新装版ーリセットボタンで異世界攻略

※第41話

あれは…間違いないっ！

｢山本っ！！｣

敵がいるとか、追いかけられてるとか叫んでる場合じゃないのも分かっていたはずなのに気付いたら叫んでいた

｢え、大倉くん？ダメっ！逃げて！！｣

俺の声に反応した山本は酷く怯えていた

何がそんなに怖い？盗賊でここまで怯えるものか？

山本と一緒に逃げていた、女子生徒がコケた

｢さくちゃんっ！！｣

さくちゃん…という事は彼女はクラスメイトの桜井さんか！！

誰かに追われてるこの状況でコケたらマズイだろ！！助けに行かな…

彼女の所まで行って、抱きかかえて移動するだけ…それだけのはずだったのに

一瞬で桜井の上半身と下半身が分かれた

上半身は重力に逆らわずボトりと地面ヘと落ちた

「おお…くら…くん？たすけ…にき…て…くれ…た…の？」

桜井は自分の状態が分かっておらず、ただ必死に俺の方へと手を伸ばしながら喋る

「なんだか…へん…なの？した…の…ほうが…さむ…くて…」

あまりに凄惨な光景に思わず目を逸らしてしまう、だがその先には桜井の下半身だったものがあった

人間の断面図をリアルで見るなんて経験、この先二度とないかもしれない

というか二度と見たくない…

食ったものが勢いよく戻ってくるが、表情を変えずに飲み込む

胃酸の味で酸っぱいし気持ち悪いけどそんな事を言える立場では無い

今の俺に出来ること…

「大丈夫…大丈夫だから」

桜井さんの手を握りながら精一杯の作り笑顔でそう言った

すると力が抜けするりと手が落ちる

桜井さんは最期に笑ってくれた気がした、それは俺が見せた願望なのかもしれないけど…

なんて、しんみりしてる暇もくれないようだ

「我が魔力よ、盾となり、我が身を守りたまえ…」

「シールド！！」

振り向くと同時にシールドを張る

シールドは簡単に破壊されるが、目的はそれじゃない

すぐ様距離をとり…

「ファイア！！」

詠唱していた裕二が魔法を放ち、見事直撃…

はしたが当たり前のようにノーダメージ

そもそもさっき攻撃してくるのが分かったのもこいつの存在感のせいだった

和泉のように気配察知がない俺でも分かる程の存在感、圧

まるで圧力そのものが肌を突き刺してくるような感覚

ヤバい…ヤバいとしか表現が出来ない

姿を見た瞬間、全身に鳥肌が立った

姿形はほとんど人間と変わらないのに全身が真っ黒

恐らく害獣なのだろう

見た目はそこまで異様なものではないのに、発する圧だけで絶対に勝てないと思わせられる

あぁ、膝が震えてきた

怖ぇよ

万に一つも勝ち目はない、ならやれる事は？

俺も裕二も戦闘態勢を取っていた

奴（便宜上、人型害獣と呼ぶ）は俺たちを見た、目（？）もあった

なのに俺たちの事などどうでもよさそうに桜井さんの上半身の所へ向かった

人型害獣は上半身を右手で拾い上げ…

やめ…やめろ…

そして、お菓子でも食べるみたいにゴリゴリと音を鳴らしながら食べた

我慢もクソもない

俺は普通に吐いた

裕二も吐いていた

山本は項垂れながら泣き喚いていた

違う！違う！違う！こんな事してる場合じゃない！！

桜井さんには悪いけどこれはチャンスなんだ！

「裕二っ！！山本を連れて和泉のとこへ！！」

「ゴヘッ！カハッ！お前っ！！そんな…」

その後に続く言葉も言いたい事も分かる

それでも…

「俺一人の方が時間稼ぎには向いてる。頼む、行ってくれ。で、なるべく早く和泉を連れてきてくれ」

こう言ったら裕二は断れない

「あぁーもう！クッソ！！お前絶対死ぬなよ！！死んだらぶん殴るからなっ！！」

「我が魔力よ、我らの力となり、その身疾風の如き様相へ、スピード」

これは…！！

スクロールで覚えた魔法か

でもある程度今の身体能力に慣れるまでは使わない様にって、和泉に止められ…ってこんな状況なら使うしかないよな

サンキュー裕二、これで生存確率が1％くらい増えたぜ

人型害獣は桜井さの下半身を食べ始めた

泣き喚く山本を裕二が肩に乗せて連れていこうとする

だが先程まで下半身を食べていたはずの人型害獣はいつの間にか食べ終え、山本を狙う

明確に山本を狙ったという確証はないが、なんとなくそう感じた

｢させねぇよ、クソが！！｣

「我が魔力よ、盾となり、我が身を守りたまえ…」

走りながら詠唱する

｢シールド！！｣

人型害獣と山本達との間に入り絶対防御の盾を展開する

人型害獣はシールドへとモロにぶつかる

勢いがあった分、反動もでかく数メートル吹き飛んだ

人型害獣が立ち上がる

さっきまでは俺の事を敵と見なさず遊んでいた様子があったが雰囲気がガラリと変わった

元々あった圧に加え、それだけで人が殺せそうな殺気

あぁ…やべぇチビりそう

リキャスト時間はあと…？

6秒

こいつ相手に6秒も持つのか？俺

「んじゃ！まぁかかってこいよクソ野郎」