生き残ったものの後悔
砂河豚
第1話 或る夢
広大な平原の中、激しい剣戟がそこにはあった。一人は流れるように美しい曲線を描く刀を持っており、動きと共に長く白く銀のような髪は風に靡き、二人の美しくも猛烈な攻撃を確実に防いでいる。そして残りの二人の内、背の小さく金色に輝く目をした少女は”見えた”確実な一撃を躱しながらも反撃し、致命傷を与えるように身体を駆使していた。放った一撃、それは空を切り裂き確実に白銀の女性の首元へと辿りつかんとしている。その一撃は確実に当たったと少女は確信をもっていた。
だがその剣先はただ空を切った、それは白銀の女性は魔力を左手で放ちその反動によって軸をずらしていたのだ。その少女は思わずマズッたと零しその先を”見た”確実にこちらの喉が切られ、鮮血が飛び散るさまを。テレシア、と叫びながら仄かに赤い短髪のもう一人の少女が、その隙を潰さんと白銀の女性にその短剣を投擲してくる。白銀の女性は金色の目の少女の隙を突くことよりも先に投げつけられたナイフを弾き、確実に弾き落とす。その太刀筋は白銀の女性のあまりに卓越した技量の存在証明であった。彼女たちはその強さは身をもって理解する。
「テレシア、あまり無理をしないで。お姉の復讐に逸るのはわかるけど、それじゃあ貴方が死ぬだけだから。」
「わかってる、わかってるよ。でも憎い、どうして殺したのグレシアム!」
金色の目の少女の激昂の言葉は戦場に絶叫として響き渡る。グレシアムと呼ばれた白銀の女性はただ視線を落とし、その瞳は哀しげな物となる。その哀しげな瞳にはいったい何があったのだろうか、姉を殺したという罪悪感、姉を殺したという事実に対して思うところがあるのだろうか。今の私には聞きたいことだらけであった。なんで姉ちゃんを殺したのか、ただ一つである。
グレシアムは言葉を漏らす、その言葉は形にもなっておらずただの音階でしかなかった。ふっと彼女は視線を上げ、こちらを真っすぐ見つめてくる。その視線には覚悟があった。先ほどの哀しげ目つきには一体どのような意味があったのだろうか。たが今の私にとっては――。
「私は、お姉ちゃんを、マリアを殺したことは間違いない。私が悪いんだ。」
だがその声は震えていた。その一句一句吐き出す言葉は震えていたのだ。この態度に対して沸々と怒りが湧いてくる。いつもいつもアイツは自分のせいにして勝手に背負いこむ。そんな身勝手なさまに毎回叱っていたか。
「ふざけんな!ふざけんなよ、テメエはいつもそうだ。何でも背負いこんで、何にも
喋んねえ。だからイラつくんだよ。」
私の心の内を叫ぶ、叫ぶ。グレシアムはただ申し訳なさそうに顔を背ける。
「お前はそうやって、現実から目を背けるばっかりかよ!」
金切り声にも等しいその声音で彼女を非難し続ける。なんでこんなことになったのだろうか。どうしてこうなったのだろうか、神様ってのはどこまでも意地汚い野郎だと思ってしまった。
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