第7話 オスカーとジェイド⑤
総統はエルフィンに未練を残しつつも、新しく出現した美しい獲物に、内心、狂喜していた。
エルフィンを諦めたわけではなかったが、いつ捕獲できるか見通しが立たない以上
新しい獲物を捕獲するほうが、カラカラに乾いたこころを速く、満たせそうだった。
総統は異例の早さで、高額な報償金をつけ、ジェイドを指名手配した。
それを知っていたオスカーは、少年に言った。
「お前は賞金付きで、帝国中に指名手配されている。
今、外に出ると危ないと思うが、この帝都に、頼れる知り合いはいるのか?」
「いません」
少年は小さな声で、うつむいたままそう言った。
もう泣き止んではいたが、うなだれ、力なく立ちすくんでいる姿は、やはり哀れであった。
「乗りかかった舟だ。しかたがない」
とオスカーはため息をつきながら、少年に言った。
「お前が望むなら、かくまってやるが、この屋敷から絶対に外へ出るなよ」
と、念を押した。
やはりオスカーと言えども、ジェイドをかくまっていることが総統にばれたなら、罪は免れ得なく、打ち首ものだった。
「イヤかもしれないが、髪を染めて、女装してもらう」
とオスカーは少年に言った。そして、
「名前は何にする? 別人に生まれ変わるのだ」
と付け加えた。
少年はしばらく考えていたが、おずおずと、
「ルカがいい」
と、小さな声だったがはっきりと言った。+
それは少年の、本当の名前だった。
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