第24話 使う
25
「
俺の意識は球から、
俺の魔力玉による球への包囲が消えた。
その瞬間、球は脱兎のごとく口を開けている茎の切り口に飛び込んだ。
俺に圧縮され削られていたために球は茎の直径より小さくなっていた。
球は速度を落とさずに茎内を進むことができた。
ぐるぐる回りながら球はコアを目指している。魔界へ逃げ帰ろうというのだろう。
このまま茎の上に立っていれば球は俺の足の下を通り抜けてコアへ飛び込むはずだ。
その前にコアを破壊せねば。
俺はコアを破壊すべく『
コアに巻き付いていた茎が俺の邪魔をするように起き上がった。
見えていたコアは茎の陰に隠れて見えなくなった。
コアへの『
球は起き上った茎の中を迷いなく進んでいる。
自分で茎を動かしているのだとしたら当たり前か。
床でのたうっていた、
胸は上下しているので死んではいない。
球による、
即死はさせず致命傷でもなく、すぐに適切な治療をすれば間に合うと思える塩梅だった。
但し、一瞬の遅れが手遅れにつながる。
『仲間が死ぬぞ』
球がご丁寧にも俺の頭の中に煽りを入れた。
どちらをとるか悩むまでもなかった。
そもそもそのためにダンジョンへ潜った。
クソっ! 俺は未熟だ。戦闘中に相手から意識を放すなんて!
俺は、
心の優位を取り戻した球が俺を嘲笑いながら茎を通り抜けコアへと飛び込んだ。
俺は、
「
俺は、
「ポチ、無事だったか」
「怖がんねえでいいだ。おらが助けてやるだよ」
馬鹿、無事じゃないのはそっちだ。
「寝てろ。怪我してんだ」
「そうか。そうだな、こんな傷ちょっと寝たらすぐ治るだよ」
俺はリュックサックを下ろした。とにかく回復薬を。
その時、ダンジョンコアが砕けた。
魔界側から逃げ込んだ球の魔族が砕いたのだ。
途端に茎が萎れて枯れた。
ダンジョンがぐらりと揺れた。
今にも崩れ出し生き埋めにされそうだ。
過去にコアを破壊されたダンジョンは、ゆっくりと消滅に向かったという報告がある。
だが、少なくとも今回は違うらしい。もっと性急そうだ。
俺はリュックサックから『帰還』の巻物を取り出した。
巻物は込められていた魔法の力を発現した。
球の魔族の嘲笑の残響が俺の頭の中でこだましていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます