第34話

アグニのニヤリと笑うような表情…


ゴリゴリと響く人体を砕く音…

どれだけ叫んでも終わらない地獄

動かしたくても動かせない体


俺は…俺はまた…


「和泉っー!!!」


剛の叫び声で正気に戻った

剛…の声??なんで?

というか今、俺は意識を失ってたのか?

この状況でか?


いや違う、なんで剛の声が聞こえるんだよ

だってシールドが間に合わずに皆殺され…

恐る恐る皆の方を見る

全員無事…でもなんでだ?

今の皆にゴリアナソルジャーの攻撃を防げるような手段はないはず


違う!違うだろ!!今は頭を切り替えろ

大事なのは今皆が生きていて、それでも危険な状態にいるって事だ!!


「……シールドっ!!」


リキャスト時間が終わり剛が再びシールドを張る

だがそれもあっけなくゴリアナソルジャーに破壊されてしまう


それでも充分時間は足りる

一瞬でゴリアナソルジャーの背後に近づき、全力の一太刀で倒す

レベルアップの音が鳴り響く


「すっげぇ…」


俺の攻撃を見て裕二が思わず呟く

だがなにもすごくない

俺はあれだけ自身満々な事を言っておきながら皆を危険に晒した

それだけなのだから…


ゴリアナソルジャーを2体倒した事で3人とも一気にレベルが上がって、パワーアップバングルが壊れた

どのみちこのままレベリングを続けるつもりはなかったので丁度良かった


一旦話し合いと相談の為、俺の部屋にやってきた


皆が席につくなり俺は土下座をした


「本当にごめん、想定外だった。謝って済むことじゃないのは分かってる、今回の件で俺についていけないと思ったら抜けてもらってもいい」


ここにいるメンバーが一人でも抜けてしまうと相当な痛手となってしまうが、仕方ない

今言った言葉は俺の噓偽りない気持ちだ


「はぁ…」


くそデカ溜息が吐かれる

まぁそうだよな、失望したよな


ベシッ!!


「痛ってぇ!!」


土下座してる俺の尻を誰かが蹴りやがった


「何すんだ…」


まぁ殴られても仕方ないし罵詈雑言を浴びせられる覚悟もしてた

でも流石に土下座してるやつの尻を蹴るやついんのか??

そう思いながら顔をあげるとそこには剛と裕二がいた


「今のは和泉が悪い」

「そうだな、流石にないわ。俺らの分も怒られろ」


そう言い残し二人は歩き出す


「ちょっ!ちょっと待って!他にも話がっ!!」


そう叫ぶが二人は手をひらひらさせながら去っていった


二人が正面にいたとなると俺の尻を蹴飛ばした人物は一人しかいない訳で…

しかもどうやらその人物はえらくお怒りらしい

後ろを向くのが怖い

というか後ろからとてつもないオーラを感じる気がする


「ねぇ和泉くん?」


後ろから怒気混ざりの低い声が聞こえる

こいつこんな声も出せんのか…


「はい…」


「いい加減こっち向いてもらってもいいかしら?」


恐る恐る後ろを向くとそこには…

般若の顔をした初島…ではなく悲しそうな表情をした彼女がいた

予想外の展開に俺はどうしたらいいか分からず下を向いてしまう


「君はそうだよね…そういう人だ。分かっていたつもりだったけど想像以上だったみたい」


悲しそうな少し呆れたような声色で零れるように呟いた


「なんで私たちが怒ってるか分かる?」


そんなの…


「俺が失敗したからだろう、失敗した理由も今なら推測出来る。中級以上の…」

「ちっっがうっ!!何も分かってない!!」


食い気味に否定された

どうやら俺は何も分かっていないらしい


「なんで全部和泉くんのせいになるの?」


「それは元々俺がみんなにお願いして…」

「そんな話をしてるんじゃない!!危険があるのも分かってた!!それを含めて了承した、それでも自分達で決めてやるって言ったんだよ?」


「それは分かって…」

「全然分かってないんだよ!!」


今目の前にいる彼女は本当に俺の知っている初島なのだろうか?

彼女がここまで感情的になっている姿を俺は一度しか知らない

……そう。一周目のあの時しか


「和泉くんにとって私たちは何?」


「何って、仲間…だろ?」


「そう…本当にそう思ってる?本当の意味で仲間だと思ってくれてる?私には、私たちにはそう思えなかったよ?」


「何でそんなことになんだよ!!」


思っても見ない方向から責められ流石に俺も声を荒げてしまう


「和泉くんにとって仲間って何?全てを管理して自分の思い通りに動かす為のもの?」


なんだそれ…そんなのまるで矢島みたいじゃねぇか

俺の事そんな風に…


「まぁ流石に違うよね、そんな人の事を私が…」


さっきまで怒っていたはずなのに急に口をもごもごさせながら頬を少し赤くする

と思ったらまたすぐに先程の真剣な表情に戻った


「ふぅ……私はさ?仲間って互いに支えあうものだと思うの。失敗したって、成功したってそれは誰かのものじゃなくて仲間みんなのもの。それにね?一方的に守られるだけの関係なんてそんなの仲間なんて呼べないよ…」


そんなの…

そんな事分かってる

そう口にしようとしたが出来なかった


だって俺はみんなの事を弱くて守ってあげないといけない存在だと思っていたんだから…

そもそも責任を同等に分け合える関係だとは思ってなかった

彼女はそんな俺の部分を見抜いていたんだろう


だから何だ?

俺にはそれをやめることは出来ない

だってそんなはみんなが死ぬことより何倍もましなんだから

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