家族愛

夕日ゆうや

勉強の先に……

 ゲームを封印してから六ヶ月、受験のために訪れた高校は一面雪化粧で開始時間が遅れるらしい。

 なぜ、この真冬の寒い時期に受験をするのかは分からないが、勉強は嫌いじゃない俺にとってはさほど緊張はしない。それでも震えるのは寒いからか。それとも……。

 入り口で受験番号を言い、教室を案内される。

 そして席に着く。

 受験が開始されると、俺は真っ先に解けそうな問題から始める。ちょっと悩む問題はあとに回す。

 俺は要領が良くないから、時間がかかる問題で詰まるときがある。

 自分のクセを知っているので、対応策も思いつくというもの。


 受験を終えて、家に帰ると、母が暖かい眼差しを向けてくる。

「どうだった?」

 それだけ。

「けっこう解けたと思う」

「それじゃ、今夜はごちそうね!」

「お兄ちゃん。もう勉強しなくていいんでしょ? 一緒にゲームしよ?」

 妹の咲恵さえはにんまりと笑って『すもも鉄』を持ってくる。

「あー。分かった」

 気の抜けた返事をし、一緒にゲームをやる。

 そのうち父が帰ってきて、みんなで食卓を囲む。

「ほう。やはり父さんに似て勉強ができるな。頑張れ!」

「ありがと。父さん。でも、俺は公務員にはならないからな」

「そうするといい」

 自分のやりたいことが見つかった。

 そのためにも俺は医者を目指す。

 咲恵を治すんだ。

 もうこれ以上辛い思いをさせたくない。

 もう無理をさせたくない。

「俺は医者になるよ」

 家族で反対する者はいなかった。

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