※第35話
「和泉、助けてくれ…」
剛が助けを求めてこっちを見る
剛の元へと行こうとするが体が動かない
なんでだ!どうして身体が動かない?
動けよ!動け!俺の身体だろ!
プチッ
剛はまるで虫を殺すかのように巨大な黒い足に潰された
「和泉ー!!」
祐二が泣きながらこっちを見る
動けっ!動けよ!俺!!
頼む動いてくれよ!俺の身体!!
プチッ
祐二も同じように潰された
傑は黙ってこっちを見ている
「……和泉」
頼む…頼むから…
動いてくれよ…俺の身体…
プチッ
傑も潰された
やめてくれ!やめてくれ!やめてくれ!やめてくれ!やめてくれ!やめてくれ!
体が動かないだけじゃなくて声も出ない
初島が近付いてくる
良かったお前は無…
「貴方が死ねばよかったのに。貴方が居なくなればよかったのに。貴方には何も救えないよ?なんで生きてるの?」
そう言った後、初島の目から血が流れたと思ったら体がドロドロに溶けてしまう
「お前には救えない」「お前には無理だ」「お前が死ねよ」「お前には救えない」「お前には無理だ」「お前が死ねよ」「お前には救えない」「お前には無理だ」「お前が死ねよ」「お前には救えない」「お前には無理だ」「お前が死ねよ」
目から血を流したクラスメイト達が俺を見て笑いながら近付いてくる
やめてくれ…もう、やめてくれ…
クラスメイト達に押し潰されたと思ったら、一面真っ暗になった
「1周目で何を学んだんだ?」
巨大なサイの顔が俺の顔を覗き込んでくる
うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!
お前がっ!!お前が全ての…
「また全員死なせてお前だけ生き残るのか?」
「お前なんかが誰かを救えると思っているのか?」
「俺に勝てると本当に思っているのか?」
サイの顔がどんどん増えていく
「オエッ!カハッ!オエッ!」
あまりの悪夢に目を覚ますと同時に吐いた
「夢…なのか」
1周目のあの事件以来よく見ていた悪夢
一時期は毎日のようにこの悪夢にうなされていた…
それを紛らわす為に上級ダンジョンに籠ったりしたっけ
そういえば2周目になってから見る事はなくなっていた
俺はあの時に気持ちを忘れようとしていたのか…?
あの時の悔しさ、絶望感、無力感を…
だから昨日はあんな失態を…
一歩間違えてたら剛達は死んでいたんだぞ
話を聞いた所、剛が機転を利かせて早々にシールドを発動させていたから助かったそうだ
俺が見たときに破られたシールドは先に発動していたものだったらしく
あの時詠唱で発動したのが二つ目、どうやら俺の気が逸れていたのはほんの一瞬だったみたいだ
結果だけみれば全員無事のままレベリングも無事出来た
だがそれで喜んでいてはダメなんだ…
今回の件もちょっと考えれば分かることだった
初級ダンジョンは例外的に敵の数は変動しないのだが、中級以上のダンジョンはパーティーの人数に合わせて害獣の出現数が変わるのだ
俺はそのことを知らないわけではなかった
だって一周目の時パーティで中級ダンジョンを攻略したのだから
やはり油断していたんだろう、舐めていたんだろう
俺さえいれば皆を守れると思っていたんだろう
なんて傲慢さだ、自分で自分に呆れてしまう
でももう大丈夫だ、どうすればいいかなんて分かってる
初心に還れ、思い出せ、常に細心の注意を払え
俺なら出来る…ずっとそうして生きてきたはずだろ?
翌日、皆に説明し再度上級ダンジョンへと向かうこととなった
今度は複数出現にもきっちり対応出来る陣形で挑んだ
といっても昨日とさして変わらない
序盤でのゴリアナソルジャーの出現数は2体が上限、なら対応は簡単だ
一体を行動不能にして、もう1体は俺が倒さないように注意しながら捌くだけ
その間に行動不能にした方を三人に攻撃させる
昨日大幅にレベルが上がったとは言っても、能力値の上昇はしていないから相変わらずダメージがほとんど入らない
それでも0ダメージなんてのはこの世界の性質上ありえないから倒せるまで攻撃を続けてもらった
行動不能と言っても、手と足を全て切り落とし地面に串刺しにしているだけなので不測の事態が起きないように意識だけは傾けていた
一体倒すのにかなりの時間はかかったが合計3体倒した所でキリがよかったのでレベリングを終えた
俺がレベル26、剛が21、祐二が23、初島が21になった
魔法攻撃の方がダメージ量が多かったのか剛のレベル上昇率が少し悪いが許容範囲内だろう
パワーレベリングと言っても緊張感はあっただろうし、焦ることもないので翌日は1日休みにした
さらに次の日、ついに初級ダンジョンへと挑むこととなった
俺も一応付いてはいくが3人で攻略してもらう
レベルは上がったが能力は上がっていない
能力値だけで言えば3人でのクリアは少々厳しい
だが今の彼等は同レベル帯の討伐者と比べたら格が違う
スキルレベルを優先して上げてきた事もそうだし、スクロールで覚えた魔法もある
でも1番違いはそんな表面上のものではなく経験値
直接対峙した訳ではないが、上級ダンジョンの害獣と戦ったという経験は他の何よりも自信になっているだろう
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