第30話 新しき世界の胎動~愛という名の束縛

 オリオンの話を聞いたオスカーは、すぐにハンネス救出に動き出した。

 しかし数日の間に、事態は大きく変化していた。

 アメリアはエルフィンを総統に献上たしたとき、総統と秘密の約束を交わしていた。その秘密の約束により、すでにハンネスはアメリアの元へ送り届けられていたのだ。


 アメリアはハンネスを王宮の獄につなぎ、その自由を奪っておきながら、平気でハンネスに愛を告白した。


「ハンネスさま、私とて好き好んでこのようなことをしているわけではないのですよ。ただあなたを愛しているからなのです」

と言った。そして


「私の愛を受け入れ、私と結婚してマルデクの王となり、あの総統ユリウスを倒すと、約束をしてくだされば、そぐにこの獄から出してて差し上げます」

と言った。


 ハンネスはそのようなアメリアの行動が、まったく理解できなかった。


「アメリア姫、あなたには申し訳ないが、私には心に決めたレディーがすでにいるのです。だからあなたの愛を受け入れることは出来ません」


「でも、あなたのレディーはすでにあなた以外のナイトと結ばれ、マルデクでは最高の栄誉である血の誓いを受けたのですよ」

とアメリアはハンネスに言った。


 それからハンネスの顔に手をやり、驚くハンネスの唇にその唇を合わせた。

 

 そしてアメリアは、

「あなたの愛するエルフィンは、今はすでに、マルデク総統ユリウスの妻なのです」

と言い、ハンネスのエルフィンへの想いを冷たく笑った。



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