樹。すかさず秋は続ける。
『そんな事言うなって!もちろん私が奢るからさ!』
『えっ?アキちゃん…それはちょっと…』
慌てて止めようとする夏菜だが秋はテンションが上がり聞く耳を持たない。
『大丈夫だって!私これでも稼ぎは良い方だからさ!あ、ついでにお高めのワインも買ってきてくれ!フユも飲みたいものあったら買って良いからな!』
財布から二万円取り出し冬樹に渡す。
『あいよ。相変わらず人使いが荒いな。ちなみにワインって赤?白?』
『そうだな…。持ってきたのが白だから赤買ってきて!』
『了解!んじゃ赤ワインの紙パック買ってくるわ!』
イタズラっぽく笑って冗談を言う冬樹。だが秋に冗談は通じない。
『はぁ?間違っても紙パック買ってくるなよ!ちゃんとしたボトルな!』
『わ、分かってるって!…ったく、アキくんは冗談言わないし通じないよな』
逃げるように冬樹は家を出ていく。ため息をつく秋を心配するように夏菜は声をかける。
『アキちゃんごめんね。フユくん報告できて嬉しかったから、あんな事言ったんだと思うんだ』
『大丈夫、気にしてないよ?ただフユも昔から変わらないな、って思ってさ』
テーブルのスナック菓子を口に放り込む。
『分かってくれてるなら良かった。フユくん戻る前にお茶でも飲もっか!私お茶取ってくるね!』
立ち上がる夏菜。だが突然の目眩に襲われ、再びソファに座り込む。
『ナツ!?大丈夫!?』
『う、うん。ちょっと貧血が…』
笑ってはいるが心なしか顔は青白い。
『ムリするなって、私が取ってくるから休みなさい?』
『ありがとう…』
秋は冷蔵庫からお茶を取り出しコップに中身を移して夏菜に飲ませる。
『どう?少し落ち着いた?』
『うん。それよりもアキちゃん本当に大丈夫なの?』
『何が?』
秋もお茶を口に運びながら夏菜の背中をさする。
『ピザの注文。正直…フユくんに任せたの不安しかないんだけど…』
それを聞いて秋は幼い頃に食べたハチミツ掛けのお好み焼きを思い出す。
『あ…。そういえばフユって偏食家だったよな…テンション上がりすぎて忘れてた…。で、でもフユももう大人だし!』
やっぱり忘れてたかと苦笑いする夏菜。どうすればこの現状を伝えられるか一瞬考える。
『この前…納豆ご飯に練乳かけて喜んで食べてたよ?』
『…まじ?で、でもメニューからしか選べないから大丈夫でしょ!』
夏菜に負けないくらい青白い顔色になる秋。その姿に思わず笑ってしまう。
『そういうことにするね!』
それから一口お茶を飲んでから話を続ける夏菜。
『話変わるけど…マジメな話しても良い?』
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