第12話

翌朝、俺の部屋のドアを叩く音がした

神官達には不干渉と伝えてあるし

クラスメイトには知られていないはずだ

この場所を知ってる奴は1人しかいない…


あぁ、嫌な予感しかしない


「和泉ー!!」


祐二の声、嫌な予感が的中する

声の感じからして怒ってるな、こりゃ


まだ皆に会うつもりはなかったんだけど…

バレたなら仕方ない

昨日の自分が恨めしい


「よう、久しぶりだな」


ドアを開けたそこには祐二だけが立っていた

あれ?皆で押し掛けてくると思ったのに


「お前なにしてんだよ…」


俺の姿を見るなり胸ぐらを捕む裕二、勢いそのまま壁に激突する


「痛ってぇな!!久々に会った相手にそれか!?」


「なんだお前のその態度、俺達がどれだけ心配したと…」


「誰も頼んでねぇよ、レベルはしっかり上がったかよ?」


何にそんなに怒ってるのか分からないが今皆の元に戻るつもりはない、全て終わったら謝るからさっさとどっか行ってくれ…


「チッ!まぁ、いい今日はそんな事言いに来たんじゃねぇ」


「胸ぐら掴んどいて何だ?恋愛相談でもするか?」


「昨日、初島と会った」


「あっそ、で?」


やっぱりあいつか…


「なんでこんなやつを…」


声が小さくて聞き取れなかった


「言いたい事があるならハッキリ喋れよ」


「初島泣いてたぞ…」


「だから?」


プチンと音がしたように錯覚するほど祐二の表情が変わる


「なんでお前そんなになってんだよ!!」


思いっきり顔面を殴られる

口の中が切れて血が出る


「あ!?さっきからてめぇこそなんだよ!!あいつが泣いてたからって裕二に殴られる覚えはねぇんだよ!!」


「お前っ!!」


「良かったじゃねぇか、初島の事好きなんだろ?せいぜいフォローしといてくれや。俺の事は放とっいてな!!」


「このクソヤローがっ!!」


ゴンッ!!

また顔を殴られた

思いっきり殴りやがったこいつ…


「お前なら…って、クソっ!!」


「だからなんでお前に殴られなきゃなんねぇんだ?関係ねぇだろ!!」


「お前がわからず屋なんだろうが!!」


裕二はまた拳を振り上げる

そろそろいい加減にしろや

悪いとは思ってたから1発は甘んじて受けたが、2発目は聞いてねぇ!


振り下ろされた拳を受け止める


「1発は1発な?」


顔面殴りたい気持ちを抑えて鳩尾に正拳突きをお見舞いする

一周目で鍛え上げ、ここ最近スキルも生えただろう本物の正拳突きだ!


モロに食らった祐二は見事にリバースして気絶した


流石にこのまま喧嘩別れするのはあまりにも過ぎるので柱に紐で縛って起きるのを待つ


剣の素振りをしていたら祐二が目を覚ます


「よぉ、気分はどうだい」


「最悪だわ」


「で?結局何が言いたかった」


「転移した日から姿を消したお前の事を心配してた。だけど半年も音沙汰なしだから皆気にしないようにしてたんだ、なのに昨日初島からお前の名前が出てきて、しかも泣いてたから…」


「まぁ確かに連絡すらしなかった俺も悪い。だがなお前らも悪いだろ?俺は言ったぞ2周目だってな」


「は?あれは冗談…」


俺の目を見て本気だと悟ったのか途中で言葉を止める


「あとな後半部分はマジでわからん。初島には悪いことしたと思ってるがお前に顔面ボコスカ殴られる理由がねぇ!」


「それは…俺も頭に血が上ってて、すまん」


「まぁいいけどよ、そんなに大事なら自分で大事にしろ」


「だから…あーもういいや!」


裕二も頭が冷えたのだろう

和解出来た事だし紐を外す


「……で、さっきのって本当なのか?」


「だからそう言ってんだろ」


「じゃあ今何してるんだよ」


「下準備って感じかな?それに多分1年かかる。本当はお前らにもやって欲しかったけど信じてない奴が出来ることじゃないから」


「そっか…」


「そんな顔すんなよ!俺らの仲だろ?」


「おう…何にせよお前が無事で良かったよ」


照れながら言う祐二にこっちも照れくさくなるが男2人が照れ合ってる姿なんて需要はない


「で、そろそろダンジョンに入り始めた頃か?お前ら今レベルいくつだ」


「ダンジョンの事も知ってんのか!!んー大体10前後かな」


「ダンジョンに行くなとは言わねぇけど教会で能力強化すんのは待ってくれ」


「なんでだよ?それも大事なことなのか?」


「まだなんとも言えんが、多分」


本音を言うならレベルアップ自体やめて欲しいところだがそこまで縛るのは厳しいだろう


「出来ればダンジョンにいくより訓練とか模擬戦を増やして欲しい」


「よく分からんけど分かった!何とかしてやるよ」


こういう時の祐二は頼りになる

頼りついでにもう1つ頼もう


「こんなアイテムがあれば買ってきてほしいんだ、頼めるか?」


「たまに街にはいくし探しては見るけど…こんなの何に使うんだ?」


「それは秘密」


その後は少しだけ他愛ない話をして祐二は帰って行った

俺の部屋については初島から聞いた祐二しか知らないと言っていたのでこのまま内緒にしてもらった

同じく初島にも秘密にする様言ってもらう


俺の抱えてる問題がなにか解決した訳では無いけど、やっぱり仲間っていいもんだな

いざこざはあったけど少し話しただけで元気がもらえた

無意識のうちに俺が1人でやらなきゃって追い込まれていたようだ


もっと早く打ち明けてれば…

なんてタラレバを言っても仕方ない

それにこのタイミングだからこそ信じて貰えたって気もする


俺にはもうリセットボタンはない

今度は少しも失敗出来ない

だからこそ自分の管理も万全にしなきゃ…だな

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