vs矢島編
第15話
思いがけず時間に余裕が出来たから色々整理しようと思う
当然ではあるが1周目と色々違う事が起きている
その中でもまず、初級鑑定の習得短縮
全く理由が分からない、リセットボタンの影響か?もしくはスキル習得の短縮条件が存在するのか?
気にはなるけど調べようもない
そういうものだ、と納得するしかないようだ
次に、EXスキルの極めし者
これも調べようがない
最後に初島…はまぁ、いいか
取り敢えず放置で!
この10ヶ月間、俺がクラスメイト達と関わっていなかったから気付いていないだけで1周目と大きく変わった事が他にもあるかもしれない
そう考えるとマグニの襲来も絶対6年だと言い切れなくなってくる…
だからと言ってどうすることも出来ないから、取り敢えずさっさと強くならなきゃいけないな
その為にもあのアイテムの獲得が最優先
アイテムの名は「呪いの腕輪」
1周目の時、偶然魔大陸で見付けたそのアイテムの効果は
・装備したものは呪いにかかりレベルアップの速度が遅くなる
・10回レベルアップすると壊れるが、それまでは外す事が出来ない
という2つだった
その効果を聞いた俺はもしやと思った
レベル上昇を遅くするだけの呪いなんて、呪いと呼ぶにはしょぼい
しかも魔大陸には大量に捨てられていた
何故そんなものが大量にあったのか?
俺は推測した
鑑定魔法と同じように本来の効果だけが忘れられているのではないか?と
過去の文献など調べて回ったが結局それ以上の情報はなかった
そして中級鑑定魔法を覚えてたから調べてみたらビンゴだった
正式名称は「パワーアップバングル」
実際の効果は先程の2つに加え、レベルアップ時にもらえる能力値が全て2倍になるというとんでもない代物だった
レベル上昇の呪いと思われていたものはレベルアップの為の必要経験値が2倍になるというものだった
これだけの効果なら普通、気付きそうなものだけど
仮にレベルアップしたとしても、能力値がいつもより多く上がったなぁなんて体感では気付けないだろう
もし気付いたとしてもそれが腕輪の力だと思うやつなんて居ない
効果を知る術は中級鑑定魔法しかないが、そもそも鑑定魔法自体が知られていない
そうなってはゴミとして認識されてしまっても仕方ないだろう
実際俺が見付けた時も、ゴミ捨て場に山積みにされていたしな…
そんな物だから簡単に手に入ると思っていたんだが一向に見つからない
呪い腕輪が大量に見つかるのが何年も先の話なのか?それとも、そもそも魔大陸にしかないものなのか…
なるべく限界まで強くなる為には腕輪を手に入れてからレベルアップしたい
ただこのままだとずっとレベルアップ出来ず時間のロスになってしまう…どうしたもんか
仮に魔大陸にあったとして、ゴミ同然とは言え取り寄せとなると相当な金がかかる
何故ならアルカナ大陸と魔大陸をつなぐ「死の道」
ここを通って物資を運搬出来る者は討伐者を含めほとんどおらず、その依頼料がとんでもない金額となるからだ
そうなると今の無職な俺には不可能
何にせよ正攻法では探すのは難しいみたいだ
気は進まないけどあそこに行くしかないか…
――その頃クラスメイト達は…
和泉がアイテム探しに奮闘している時、寮ではちょっとした問題が起きていた
剛達から追放された矢島は、好都合と言わんばかりに従順に従う人間を集めてチームを組んだ
田中と山田という男子2人のタンクと
田中と山田は気が弱い、所謂陰キャというやつ
そんな2人は討伐者になる予定はなかったのだが矢島に逆らえずチームに入れられた
和泉達のクラスは珍しくギャル系統の女子がおらず、咲宮は魔法士という貴重な役割にも関わらず誰ともチームを組めずにいた
咲宮本人もプライドが高く、どうせ入るなら強いチームがいい。と
そんな時、現状クラスメイトの中で1番強いであろう矢島がメンバーを募集するという事で自らチームに入れてもらった
基本の戦闘スタイルは田中と山田がタンクとして相手の攻撃を防ぎ、矢島が攻撃をする
物理が効きにくい相手に対しても、取り敢えず矢島が攻撃をしてダメージ判定をとってから咲宮が攻撃する
そんな矢島中心のレベリングを続け
田中と山田がレベル18、咲宮はレベル23、矢島はレベル34とかなりのレベルになっていた
この無茶な戦い方に付いていった他の3人もクラスメイトの中ではかなりレベルが高い方になっていた
彼らはひたすらレベルをあげる事に専念し、初級ダンジョンを早々にクリアしたら中級ダンジョンへと挑んだ
だが中級ダンジョンはワンマンチームで切り抜けられる程甘くなく、チームワークの欠片もない彼らは中級ダンジョンの序盤で手こずっていた
これまで上手くいっていた方法が通じず、矢島のストレスはどんどん溜まっていった
その矛先は、あろうことか田中と山田に向けられた
「お前らがもっとしっかりサポートしねぇから今回も駄目だったんだろうが!!」
完全なる八つ当たりだが、2人に言い返すほどの度胸はない
だがその姿が更に矢島をイラつかせる
「クソがよっ!」
田中と山田を蹴り飛ばす
そうする事でしか矢島のストレスは解消出来ない所まできていた
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