新たな害獣編
第39話
「皆、話を聞いてくれ!」
これから向かうのは盗賊のアジト
目標は山本の救出
彼女を救うのは戦力的な話、ではない
ある意味ではそうなんだけど…
勿論1周目の時仲間だったってのもあるけど
俺の推測(?)が正しければこの時点で既に剛は山本の事が好き
そんな彼女が盗賊の慰み者となるだけでなく死んでしまった
なんて事になると剛がどうなってしまうのか…俺には想像出来ない
というのも本当だが、既に色々と変わってしまっているがなるべくなら1周目と大筋は変えたくないという気持ちが大きい
この先俺が知らないことが次々と起こってしまった場合後手に回らざるおえない
「……って感じだ」
全てをちゃんと伝えたわけではないが話は伝わっただろう
「で、どうする?今回俺たちは正式な依頼として受ける訳ではないし、相手は害獣じゃなくて人間だ。それにそもそも本当に1周目と同じ事が起きているという確証もない、みんなが行かなくても…」
「行く」
まだ俺が話しているタイミングで食い気味に剛が一言
たった二文字、たった一言なのに圧力を感じる
なんか剛怒ってる?
「で?捕まってる女子は二人なんだろ?もう一人は誰なんだ?」
なんだかちょっとにやけ顔で裕二が聞いてくる
「俺も最近思い出したんだけど、多分早瀬」
1周目の時は女子に興味がなかったのもあるが、あの時は二人とも疲弊していてとても見ていられる状態ではなかった
だから最近早瀬に会ってようやく、あの時の女子が早瀬だということに気付いた
「いや、それはねぇぜ」
何故か傑が否定してくる
「早瀬はこの半年間、ちょくちょく俺の見舞いに来てくれてたからな」
はー?何言ってんだこいつ…
入院中女子にお見舞いされて浮ついてやがったのか!?
……
じゃなくて、確かにかなり様子は違ったけどあの時の女子は早瀬で間違いないはずだ
なのに、早瀬はそもそも山本とチームを組んですらいなくて
さらにはまだ王都にいるって?
完全に1周目と違う
そうなってくるとそもそも山本が捕まっているかすら怪しくなってきたぞ?
「皆…」
「行こう!可能性があるなら行くべきだ」
剛…
俺がなんて言おうとしたのかを察した上で言ってくれた
剛ならそう言うよな…なら俺は俺にやれることをやるだけだ
この世界には車やバイクなどあるはずもなく移動方法と言うと徒歩か馬である
移動速度の事を考えれば馬に乗るのがいいんだろうけど、この世界には御者というものが存在しない
じゃあどうやって馬で移動するのか?と言えば日本風で言えばレンタカーに近い形だろう
だから討伐者はもちろん、一般人も馬に乗れる者は多い
だが俺たちは馬に乗ったことはおろか触ったことすらない、馬に乗ろうとして振り落とされるのが関の山…むしろ最悪の場合怪我をしてしまう可能性すらある
とは言ったが、そもそも今のステータスならば馬に乗るより走った方が早いのだ
こうして俺たちは盗賊のアジトへと向かうことにした
一周目ではちゃんと盗賊討伐依頼を受けてから行ったのだが、盗賊討伐依頼を受けるにはパーティのランクがDランク以上でなければならない
Eランクの俺たちではそもそも受けられない
ランクを上げてから受けるという方法もあるがそんな事をしている暇はないし、剛が許してくれないだろう
余談だが、傑の討伐者カードはすんなりと発行してもらえた
なんならやると言っていた試験すら免除されていたんだけど一体何なんだろうか?
「あとどんくらいだ」
移動を始めて1時間程度経った頃、祐二が疲れを見せながら聞いてくる
「あと3時間ってところかな?」
流石に全員で走って行くと時間がかかり過ぎるので速のステータスが低い2人を俺と剛が抱えて行く事にした
抱えられる2人は祐二と初島、俺が初島を剛が祐二を抱えている
能力値を上げたとはいっても二人とも魔の技能しか上げていない為、傑より低い
最初俺が初島を肩に乗せていこうとしたら初島は怒り、皆も止めてくるので渋々おんぶをすることになった
初島はお姫様だっこを希望していたが、そんな事をしたら急な戦闘の時に出遅れるし腕が疲れてしまうので却下した
でも女子をおんぶしたことなどない俺はおんぶという行為を甘く見ていた
背中に感じる柔らかさは女性特有のものだし
それに…
「??…どうかしたの?」
なんかいい匂いもする…
初島本人には口が裂けても言えないが色々とヤバかった
「いや、なんでもない」
俺はなるべく取り繕って返事をした
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます